第24話 『毒も酒も同じ扱い』
今回はついに発泡湿地帯へ突入。
炭酸、毒蛇、そして酒好き達の価値観が炸裂します。
※お酒は20歳になってから。
※お酒を飲んだら乗り物の運転はやめましょう。
※楽しく適量で。
翌朝――
一行は街を出発していた。
目指すは、発泡湿地帯。
炭酸素材「ソーダーマテリアル」の採取地。
そして。
禁酒教団の監視区域でもある。
「うーし♪」
ジンが大きく伸びをする。
「炭酸酒が待ってるよー♪」
「まだ手に入れてねぇだろ」
マサムネが呆れる。
その時だった。
サクラは腰の酒瓶を軽く揺らした。
「何があるかわからねぇからな」
「途中で酒切れたら困る」
カスミが少し引いた顔をする。
「た、探索中も飲むんですか……?」
「変身維持みてぇなもんだ」
サクラは普通に答えた。
すると横で。
ジャックが死んだ目を向ける。
「いいよなお前は……」
「俺なんかまだ飲めねぇのに……」
サクラは少しだけ笑った。
「しゃーねぇだろ」
そして。
腰のバーボン瓶を掲げる。
「代わりに飲みながら行ってやるよ」
「やめろぉ!!」
ジャックの叫びが響いた。
その後ろでは。
カスミが少し不安そうに周囲を見ていた。
「本当に、この辺りなんですか?」
「ああ」
イーチコが頷く。
「そろそろ湿地帯が見える頃だ」
その時だった。
ふわり。
風に乗って、白い泡が流れてきた。
「……?」
カスミが手を伸ばす。
泡は、触れた瞬間に弾けた。
しゅわっ――
小さな炭酸音。
「おぉ♪」
ジンが目を輝かせる。
「ほんとに炭酸だ♪」
さらに進む。
すると。
視界の先に、巨大な湿地帯が広がっていた。
白い泡。
霧のように漂う炭酸。
ぼこぼこと泡立つ泥沼。
水面のあちこちから、
絶えず泡が噴き出している。
「うわぁ……」
カスミが思わず声を漏らした。
「凄いですね……」
「発泡湿地帯だ」
イーチコが周囲を見渡す。
「気を付けろ」
「泡で足を滑らせる」
「あと毒持ちも居る」
その瞬間。
しゅるり――
近くの水面が揺れた。
「ん?」
サクラが目を向ける。
次の瞬間。
泡の中から、細長い影が飛び出した。
「うおっ!?」
ジャックが飛び退く。
水面を滑るように移動する巨大蛇。
灰色の鱗。
口元から泡混じりの毒液を垂らしている。
「マムシュだ」
イーチコが眉をひそめた。
「毒持ちだぞ」
すると。
ジャックが小さく呟いた。
「マムシ酒か……」
「お前もそっちかよ!!」
サクラが即座に突っ込む。
だが。
マムシュは構わず襲い掛かってきた。
「来るぞ!!」
ジャックが叫ぶ。
サクラが前へ飛び出す。
「任せろ!!」
湿地を蹴る。
泡が弾け飛ぶ。
サクラはそのままマムシュの頭へ拳を叩き込んだ。
――ドゴォッ!!
巨大な蛇が吹き飛ぶ。
「おぉー♪」
ジンが拍手した。
「相変わらず強いなおっさん♪」
「おっさん言うな!!」
その瞬間だった。
吹き飛ばされたマムシュが、
最後の抵抗のように跳ね上がる。
「っ!?」
ガブッ!!
「いっ……!?」
サクラの腕へ牙が突き刺さった。
「サクラさん!?」
カスミが叫ぶ。
マムシュはそのまま泥の中へ逃げていく。
「ちっ……」
サクラが腕を押さえる。
傷口の周囲が黒ずんでいた。
「毒か……」
すると。
カスミが慌てて杖を構える。
「ま、待ってください!!」
「今、治療します!!」
淡い光が溢れる。
「お、おい?」
サクラが目を瞬かせた。
傷口の黒ずみが消えていく。
毒が消える。
そして――
「……あれ?」
サクラが固まった。
「なんか急に頭がすっきり……」
次の瞬間。
ふわりと光が溢れる。
「……え?」
長い髪が縮む。
体格が戻る。
そして。
そこに居たのは、マサムネだった。
「なんでぇぇぇっ!?」
マサムネが叫ぶ。
「えっ!? えぇっ!?」
カスミが完全に混乱する。
マサムネは自分の身体を見下ろした。
「……あれ」
「酔い、冷めてねぇか?」
沈黙。
そして。
ジンが吹き出した。
「なにそれ♪」
「カスミ、強制おっさん化できるじゃん♪」
「そ、そんな魔法みたいに言わないでください!!」
カスミが真っ赤になる。
「おっさん化言うな!!」
マサムネも叫んだ。
だが。
その時だった。
しゅるり――
周囲の泡沼が、一斉に揺れ始める。
「……おい」
イーチコが顔をしかめた。
「一匹じゃなかったみたいだぞ」
泡の中から、
次々と赤い目が浮かび上がる。
「マジかよぉ!?」
マサムネは数秒だけ考え――
「しゃーねぇ」
腰の酒瓶を取り出した。
「飲み直すか」
「そんな気軽に!?」
カスミが驚く。
マサムネはバーボンを一気に流し込む。
次の瞬間。
ふわりと光が溢れた。
「っはぁ……」
再び現れるサクラ。
「よし、戻った」
「戻ったじゃないですよぉ!?」
カスミが完全に混乱していた。
泡立つ湿地帯の奥で。
無数の赤い目が、静かに揺れていた。
(第25話へつづく)
まさかの「強制おっさん化」が発覚しました。
今後、カスミの治癒魔法はサクラにとって脅威になるかもしれません。
お酒と毒の取り扱いにはご注意ください。




