第16話 『飲む前に逃げるな』
黒泡鉱を求め、旧坑道へ。
頼れる案内役はイーチコ、頼れない同行者はいつもの二人です。
そして危なくなれば、たぶん飲みます。
※お酒は20歳になってから。
※お酒を飲んだら乗り物の運転はやめましょう。
※楽しく適量で。
■第十六話 飲む前に逃げるな
ゴゴ……ン……
また鳴った。
マサムネは即座に一歩下がった。
「帰るか?」
「早い!」
イーチコのツッコミが飛ぶ。
ジャックはニヤつく。
「HAHAHA! いい音だ! 当たりの匂いがする!」
「嫌な音しかしねえよ!」
ズズ……。
暗闇の奥で何かが動く。
イーチコが小さく言う。
「……来るよ」
次の瞬間。
ドォン!!
土と岩の塊が飛び出してきた。
赤い目が光る。
「なんだあれ!?」
「土魔!」
「名前からして強そう!」
土魔が腕を振り上げる。
マサムネは全力で後退。
「うおおおおっ!」
「逃げるな!」
イーチコの怒声。
マサムネは振り向いて叫ぶ。
「逃げるんじゃない! 戦略的撤退だ!」
「ただの逃走だろ!」
ジャックが銃を構える。
「HAHAHA! 任せろ!」
ドン!ドン!
弾丸は弾かれる。
「効いてねえ!」
「硬いんだよ!」
「じゃあどうすんだ!」
「中を狙う!」
「簡単に言うな!」
土魔が突っ込んでくる。
マサムネが懐を探る。
「酒……酒どこだ……!」
ない。
「ない!」
「は!?」
「さっきので最後!」
「なんでだよ!」
ジャック爆笑。
「HAHAHA! 欠陥勇者!」
「うるせえ!」
ドゴォン!!
地面が揺れる。
マサムネが転がる。
「飲ませろ! 話はそれからだ!」
「誰に言ってんだ!」
イーチコが工具袋をひっくり返す。
ガチャガチャ――
ポトン。
小瓶。
「……あ」
「それだぁぁぁ!!」
マサムネが飛びつく。
その瞬間。
ドン!!
土魔の足が振り下ろされる。
瓶が宙に舞う。
「ああああっ!」
ジャックが跳ぶ。
「任せな!」
キャッチ。
「ナイス!」
「スポーツじゃねえ!」
ジャックが投げる。
マサムネが受け取る。
即飲む。
ゴクッ。
光。
髪が伸びる。
体が変わる。
現れたのはサクラ。
「……やっとだ」
イーチコがため息。
「ほんと面倒くさいね!」
「私もそう思う」
土魔が突進。
サクラは横に避ける。
足元のツルハシを拾う。
「武器これかよ」
「文句言うな!」
「勝ってから言う!」
一歩踏み込む。
「これも戦略だ!」
ガギィン!!
ツルハシが関節に叩き込まれる。
ヒビが入る。
「そこ弱い!」
「最初から言え!」
連撃。
肩、膝、腹。
土魔がよろめく。
ジャックが撃つ。
「倒れろ岩野郎!」
サクラが跳ぶ。
ツルハシを振りかぶる。
ドゴォォン!!
直撃。
土魔が崩れ落ちた。
ドサァ……。
静寂。
マサムネに戻る。
「……勝った?」
イーチコが呆然。
「ツルハシで?」
ジャックが笑う。
「HAHAHA! いいねえ!」
イーチコが土魔の体を確認する。
目が輝く。
「見て! 黒泡鉱!」
確かに、黒い鉱石が体に埋まっている。
マサムネが顔を上げる。
「ってことは?」
イーチコがにやりと笑う。
「当たりだよ」
空洞の奥には、黒く光る鉱脈が広がっていた。
イーチコの目がさらに輝く。
「親父、腰抜かすよこれ……!」
ジャックが袋を広げる。
「よぉし、山分けだ!」
「素材優先!」
サクラは空洞の奥を見つめ、にやりと笑った。
「帰るぞ。鍛冶師を働かせる」
新たな武器の完成は、もう近かった
(第17話へつづく)
第十六話をお読みいただきありがとうございました。
黒泡鉱の確保に成功し、いよいよ次は鍛冶師の出番です。
どんな武器になるのか、次回もお楽しみに。




