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サクラとマサムネ異世界ほろ酔い漫遊記  作者: まほ。かんた。
12/15

第12話『文句男と美人剣士』

文句の多い男、ついに動く。


美人剣士との相性は――最悪かもしれません。


※お酒は20歳になってから。

※お酒を飲んだら乗り物の運転はやめましょう。

※楽しく適量で。

 翌朝。


 ムギルの町の中央広場は、朝から騒がしかった。


 禁酒教団が、通りの一角を占拠していたのだ。


 白い旗。


 酒杯に赤い禁止線が描かれた紋章。


 そして、木箱の上に立って演説する一人の男。


 木間次郎ジローである。


 「酒は判断力を鈍らせます!」


 「財布の紐も緩ませます!」


 「翌朝の頭痛率も高い!」


 通行人たちは、朝からげんなりした顔だった。


 「なんか細かいな……」


 少し離れた場所で、マサムネはパンをかじっていた。


 隣では、ジャック・ダニルが酒瓶を持っている。


 「朝から飲むな」


 「朝だから飲むんだ」


 「意味が分からん」


 その時だった。


 広場の一角で、教団員たちが酒屋の樽を運び出し始めた。


 店主が慌てて叫ぶ。


 「おい! それは今朝届いたばかりの麦酒だぞ!」


 ジローは腕を組んだ。


 「没収です」


 「教育的措置です」


 「ただの横暴だろ!」


 マサムネが思わず前へ出る。


 ジローが振り向いた。


 「先輩」


 「やっぱお前か」


 「やっぱとは失礼ですね」


 「朝から町中に文句撒き散らしてる時点でお前しかいねえよ」


 ざわつく周囲。


 ジローは冷静に眼鏡を押し上げた。


 「先輩。あなたは昔からだらしない」


 「遅刻する」


 「提出遅い」


 「言い訳多い」


 「姿勢悪い」


 「公開説教やめろ!」


 通行人が少し笑う。


 ジローはさらに続ける。


 「そんな人間が酒を擁護する資格はありません」


 マサムネのこめかみに青筋が浮いた。


 「言わせておけば……!」


 マサムネはジャックの持っていた小瓶をひったくった。


 「おい、それ俺の朝酒――」


 「うるせえ、あとで返す!」


 ぐい、と一気に喉へ流し込む。


 次の瞬間。


 ふわりと桜色の髪が揺れた。


 「――そのへんにしておけ」


 現れたのは、美しき女剣士。


 サクラだった。


 周囲がどよめく。


挿絵(By みてみん)


 「また出た!」


 「美人剣士だ!」


 ジローの眉がぴくりと動く。


 「……あなたですか」


 サクラは肩をすくめた。


 「朝から町の人に嫌われる才能、大したもんだな」


 「規律を嫌う者には理解できません」


 「文句ばっか言ってる奴にもな」


 「……」


 空気が張り詰める。


 ジャックが後ろで笑った。


 「始まるぞ」


 次の瞬間。


 ジローが地面を蹴った。


 速い。


 拳法の踏み込みだった。


 サクラは身をひねり、紙一重でかわす。


 「へえ、口だけじゃなかったか」


 「当然です」


 連撃。


 突き。


 回し蹴り。


 ジローの攻撃は鋭く、無駄がない。


 サクラも剣を抜かず、体さばきだけで避け続ける。


 「本気でやると町が壊れるぞ」


 「言い訳ですね」


 その瞬間、サクラの足払いが決まった。


 「うおっ!?」


 ジローが初めて体勢を崩す。


 そこへ剣の鞘先が、ぴたりと喉元へ止まった。


 「勝負ありだ」


 広場に歓声が上がる。


 ジローは悔しげに立ち上がった。


 「……覚えていなさい」


 「小物っぽい捨て台詞だな」


 「違います。次回への布石です」


 「自分で言うんだ」


 教団員たちを引き連れ、ジローは去っていく。


 その途中、宇良かすみだけが一度だけ振り返った。


 サクラを見る。


 そして、その横にいるマサムネを見る。


 「……?」


 何か引っかかったような顔だった。


 だが、すぐに去っていく。


 サクラは小さく息を吐いた。


 「危なかった……」


 ジャックが笑う。


 「何がだ?」


 「昔の後輩に説教されるのがよ」


 「そっちか!」


 ムギルの朝は、今日も騒がしい。


(第13話へつづく)

第12話は、ジローとサクラの初対決でした。


強いのに面倒くさい男。

かなり厄介です。


次回、物語はさらにややこしくなります。

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