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サクラとマサムネ異世界ほろ酔い漫遊記  作者: まほ。かんた。
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第34話 『積荷(酒)を守れ』

深夜の“酔っ払いエクスプレス”で、酒貨物を巡る戦いが始まります。


※お酒は20歳になってから。

※お酒を飲んだら乗り物の運転はやめましょう。

※お酒は楽しく適量で。

 ガタン――ッ!!


 寝台車が大きく揺れた。


 暖色ランプの下。


 婦人用寝台車の空気が、一気に張り詰める。


  サクラは知心刀を構えたまま、ジュンシューを睨んでいた。


 桜色の髪が暖色ランプに照らされる。


 見慣れた戦闘衣装。


 だが列車内という状況だけが、妙に非日常だった。


 「夜中に御用改めとは、無粋な野郎だな」


 ジュンシューは冷たい目を向ける。


 「酒に溺れた愚か者め」


 「その酒気ごと――断つ」


 次の瞬間。


 ――ギィンッ!!


 剣と刀がぶつかる。


 火花が散った。


 狭い寝台車へ金属音が響き渡る。


 「おぉっと!」


 サクラは後ろへ飛ぶ。


 その横を、教団員達が一斉に駆け抜けた。


 「貨物車を確保しろ!」


 「積荷を押収する!」


 「酒類を封印せよ!」


 統率された動き。


 完全に訓練されている。


 「やべぇ!」


 ジンが叫んだ。


 「一〜三号車行く気だよあいつら!」


 「酒貨物が狙いか!」


 イーチコが顔色を変える。


 その時だった。


 六号車側から、聞き覚えのある声が響く。


 「待てコラァァァ!!」


 ジャックだった。


 Yシャツはぐしゃぐしゃ。


 髪もボサボサ。


 完全に寝起きである。


 だが目だけは本気だった。


 「酒は飲めなくてもなぁ!!」


 「酒は守るんだよぉぉぉ!!」


 そのまま教団員へ突っ込む。


 「ぐぉっ!?」


 教団員が吹き飛んだ。


 「うるせぇぇぇ!!」


 イーチコも飛び込む。


 寝間着姿のまま拳を叩き込む。


 「積荷に手ぇ出すな!!」


 「ひっ!?」


 別の教団員が壁へ激突した。


 ジンは通路上へ軽やかに飛び乗る。


 「夜中に仕事熱心だねぇ!」


 笑いながら教団員を翻弄していく。


 「止まれ!」


 「止まるわけないじゃん♪」


 その横で、カスミは慌てていた。


 「み、みなさん落ち着いてください!」


 「列車の中ですよ!?」


 だが誰も落ち着いていない。


 一方――


 サクラとジュンシューの斬り合いは続いていた。


 ギィンッ!!


 狭い通路で刃が交錯する。


 「酒の何がそこまで悪いんだ?」


 サクラが問う。


 ジュンシューは即答した。


 「酒は人を腐らせる」


 「判断を鈍らせ」


 「秩序を乱す」


 「だから断つ」


 迷いのない声だった。


 サクラは小さく笑う。


 「なるほどな」


 「堅ぇわけだ」


 「貴様らが緩すぎるだけだ」


 ジュンシューの剣が鋭く突き出される。


 だがサクラは、それを受け流した。


 「でもよ」


 「酒ってのは――」


 知心刀が閃く。


 「楽しいもんなんだよ」


 ――ギィィンッ!!


 大きな火花。


 ジュンシューが後ろへ下がる。


 その時だった。


 「副長!!」


 教団員が駆け込んできた。


 「貨物車側、制圧失敗!」


 「酒樽が多すぎます!」


 「知るか」


 「運びきれません!!」


 「知るか!!」


 ジュンシューの額へ青筋が浮かぶ。


 その横で、ジャックが叫んだ。


 「当たり前だろ!!」


 「この列車、酔っ払いエクスプレスだぞ!!」


 「全部酒だぁぁぁ!!」


 「最悪だ……」


 ジュンシューが本気で嫌そうな顔をした。


 その時。


 サクラが、ふと気づく。


 ジュンシューの指先。


 そこに、小さな呪符が挟まれていた。


 「……?」


 ジュンシューは静かに呟く。


 「思い知れ」


 次の瞬間。


 呪符が、ふわりと宙へ舞った。


 青白い光。


 そして。


 酒の香りへ反応するように、光が車内へ広がっていく。


 「なんだこれ?」


 ジンが眉をひそめる。


 だがジュンシューは答えない。


 静かに剣を収める。


 「撤収する」


 「は?」


 ジャックが間抜けな声を出した。


 「帰んのか?」


 「今夜はここまでだ」


 ジュンシューは冷たく言い放つ。


 「だが――」


 「貴様らは朝、後悔することになる」


 不穏な言葉だけを残し、ジュンシューは踵を返した。


 だんだら模様の羽織が翻る。


 そして絶対禁酒主義隊は、統率された動きで列車から降りていった。


 やがて。


 汽笛が鳴る。


 ボォォォォ――――ッ!!


 “酔っ払いエクスプレス”は再び動き出した。


 ガタン――……。


 ゴトン……。


 深夜の闇を、夜行列車が走っていく。


 しばらく沈黙。


 そして。


 ジンがぽつりと呟いた。


 「……で?」


 「ん?」


 「寝酒は?」


 数秒後。


 「「「飲むか」」」


 「お前ら懲りろよぉぉぉ!!」


 マサムネ――いやサクラの叫びが、深夜の寝台車へ響き渡った。


 その横で。


 ジャックは、恐る恐るハイボールへ口をつけていた。


 ごくり。


 数秒。


 そして。


 「……うまい」


 ジャックの目が見開かれる。


 「酸っぱくねぇ!!」


 「おぉ!?」


 イーチコが振り向く。


 ジャックは感動した顔でジョッキを見る。


 「戻ってる……!」


 「俺の舌……戻ってるぞぉぉぉ!!」


 「マジか!」


 ジンも盛り上がる。


 その瞬間だった。


 ジャックは勢いよく立ち上がった。


 「こうしちゃいられねぇ!!」


 「祝杯だぁぁぁ!!」


 「待て」


 サクラが止める。


 だが遅い。


 ジャックは棚からバーボン瓶を取り出した。


 「まずは――」


 「ストレートだ!!」


 「やめろバカ!!」


 ごくごくごくっ!!


 「ぷはぁぁぁぁぁ!!」


 完全復活である。


 そして誰も気づいていなかった。


 深夜の車内へ残された、二日酔いの呪符の効果を――。


(第35話へ続く)

次回、グレープマスカト公国へ到着――のはずでした。

ジュンシューが残した“思い知れ”の意味とは……?

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