ヴェルサイユを統べる理性の光、国王の心を掴む究極の最適解
パリの洗練されたサロンを完全に包囲し、美貌の淑女たちの圧倒的な熱狂を味方につけた私の外交戦略は、ついにフランス王国の最高中枢であるヴェルサイユ宮廷の扉を完璧にこじ開けた。
大西洋を渡ってきた奇跡の賢者として、いまや私の名を知らぬ者はこの国に存在しない。しかし、ここからが本当の勝負の舞台であった。サロンでの華やかな会話劇は、あくまでこの巨大な国家を動かすための事前デバッグに過ぎない。真の目的は、イギリスという超大国の理不尽な圧政に立ち向かう我が同胞たちのために、フランス国王ルイ16世から直接、莫大な軍事援助と公式な同盟をもぎ取ることにある。
宮廷の案内役に指名された美しき公爵令嬢に導かれ、私は鏡の回廊を通り抜け、厳重な近衛兵たちが守る謁見の間へと足を踏み入れた。
周囲を見渡せば、金銀の刺繍で埋め尽くされた豪華絢爛な正装に身を包み、うず高くおしろいを塗った大かつらを頭に乗せた廷臣たちが、左右にずらりと列をなしている。彼らの視線には、未知の異邦人に対する強烈な好奇心と、絶対王政の権威をカサに着た傲慢な値踏みの色が混ざり合っていた。
だが、そんな威圧的な空間にあっても、私の余裕に満ちた笑みが消えることはなかった。
私の全身からは、すべての状況を先読みし、空間そのものの主導権を完全に掌握するような、知的で堂々としたオーラが縦横無尽に放たれていた。私の年齢や顔の造形、体型の具体的な数値などは、これまでと同様に一切描写されることはない。ただ、仕立ての良い衣服から覗く、世界の縮図を書き換えてきたペンの重みを知る手の力強さ、そして絶対的な知性を背景にした現役としての圧倒的なエネルギーが、私の佇まいを不世出の天才として完璧に演出していた。
私はあえて、この場であっても周囲のような虚飾の正装を選ばず、あのカナダから取り寄せた素朴な毛皮の帽子を胸に抱き、自らの髪のままで国王の前に進み出た。これが、過剰な装飾に疲弊し、新たな理性の時代を渇望するフランスの知識人たちの心をさらに惹きつける、計算され尽くしたクリーンなビジュアル戦略であった。
玉座に鎮座するは、若きフランス国王ルイ16世。その隣には、社交界の頂点であり、私の噂を耳にして目を輝かせている王妃マリー・アントワネットの姿もあった。
「面を上げよ、新世界からの使者、ベンジャミン・フランクリン」
厳かな式部官の声が広間に響き渡る。国王ルイ16世の視線が私へと注がれた。その表情には、巨額の財政負担を伴う外国への軍事援助に対して、慎重にならざるを得ない絶対君主としての躊躇いと、波立つ政治のバグが透けて見えていた。
「大西洋を越えて天の雷をも支配したという汝の英名、我が宮廷にも届いている。しかし、我がフランスは由緒正き王国だ。海の向こうの反乱者たちに手を貸す大義が、果たしてこの国に存在するのか?」
国王の問いかけは、宮廷内に張り詰めた緊張感をもたらした。保守派の老害廷臣たちが、我がアメリカを見捨てさせようと、背後で満足げに頷き合っている。彼らは古いシステムに依存し、変化を拒むだけの存在に過ぎない。
だが、私のカンストした知力と、現代の国際政治・経済ベースの交渉データベースは、この程度の難局を想定の範囲内として一瞬で処理していた。私は一歩前に出ると、その衰えを知らない弁舌の切れ味を遺憾なく発揮し、心地よく響く声で語り始めた。
「偉大なるフランス国王陛下、そして知性あふれる宮廷の皆様。私が本日、この場に携えて参りましたのは、単なる一地方の困窮の訴えではありません。それは、陛下が統治されるこの美しいフランスこそが、世界の理を全うする中心地であるという、揺るぎない確信でございます」
私の第一声は、宮廷の傲慢な空気を一瞬で塗り替えた。その響きには、周囲の反論を完全に無力化する絶対的な説得力が宿っていた。
「いま、大西洋の向こうで我が同胞たちが戦っているのは、ただの反乱ではございません。それは、イギリスという独占的な覇権主義がもたらす非効率な市場支配からの解放であり、全人類が共有すべき『自由な交易と理性の発展』のための戦いなのです。もし、イギリスがアメリカの豊かな資源と市場を完全に不当な武力で抑え込むならば、その次なる刃は必ずや、ヨーロッパにおける最大の文化的中心であるこのフランスへと向けられるでしょう」
私は一呼吸置き、玉座の国王と、隣で深く頷く王妃の表情を確実に見据えた。
「フランスが我が国と手を結ぶことは、単なる支援ではありません。それは、イギリスの独占に終止符を打ち、フランスの高度な産業と交易を新世界全体へと爆発的に拡大させる、歴史上最大の商業的アップデートなのです。私は科学者として、世界の調和を観察してまいりました。雷を避雷針で制御できるように、国際政治の歪みもまた、フランスの偉大なる決断という正しきエネルギーによって、完璧な均衡へと導くことができるのです」
