第37話『酒貨物押収作戦』
ワイン文化が根付くグレープマスカト公国。
しかし平和な街にも、禁酒主義隊の影が迫っていました。
※お酒は20歳になってから。
※お酒を飲んだら乗り物の運転はやめましょう。
※お酒は楽しく適量で。
グレープマスカト公国へ到着した翌日。
一行はシャルドネの案内で港地区へ向かっていた。
石畳の街並みを抜けると、巨大な倉庫群が見えてくる。
樽。
樽。
そして樽。
どこを見ても酒だった。
「すげぇな……」
ジャックは感心する。
「酒の要塞じゃねぇか」
「当然だ」
シャルドネは胸を張った。
「ここは公国最大のワイン集積地だからな」
港へ続く線路の上では貨物列車が忙しそうに行き来している。
葡萄酒。
果実酒。
ブランデー。
世界各地へ向かう酒が積み込まれていた。
その時だった。
突然。
港の方から鐘の音が鳴り響く。
カーン!
カーン!
カーン!
周囲がざわつく。
「なんだ?」
マサムネが辺りを見回す。
すると倉庫の警備員が叫んだ。
「酒貨物区画だ!」
「押収部隊が来たぞ!」
その言葉にシャルドネの顔色が変わる。
「まさか……」
一行は急いで現場へ向かった。
貨物ヤードでは大勢の人々が騒然としていた。
そして。
線路の向こうに見覚えのある姿が立っていた。
黒と白の段模様羽織。
銀縁眼鏡。
鋭い視線。
ジュンシューだった。
「御用改めである」
静かな声が響く。
「絶対禁酒主義隊の名において、この酒貨物を差し押さえる」
周囲から怒号が飛ぶ。
「ふざけるな!」
「公国の財産だぞ!」
「違法だ!」
しかしジュンシューは微動だにしない。
「酒は人を堕落させる」
「ゆえに没収する」
「それが正義である」
ジャックが額を押さえた。
「相変わらず無茶苦茶だな」
ジンも呆れる。
「正義って便利な言葉だよな」
その時。
ジュンシューの視線がこちらを向いた。
数秒。
沈黙。
そして。
「貴様らか」
明らかに覚えていた。
ジャックが苦笑する。
「また会ったな」
「残念ながらな」
ジュンシューは冷たく答えた。
その後ろには数十人規模の禁酒主義隊。
さらに荷馬車まで用意されている。
どうやら本気だった。
シャルドネが前へ出る。
「ここは我が国の領土だ」
「勝手な押収は認められん」
「認める必要はない」
ジュンシューは即答した。
「酒がある限り問題は終わらない」
「ゆえに酒を消す」
「簡単な話だ」
マサムネは思わず呟いた。
「いや全然簡単じゃないだろ」
すると。
ジュンシューが懐から呪符を取り出す。
周囲がざわついた。
「まさか酒駄目波か?」
「違う」
ジュンシューは静かに首を振る。
「今回はもっと単純だ」
「酒そのものを押収する」
その瞬間。
部下達が一斉に動き出した。
樽へ向かう。
貨車へ向かう。
酒を運び出そうとする。
しかし――
「待ったぁぁぁぁぁ!!」
シャルドネの叫びが港に響いた。
「俺の故郷の酒を勝手に持っていくな!」
ジャックも拳を鳴らす。
「せっかく治ったんだ」
「また酒が飲めなくなるのは勘弁だぜ」
ジンは肩を回した。
「少し運動するか」
イーチコも立ち上がる。
「酒のためなら頑張れる」
カスミは呆れていた。
「本当に酒絡みだけ元気ですね……」
そして。
マサムネは静かに酒瓶を取り出した。
ジュンシューの眉が動く。
嫌な予感がしたのだろう。
マサムネは栓を抜く。
そして一口。
ごくり。
次の瞬間。
光が弾けた。
桜色の髪。
美しい剣士の姿。
サクラが現れる。
「さて」
知心刀を肩に担ぎながら笑った。
「酒を守る戦いってのも悪くないね」
ジュンシューは深くため息をつく。
「やはり貴様らか……」
港の空気が張り詰める。
酒貨物を巡る戦いが。
今、始まろうとしていた。
(第38話へ続く)
第37話をお読みいただきありがとうございました。
ついにジュンシューが再登場。
今度の標的は酒そのもの――公国の酒貨物でした。




