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サクラとマサムネ異世界ほろ酔い漫遊記  作者: まほ。かんた。
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第19話 『酒駄目波』

第19話をお読みいただきありがとうございます。


ついにあの後輩との再会です。

今回は軽くぶつかる程度ですが、なかなか面倒な相手になりそうです。


※お酒は20歳になってから。

※飲酒後の運転はやめましょう。

※お酒は楽しく、ほどほどに。

 冷たい視線がマサムネを射抜く。


 「酒に頼って、逃げてばかりで」


 「お前なぁ……いきなり来てそれかよ」


 「当然です」


 ジローは一歩、前に出る。


 「その在り方は、正しくない」


 「……はいはい、説教はいいから――」


 マサムネは肩をすくめると、


 そのままジャックの瓶をひったくった。


 「飲むぞ」


 「おう」


 ぐび、と一口。


 瞬間――


 体が光に包まれる。


 長い髪が広がり、体がしなやかに変わる。


 ――サクラ。


 すらりとした脚。


 整った顔立ち。


 そして中身はいつも通り。


 「よし、来いよジロー」


 軽く首を鳴らす。


 その動作のまま――


 無意識に足を組んだ。


 すらりとした太ももが重なり、妙に様になる。


 「……っ!?」


 ジローの視線が一瞬ブレる。


 すぐに顔を背けた。


 「な、なんですかその格好は!」


 「え? なにが?」


 「その……足の……いや違う、そうじゃなくて!」


 「落ち着け」


 イーチコが淡々とツッコむ。


 「毎回これだな」


 「うるさい!」


 ジローは強引に構え直した。


 だが――


 その視線が、わずかに揺れる。


 目の前にいるのはサクラ。


 長い髪。


 整った顔立ち。


 そして、しなやかな体のライン。


 「……っ」


 わずかに目を逸らす。


 「いや、違う……集中……」


 無理やり構え直す。


 掌に力を込める。


 「……奥義・酒駄目波」


 空気が張り詰める。


 そして――


 「さあ・けえ・だあ・めえ・はああああ!」


 ドン、と衝撃が放たれる。


 一直線――


 ……のはずが、


 わずかに軌道がブレた。


 「おっと」


 サクラは軽く体をひねる。


 するり、と回避。


 「遅ぇよ」


 余裕の一言。


 次の瞬間。


 「うおっ!?」


 背後で悲鳴。


 振り返ると――


 「なんだこれ!?」

挿絵(By みてみん)

 ジャックが直撃していた。


 よろめきながらも瓶を口へ運ぶ。


 「こんなもん、飲めば――」


 ぐび、と含み――


 「ぶっ!?」


 勢いよく吹き出した。


 「な、なんだこれ!? 酢!? いや、酢よりひでぇ!!」


 喉を押さえ、顔を歪める。


 「くっ……体が……受け付けねぇ……!」


 ボトルを遠ざける。


 「酒が……飲めねぇ……!?」


 その様子を、ジローは静かに見ていた。


 そして、ゆっくりと口を開く。


 「……奥義・酒駄目波です」


 掌をわずかに掲げる。


 「この奥義で――禁酒教団の教えを、強化していきます」


 淡々とした声。


 だがその瞳には、確かな信念が宿っていた。


 「……は?」


 サクラが眉をひそめる。


 「いや、それ戦闘技じゃなくて思想の押し付けだろ」


 ジローは無言で構え直す。


 再び掌に力が集まる。


 「……奥義・酒駄目波」


 空気が張り詰める。


 サクラは静かに息を吐いた。


 「……当たったら終わり、か」


 わずかに腰を落とす。


 視線はジローへ。


 次の瞬間――


 「さあ・けえ・だあ・めえ・はああああ!」


 再び放たれる衝撃。


 だが――


 「遅ぇ」


 サクラは踏み込んだ。


 横へ逸らすように回避しながら、


 そのまま距離を詰める。


 「近づけば――撃てねぇだろ」


 低く言い放つ。


 ジローの目が見開かれる。


 「……!」


 間合いに入る。


 知心刀が閃く。


 「はあっ!」


 鋭い一撃。


 ジローは腕で受け流しながら後退する。


 「甘いです……!」


 だが、その動きはわずかに鈍い。


 至近距離。


 サクラの姿が、視界いっぱいに広がる。


 「……っ!」


 呼吸が乱れる。


 足が、一歩引いた。


 「どうした」


 サクラが一歩踏み込む。

挿絵(By みてみん)

 さらに距離が縮まる。


 「近ぇとダメなんじゃねぇのか?」


 「ち、違います……!」


 だが声が揺れている。


 視線が定まらない。


 「来るぞ、ほら」


 軽く挑発するように手を動かす。


 それだけで――


 ジローは、明確に後退した。


 「……っ」


 そして、そのまま距離を取る。


 大きく間合いを離し――


 背を向けた。


 「……今日は、ここまでです」


 低く言い残す。


 「逃げんのかよ」


 「戦術的撤退です」


 言い切るが、声に余裕はない。


 そのまま、素早くその場を離れた。


 静寂が戻る。


 「……なんだあいつ」


 サクラは肩をすくめる。


 その後ろで、


 「くっ……まだ舌が……!」


 ジャックがうずくまっていた。


 「酒が飲めねぇとか……拷問かよ……!」


 「そっちは大丈夫じゃねぇな」


 「全然大丈夫じゃねぇ!!」


 イーチコが小さく息をつく。


 「やばいな、あの技」


 「……ああ」


 サクラは、ゆっくりと自分の手を見る。


 「当たったら終わりだ」


 軽く握り直す。


 そして、ぽつりと呟いた。


 「……でもよ」


 視線を、ジローが消えた方へ向ける。


 「なんであいつ――あんなにブレてたんだ?」


 ――その頃。


 少し離れた路地裏。


 ジローは、壁に手をついていた。


 「はぁ……っ、はぁ……っ……」


 呼吸が乱れる。


 頭の中に、さっきの光景がよぎる。


 長い髪。


 近すぎる距離。


 あの仕草。


 「……なんだ、あれは……」


 歯を食いしばる。


 「相手は……おっさんのはずだ……」


 拳を握る。


 「……なのに……!」


 顔をしかめる。


 理解できない。


 整理できない。


 「……マサムネ先輩のはずなのに……」


 ぽつりと漏れる。


 「どうしてだ……」


 静かに呟く。


 「……あれは……」


 わずかに間を置いて、


 絞り出すように言った。


 「……反則だろ……」


(第20話へ続く)

第19話をお読みいただきありがとうございました。


禁酒教団の奥義「酒駄目波」、なかなか厄介な性能です。

当たれば終わり、という分かりやすい脅威になりました。


そしてジローの様子も、少しおかしいような……?


次回はこの戦いの続き、もう少し踏み込みます。

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