第17話『名付けはだいたいノリで決まる』
黒泡鉱、無事に持ち帰りました。
というわけで今回は工房回、鍛冶師が本気を出します。
そして問題は――名前です。
※お酒は20歳になってから。
※お酒を飲んだら乗り物の運転はやめましょう。
※楽しく適量で。
青空の下。
ムギルの町、ラガーラガーの工房。
扉が勢いよく開いた。
「帰ったぞー!」
マサムネが叫ぶ。
その後ろでジャックが袋を担ぎ、
イーチコはやれやれと肩を回していた。
「うるせえ帰り方すんな! 何事だ!」
ラガーラガーが顔を出す。
そして袋を見る。
固まる。
「……おい」
ゆっくり近づく。
袋を開ける。
中を覗く。
止まる。
「……これ」
震える声。
「黒泡鉱じゃねえかぁぁぁ!!」
工房が揺れた。
「持って帰ってきたよ」
イーチコがさらっと言う。
「さらっと言う量じゃねえ!!」
ジャックが笑う。
「HAHAHA! 山ほどあるぜ!」
ラガーラガーは一瞬で顔を変えた。
職人の顔だ。
「よし」
低く言う。
「全員どけ。今から仕事だ」
マサムネが一歩下がる。
「おお……来たな」
炉に火が入る。
ゴォォ……と音が響く。
黒泡鉱が砕かれ、選別され、叩かれる。
火花が散る。
音が響く。
カン! カン! カン!
イーチコは腕を組んで見ていた。
「本気だね」
「そりゃそうだろ」
ジャックが笑う。
「いいねえ、この空気」
マサムネは少しだけ真面目な顔で見ていた。
「……これで、ちゃんとした武器になるんだな」
「なるよ」
イーチコが答える。
「親父が作るならね」
数時間後。
音が止まった。
ラガーラガーがゆっくり振り返る。
その手には――一本の刀。
黒く、鈍く光る刃。
泡立つような模様が、うっすらと浮かんでいる。
「完成だ」
短く言った。
マサムネが息を呑む。
「……これが」
サクラ用の武器。
ラガーラガーは刀を掲げた。
「さて」
ニヤリと笑う。
「名前だな」
来た。
マサムネが身構える。
「また変なのつける気だろ」
「語感は大事だ」
「絶対ノリだろ」
ラガーラガーは少し考える。
腕を組み、唸る。
「……知心剣」
「剣じゃねえだろそれ!」
即ツッコミ。
ラガーラガーは一瞬止まり、
刀を見て、うなずいた。
「……刀だから」
間を置いて、
「知心刀だな」
決まった。
マサムネが刀を見つめる。
しばらく沈黙。
そして一言。
「……なんか」
間。
「焼酎くせえ名前だな」
イーチコが即かぶせる。
「だろうね」
ラガーラガーが胸を張る。
「いいだろ?」
「開き直んな!」
ジャックが笑う。
「HAHAHA! 飲めそうな刀だ!」
マサムネがため息をつく。
「まあいい」
刀を受け取る。
ずしりと重い。
だが、しっくりくる。
「……悪くねえ」
イーチコが少しだけ微笑む。
「でしょ」
ラガーラガーが腕を組む。
「それで斬れなかったら、俺の看板下げる」
マサムネがにやりと笑う。
「上等だ」
新しい武器。
新しい力。
そして――
新しい騒動の気配。
マサムネは刀を肩に担ぎ、空を見上げた。
「……次はどこで飲むかだな」
イーチコが呆れる。
「まず戦うこと考えなよ」
ジャックが笑う。
「HAHAHA! それでいい!」
こうして――
サクラの新たな武器、知心刀が完成した。
(第18話へつづく)
第十七話をお読みいただきありがとうございました。
ついに新武器「知心刀」が完成しました。
次はこの刀の実力、お披露目になりそうです。




