第27話 『はじける酒呑み達』
発泡湿地帯から戻った酒飲み達。
ついにソーダーマテリアルを使った炭酸酒を楽しみます。
※お酒は20歳になってから。
※お酒を飲んだら乗り物の運転はやめましょう。
※お酒は楽しく適量で。
酒飲み達はついに、
ソーダーマテリアルを手に入れたのだった。
――その日の夜。
ムギルの宿屋。
酒と料理の匂いが部屋いっぱいに広がっていた。
「っくぅ~~~!!」
サクラがジョッキを掲げる。
「炭酸うめぇぇ!!」
シュワシュワと泡立つ焼酎ソーダ。
喉を刺激する爽快感。
そこへ、ほんのり香るマムシュの風味。
危険地帯で命懸けで取ってきた素材だけあり、
味は格別だった。
「これヤバっ♪」
ジンも上機嫌だった。
「酒止まんないやつじゃん♪」
その横では。
ジャックが涙目になっていた。
「生き返る……」
「炭酸が胃に染みる……」
「お前まだ本調子じゃねぇだろ」
サクラが呆れる。
「いいんだよ……」
「男には飲まなきゃいけねぇ夜がある……」
「いつも飲んでるだろ」
イーチコが冷静に突っ込んだ。
机の上には、
マムシュの唐揚げも並んでいる。
カリッと揚がった蛇肉。
香辛料の匂い。
炭酸酒との相性は抜群だった。
「これうめぇな」
ジャックが頬張る。
「ビール欲しくなるな」
イーチコも頷いた。
「焼酎にも合うぞ」
サクラは再びジョッキを空ける。
そして。
どかっと座り込んだ。
片足を立て、
完全におっさんみたいな座り方である。
「くぅ~っ!」
「染みるなぁ!!」
すると。
カスミが困ったように顔を赤くした。
「さ、サクラさん……」
「ん?」
「い、今は女性なんですから……」
「もう少し座り方をですね……」
サクラはきょとんとした。
そして自分の格好を見る。
「……あ」
数秒後。
「めんどくせぇな女って!!」
「だからおっさんなんですよ……」
カスミが小さく頭を抱える。
その時だった。
コンコン。
宿の扉が静かに叩かれる。
「ん?」
ジャックが振り向いた。
ゆっくり扉が開く。
そこへ現れたのは――
長い金髪を後ろで束ねた、
一人のエルフだった。
白いシャツ。
深紅のマント。
そして片手には、一本の赤ワイン。
「やぁ、諸君」
「実に騒がしい夜だね」
キザな笑み。
ジンが目を丸くする。
「うわっ」
「シャルドネ!?」
ジャックが頭を抱えた。
「げぇ……来やがった……」
エルフの男――
シャルドネ・メルローは、
優雅に一礼する。
「久しいね、ジャック」
「相変わらず安酒の香りがする」
「うるせぇ」
そして。
シャルドネの視線が止まった。
サクラだった。
焼酎ソーダ片手に、
マムシュの唐揚げを頬張っている。
しかも股を広げて座っていた。
完全におっさんである。
だが。
シャルドネは目を見開いた。
「……なんという美しさ」
「は?」
サクラが止まる。
「ジン」
「彼女を紹介してくれないか」
ジンは数秒黙った後、
ニヤァっと笑った。
「いいよ♪」
「おっさん、モテ期だって♪」
ジンは、ニヤニヤしながらカスミを見る。
「カスミ~♪」
「ちょっとサクラ治療してみなよ♪」
「えっ?」
カスミが固まる。
サクラは嫌な予感がした。
「おい待て」
「その流れ絶対ろくなことにならねぇ」
だが。
ジンは止まらない。
「ほらほら♪」
「回復魔法くらい大丈夫でしょ♪」
カスミは困ったように両手を合わせた。
「え、えっと……」
「少しだけですよ?」
淡い光が溢れる。
次の瞬間。
――ぽんっ。
「……あ」
桜色の髪が消える。
長身美女の姿が縮む。
そこに現れたのは――
小太り気味の中年男、
マサムネだった。
スーツ姿のおっさんである。
「だから言っただろぉぉ!?」
マサムネが叫ぶ。
ジンは腹を抱えて笑った。
「ぶははははっ!!」
「ほんとに戻った!!」
ジャックも酒を吹きそうになっていた。
「おっさん急に現れるの反則だろ!!」
イーチコまで肩を震わせる。
「落差が酷いな……」
その時だった。
ジンがニヤァっと笑い、
シャルドネを見る。
「で?」
「おっさんでもいいの?」
沈黙。
マサムネは嫌な予感しかしなかった。
「おい」
「やめろ」
だが。
シャルドネは静かにワイングラスを置く。
そして。
マサムネの前へ歩み寄った。
「……素晴らしい」
「は?」
「美とは魂」
「姿形だけではありません」
シャルドネは、
本気の目だった。
「たとえ、おっさんであろうとも」
「その本質は麗しき女性なのですから……」
「重ぇよ!!」
マサムネが全力で突っ込む。
その瞬間。
ジン、ジャック、イーチコが大爆笑した。
「ぶははははっ!!」
「おっさん口説かれてる!!」
「新ジャンルだな!!」
「やめろぉぉぉ!!」
宿の部屋が笑い声で揺れる。
その横で。
カスミは苦笑しながら、
グラスを差し出した。
「……マサムネさん」
「はい?」
「ハイボール、どうぞ」
琥珀色の炭酸酒。
しゅわしゅわと泡が弾けている。
マサムネは数秒黙った後、
静かに受け取った。
「……ありがとよ」
そして。
ぐいっと一気に飲み干す。
次の瞬間。
ふわりと光が溢れた。
長い桜色の髪。
すらりとした長身。
美女サクラが再び現れる。
「っはぁ~~~っ!!」
「やっぱハイボールうめぇぇ!!」
「戻った♪」
ジンが大笑いする。
シャルドネはうっとりしていた。
「やはり美しい……」
「めんどくせぇの増えたな……」
サクラは頭を抱えた。
だが。
その時だった。
コンコン――
再び、宿の扉が叩かれる。
「ん?」
ジャックが顔を上げる。
こんな時間に客。
しかも。
今夜は酒飲み達が大騒ぎしている。
普通の客とは思えなかった。
カスミが不安そうに扉を見る。
「……誰でしょう?」
すると。
扉の向こうから、低い声が響いた。
「禁酒教団だ」
部屋の空気が止まる。
サクラ達は顔を見合わせた。
そして。
ジンだけがニヤリと笑った。
「……まだ続くみたいだねぇ♪」
(第28話へ続く)
今回は完全に宴会回となりました。
そして新たな酒飲み、シャルドネ・メルローも登場。
次回は宿へ訪れた“禁酒教団”との騒動へ続きます。




