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サクラとマサムネ異世界ほろ酔い漫遊記  作者: まほ。かんた。
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23/32

第23話『禁酒と酒盛りの夜』

今回は発泡湿地帯へ向かう前夜、宿での酒盛り回となります。

禁酒中のジャックと、いつも通り騒がしい酒飲み達をお楽しみください。


※お酒は20歳になってから。

※お酒を飲んだら乗り物の運転はやめましょう。

※楽しく適量で。

 その日の夜――


 一行は、街道沿いの宿へ泊まっていた。


 発泡湿地帯へ向かう前の、最後の休憩地点。


 木造二階建ての宿。


 一階は酒場になっており、


 大勢の冒険者達で賑わっていた。


 「いい感じの店じゃん♪」


 ジンが楽しそうに笑う。


 「こういう騒がしい店、好きなんだよねー」


 「お前は飲めればどこでも好きだろ」


 マサムネが呆れる。


 その時だった。


 酒場の店員が近づいてきた。


 「お客さん方、何にします?」


 「とりあえず酒だな」


 マサムネが即答する。


 するとジンがニヤリと笑った。


 「お、変身タイム?」


 「その言い方やめろ」


 マサムネは酒を受け取る。


 琥珀色の蒸留酒。


 軽く香りを確かめ――


 一気に飲み干した。


 次の瞬間。


 ふわりと淡い光が溢れる。


 「え……?」


 カスミが固まった。


 髪が伸びる。


 体格が変わる。


 声が変わる。


 服装まで変化していく。

挿絵(By みてみん)

 そして。


 そこに立っていたのは、


 長身の美女サクラだった。


 「っはぁ……」


 「やっぱ酒はうめぇな……」


 「ま、マサムネさん……?」


 カスミは完全に混乱していた。


 「お、変わったおっさん♪」


 ジンが笑う。


 「毎回見ても慣れねぇな」


 イーチコも苦笑した。


 「おっさん言うな!!」


 サクラが怒鳴る。


 その時だった。


 「おぉぉぉい!!」


 酒場の奥から大声が響いた。


 巨大なジョッキを掲げる男。


 ラガーラガーだった。


 「来たかお前らぁ!!」


 「親父!?」


 イーチコが目を丸くする。


 「なんで居るんだよ……」


 「決まってんだろ!!」


 ラガーラガーは豪快に笑った。


 「炭酸素材が手に入るって聞いてなぁ!!」


 「そりゃ酒飲みとして見逃せねぇ!!」


 「まだ手に入れてねぇだろ……」


 サクラが呆れる。


 だが。


 ラガーラガーは既に出来上がっていた。


 泡立つビールを豪快に流し込む。


 「ぐはぁぁっ!!」


 「うめぇ!!」


 その隣で。


 ジャックが静かに座っていた。


 目の前には――麦茶。


 「……」


 哀愁が凄かった。


 「なんで俺だけこんな目に……」


 「まぁまぁ♪」


 ジンが笑いながら肩を叩く。


 「三日くらい我慢しなよ」


 「酒飲みにとって三日禁酒は拷問だぞ……」


 ジャックは本気で死んだ目をしていた。


 すると突然、


 ジャックが顔を上げる。


 「……いや」


 「待て」


 真剣な表情。


 「これだ」


 「ハイボールだ」


 「炭酸で割れば飲めるはず……!」


 希望に満ちた目。


 だが。


 周囲は静かだった。


 「いや」


 イーチコが真顔で言う。


 「たぶん酢だぞ」


 「炭酸で割っても酢だな」


 「そんなぁ!!」


 ジャックが机へ突っ伏した。


 「罰ゲームじゃん♪」


 ジンが爆笑する。


 「酢の炭酸割りかぁ!!」


 ラガーラガーまで笑っていた。


 「笑うなぁ!!」


 酒場の客達まで笑い始める。


 その頃。


 カスミは少し落ち着かない様子で周囲を見ていた。


 酒の匂い。


 騒がしい笑い声。


 酔っぱらい達。


 禁酒教団に居た頃なら、


 絶対に近づかなかった空間だった。


 だが。


 不思議と嫌ではない。


 「カスミー♪」


 ジンが手を振る。


 「こっちこっち♪」


 「は、はいっ」


 席へ座る。


 すると。


 目の前へ酒瓶が置かれた。


 「飲む?」


 「い、いえっ!?」


 カスミが慌てる。


 「ま、まだ心の準備が……!」


 「真面目だなぁ」


 イーチコが苦笑した。


 その時だった。


 ふと、サクラが立ち上がる。


 「……ちょっと花摘み行ってくる」


 そして。


 何の迷いもなく、


 男子トイレの方へ歩き出した。


 「……あ」


 カスミが固まる。


 「さ、サクラさん!?」


 「ん?」


 「そ、そっちは……!」


 サクラは数歩進み――


 ぴたりと止まった。


 沈黙。


 「……」


 「……あ」


 ゆっくり振り返る。


 そして。


 「……こっちか」


 真顔で女子トイレ側へ向かった。


 「完全におっさんじゃん♪」


 ジンが腹を抱えて笑う。


 「うるせぇ!!」


 サクラの怒鳴り声が飛ぶ。


 カスミは顔を真っ赤にしていた。


 「だ、大丈夫なんでしょうか……」


 「中身はおっさんだからな」


 イーチコが普通に言った。


 数分後。


 席へ戻ってきたサクラは、


 やや不機嫌そうだった。


 「慣れねぇ……」


 「どっちに?」


 ジンがニヤニヤ聞く。


 「全部だ!!」


 再び笑いが起きる。


 その時だった。


 突然。


 空中へ光の輪が浮かび上がる。


 「お?」


 サクラが顔を上げた。


 次の瞬間。


 『ソーダーマテリアルですって!?』


 元気な声が響いた。


 酒の女神ヘーベだった。


 『炭酸よ炭酸!!』


 『ハイボール! ジンソーダ! 焼酎ソーダ割!!』


 『絶対奉納してね!!』


 「そこかよ……」


 サクラが呆れる。


 『炭酸は偉大なのよ!?』


 『喉へ来るあの刺激!!』


 『しゅわしゅわ感!!』


 『酒の可能性が広がるの!!』


 「ただの酒飲みじゃねぇか……」


 ジャックが死んだ目で呟いた。


 その横で。


 ラガーラガーがジョッキを掲げる。


 「いい女神じゃねぇか!!」


 「お前は黙ってろ!!」


 酒場はさらに騒がしくなる。


 そして――


 発泡湿地帯へ向かう前夜は、


 ゆっくり更けていくのだった。

次回より、発泡湿地帯編へ突入予定です。

炭酸素材「ソーダーマテリアル」を巡り、禁酒教団との接触も増えていきます。


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