第22話『おっさん(半分女)の感想』
今回はカスミの新しい服選び回……のはずだったのですが、
女子服屋で気まずそうにしているおっさんが一名います。
そして、新たな酒の冒険の気配も――。
※お酒は20歳になってから。
※お酒を飲んだら乗り物の運転はやめましょう。
※楽しく適量で。
女子服屋の奥。
マサムネは居心地悪そうに壁際へ立っていた。
周囲は女性客ばかり。
完全に場違いだった。
「……帰りてぇ」
小さく呟く。
「何言ってんの?」
ジンが笑う。
「あんたも半分女なんだから、こっち来なよ♪」
「半分ってなんだ!!」
マサムネが即座に叫ぶ。
「間違ってはいないな」
イーチコが真顔で頷いた。
「お前まで乗るな!!」
するとジンは、周囲の女性客へ軽く手を振った。
「大丈夫大丈夫♪」
「見た目おっさんだけど、女の子に詳しいから」
「みんな気にしないであげてー」
「どういう意味だ!!」
周囲の女性客がクスクス笑う。
マサムネは頭を抱えた。
「地獄だ……」
「ほらほら♪」
ジンは楽しそうに服を抱えてくる。
緑、白、淡い青。
軽装のローブ。
冒険向けのヒーラー服。
「これとか似合いそうじゃん?」
「え、えぇっ!?」
カスミが慌てる。
「そんなに一気に持ってこないでくださいっ」
「大丈夫大丈夫♪」
ジンは完全に楽しんでいた。
「ほらこれ」
「絶対似合うって」
「いやでも……」
カスミは困ったように服を見る。
白を基調にした軽装ヒーラー服。
青と金のライン。
教団服より軽く、
動きやすそうな作りだった。
「……どうでしょうか」
数分後。
試着室から出てきたカスミは、
少し恥ずかしそうだった。
白と青を基調にしたヒーラー服。
胸元には小さな金飾り。
裾は長すぎず、
冒険向けの軽装になっている。
教団服ほど堅苦しくない。
だが、どこか真面目な雰囲気は残っていた。
カスミは少し不安そうに、
マサムネを見る。
「この服……変じゃありませんか?」
マサムネは一瞬きょとんとした。
「ん?」
「いや……普通に似合ってると思うぞ」
素直な感想だった。
カスミは少し目を丸くする。
そして。
ふっと小さく笑った。
「……ありがとうございます」
「ほらねー♪」
ジンが嬉しそうに笑う。
「やっぱこっちの方がいいって」
「うむ」
イーチコも頷いた。
「動きやすそうだな」
その時だった。
ふと。
カスミの視線が、自分の教団服へ向く。
椅子の上に丁寧に畳まれている。
長く着てきた服。
禁酒教団の象徴。
カスミは静かにそれを見つめた。
「……」
誰も、すぐには声をかけなかった。
やがて。
カスミは小さく息を吐く。
そして――
そっと、その服を畳み直した。
「もう……戻れませんね」
小さな声。
だが、不思議と後悔は感じられなかった。
「戻る気あったのか?」
マサムネが聞く。
「……少しは」
カスミは苦笑する。
「でも」
新しい服の裾を軽く握る。
「今の方が、少し楽しいです」
ジンがニヤッと笑った。
「いいじゃん♪」
その時だった。
店の入口近くで、何やら騒ぎが起きる。
「ギルドの依頼書だってよ」
「また魔物討伐か?」
冒険者達の声。
イーチコが反応する。
「依頼?」
「見てくるか」
数分後。
一行はギルド掲示板の前にいた。
そこには、新しい依頼書が貼られている。
――――――――――
特殊素材採取依頼
対象:ソーダーマテリアル
危険区域:発泡湿地帯
――――――――――
「ソーダーマテリアル?」
カスミが首を傾げる。
その瞬間。
ジンの目が輝いた。
「……おい」
「まさか」
イーチコも眉を上げる。
「炭酸か?」
ギルド職員が説明を始めた。
「発泡湿地帯で採取できる特殊素材です」
「水を炭酸水へ変える効果があります」
沈黙。
次の瞬間――
「ジンソーダ!!」
ジンが叫んだ。
「炭酸割りもいけるな……」
イーチコまで少し揺れていた。
「お前まで乗るな」
マサムネが呆れる。
だが、その時。
カスミの表情が曇った。
「……発泡湿地帯」
「ん?」
「そこ、禁酒教団の監視区域です」
空気が変わる。
「酒飲み達へソーダーマテリアルが渡らないように……」
「教団が管理しています」
「マジかよ」
マサムネが顔をしかめた。
「めんどくせぇな」
「つまり」
ジンがニヤリと笑う。
「奪い合いってこと?」
「そ、そういう言い方はやめてください……!」
カスミが慌てて止める。
だが。
マサムネは少し笑っていた。
「まぁ」
「面白そうじゃねぇか」
「……今日はもう遅いな」
マサムネが依頼書を見る。
「宿でも取って、明日出発するか」
こうして。
酒飲み達の、炭酸素材を巡る冒険が始まろうとしていた。
(第23話へ続く)
お読みいただきありがとうございました。
カスミも少しずつ、新しい仲間達の空気に馴染み始めています。
次回からは、ソーダーマテリアルを巡る発泡湿地帯編へ突入です。