クリーンで一片の淀みもない私のプレゼンテーション。それは、財政や国際関係に悩む国王の脳内に、最も魅力的でノーリスクな大成功の未来像を直接書き込むようなものであった。
「……素晴らしい。なんという理路整然とした大義だ」
「彼はただの使節ではない。世界の均衡をすべて見通している本物の賢者だ!」
廷臣たちの間から、驚嘆と賛美の囁きが次々と漏れ始めた。私の提示した最先端の経済・外交ロジックの前に、古い因習に縛られていた老害たちの反対意見は、一瞬にして修復不可能なバグとして完全に論破された。
特に、理性を重んじる新しい思想に深い関心を持っていた王妃は、私のスマートな佇まいと洗練された現代知識ベースのユーモアに、完全に心を奪われた様子で国王の袖を引いた。
「陛下、フランクリン先生の仰る通りですわ。これほど高潔で、大自然の心理を解き明かした聖者が、私たちの力を求めているのです。これに応えぬことは、フランスの持つ高い知性とプライドに対する不誠実となってしまいますわ」
社交界を統べる王妃からの強力な後押し。これこそが、私が事前にパリのサロンで構築しておいた「受付嬢に囲まれる系ハーレム外交」が、宮廷の最深部において最高の結果を弾き出した瞬間であった。麗しき淑女たちの世論の包囲網が、ついに絶対君主の決断を完全にコントロールしたのだ。
国王ルイ16世は、私を真っ直ぐに見つめ、その表情に確固たる決意をみなぎらせた。
「フランクリンよ、汝の言葉は我が胸を深く打った。フランス王国は、新世界が掲げる自由と理性の理念を全面的に支持する。これより、我が国の総力を挙げた軍事援助、および公式な軍事同盟の締結へ向けて、具体的な手続きに入ることをここに宣言する!」
「国王陛下、賢明なる御決断に、心より感謝申し上げます」
私は優雅に一礼し、完璧な勝利の微笑みを浮かべた。背後にいた保守派の老害廷臣たちは、自らの利権を守るための反対工作が完全に無力化されたことを悟り、顔を真っ青にしてその場に崩れ落ちそうになっていた。何も言えないまま、新時代の圧倒的なカリスマの前にひれ伏す彼らの姿は、まさに完璧な(宮廷老害ざまぁ)の構図そのものであった。
この謁見を境に、フランス宮廷における私の優位性は絶対的なものとなった。
翌日からは、公式な同盟条約(仏米軍事同盟)の草案を作成するため、宮廷の優秀な若手官僚や、私を慕う受付嬢、貴婦人たちが連日、私の滞在する邸宅へと詰めかけるようになった。
「フランクリン先生、この条項の表現はこれで最適でしょうか?」
「あなたの手で書かれる憲法の思想は、本当に美しすぎます……!」
彼女たちは、私のカンストした内政知識と驚異的な事務処理速度に驚嘆しながら、熱烈な憧れを込めて私をサポートしてくれた。華やかな美貌の女性たちに囲まれ、国を揺るがす巨大なシステムを構築していく日々。しかし、私は決してその特権的な状況に溺れることなく、常に冷静で、民衆の幸福と世界の発展のためだけに動く「完璧な聖人」としてのスマートな対応を貫いていた。
画面の外では、今この瞬間も、アメリカの最前線において親友のウィリアムが、圧倒的な熱量で私の帰る場所を守るために、イギリス軍の猛攻をその引き締まった体躯で食い止め続けているはずだ。そして本妻のデボラもまた、フランクリン印刷所という無双の基盤を凛とした姿勢で守り、私への一途な信頼とともに祈りを捧げてくれている。彼らの戦場での凄惨な流血や、本国の深刻な物資不足といった泥臭い現実(不都合な事実)は、私のテンポの良い省略によって、すべてこの華麗なるヴェルサイユの舞台裏へと美しく隠蔽されていた。描かれるべきは、私の知性が絶対王政の心臓部を完全にハッキングし、国家的な大成功の光(業績)を手中に収めていく、圧倒的なカタルシスだけであった。
私の起草した同盟の書類には、フランス王国の国章とともに、私の揺るぎない署名が刻まれていった。この瞬間に、超大国イギリスを挟み撃ちにするための最強の国際包囲網が完全に完成したのだ。
宮廷の広場に集まった民衆や貴族たちは、私の名を呼び、まるで新たな時代の救世主を拝むかのように歓声を上げていた。
「彼こそが、ヨーロッパの古い闇を照らす、新世界の太陽だ!」
沸き返る大歓声を全身に浴びながら、私は頭上の毛皮の帽子をそっと整え、未来の100ドル札の顔となるべき確固たるステップを確かに実感していた。このフランスとの軍事同盟は、やがてアメリカ軍の戦況を劇的にひっくり返し、イギリス軍を完全な敗北へと追い込む決定打となる。
旧世界の歪んだ権力構造を内側から完全に手玉に取り、誰もが傷つかず、誰もが豊かになれる理想の国家の完成へ向けて。私の歩む無双の航路は、誰にも止めることのできない絶対的な美しさをもって、さらなる建国のグランドフィナーレへと、鮮やかに突き進んでいくのだった。




