第43話・大暴走<スタンピード>④
【1月17日11時20分――洞窟前広場】
『作戦開始まで、あと10分だ』
広場に集結したハンターたちのイヤホンへ、鳴尾対策本部長の低く響く声が流れる。
『もう一度言う。これが終わったらボーナスは弾むし、盛大な祝勝会も開く。だから――全員、生きて帰ってこい』
その言葉に、広場を埋め尽くすハンターたちから大歓声が上がった。
「おおおおっ!!」
張り詰めた空気を吹き飛ばすような咆哮。
その後方。
突入部隊の面々を前に、諏訪尊が静かに告げる。
「よし、突入の順番は説明した通りで頼むぞ」
「「了解!!」」
突入部隊は三班に分かれていた。
1班は、近接武器を主軸とした高速撹乱部隊。
真や巧がここに属している。
2班は、高火力による突破を担う強襲部隊。
政美、そしてAランクハンター・神堂が配置されていた。
そして、3班。
遠距離から援護を行う後方支援部隊。
翔馬は、しおり、瑠奈、Aランクハンター霧島とともにここへ編成されていた。
【1月17日11時30分――殲滅作戦開始】
洞窟入口に仕掛けられた爆薬が起動する。
轟音。
岩盤を揺るがす爆発とともに瓦礫が粉砕され、洞窟の入口が露わになった。
次の瞬間。
黒い影が、ぞろぞろと這い出してくる。
魔獣の群れだ。
「総員、迎撃開始!!」
号令とともに、前衛ハンターたちが一斉に飛び出した。
剣閃が走る。
銃声が鳴り響く。
魔獣とハンターの激戦が、再び幕を開けた。
【1月17日11時45分――洞窟内部・突入開始】
「行くぞ」
尊が先陣を切る。
その背後を偵察部隊、1班、2班、3班の順に続く。
洞窟内部は薄暗く、冷気が肌を刺した。
襲いかかる魔獣を、尊がほぼ一撃で切り伏せていく。
その速度は凄まじい。
尊たちの進軍速度は、翔馬にとって全力疾走そのものだった。
一歩でも遅れれば、その背中は闇の奥へ消えてしまう。
「はっ……はっ……!」
息が苦しい。
建御雷神の重量が肩へ食い込む。
「世渡くん、大丈夫?」
隣を走るしおりが声をかける。
「はっ……はい……なんとか……!」
選抜されたハンターの中には、自分より大きな武器を持つ者もいる。
だが、彼らは息一つ乱さずに尊の背を追っていた。
翔馬は改めて、自分がどれほど高い場所へ足を踏み入れているのかを痛感した。
やがて。
「……魔獣の数が減っているな」
奥へ進むにつれ、あれほどいた魔獣の姿が消えていた。
「奥の魔獣に怯え、外へと移動しているものと思われます」
偵察部隊が尊に答える。
「あの映像だけでも威圧感はあったからな。……当然か」
誰も軽口を叩かない。
緊張だけが、洞窟を満たしていた。
【1月17日12時02分――突入部隊、最奥へ到着】
「ここで停止してください」
偵察部隊の制止。
その先には、大空洞が広がっていた。
「この奥にいるのか?」
「はい」
尊が振り返る。
「最終確認だ。一班は撹乱。二班は突破。三班は援護射撃」
その視線が全員を貫く。
「開始は1210。それまでしばし身体を休ませるんだ」
「「了解!!」」
【1月17日12時10分――戦闘開始】
「時間だ」
尊を先頭に、大空洞へ突入する。
そこにいたのは――映像で見ていた黒き巨大狼の魔獣。
岩山のような巨躯。
禍々しい双眸。
それは静かに横たわっていた。
尊が指を動かす。
合図。
直後、霧島が愛銃【ニニギ】の引き金を引いた。
放たれた魔弾が、黒の魔獣の額へ直撃する。
グォォォォォ!!!
黒い魔獣の雄叫び。
「行けッ!!」
1班が飛び出した。
高速で黒の魔獣の周囲を駆け、翻弄する。
その隙を突いて2班が斬り込む。
鋼を断つ斬撃が毛皮を裂く。
重撃が骨を軋ませる。
そこへ3班の銃撃が次々と叩き込まれた。
翔馬も建御雷神を構える。
スコープ越しに標的を捉え――引き金を引く。
轟ッ!!
凄まじい反動。
放たれた弾丸は黒の魔獣のこめかみに命中した。
肉が裂け、鮮血が飛び散る。
だが――
黒の魔獣は倒れない。
「嘘だろ……!」
頭部への直撃。
それでもなお、黒の魔獣は立っていた。
グォォォォォォッ!!
咆哮。
その瞬間、衝撃波が炸裂する。
「うわぁっ!?」
前衛ハンターたちがまとめて吹き飛ばされ、壁へ叩きつけられた。
「くそっ、この耐久力と衝撃波……まさか神獣の類か!?」
尊が剣を構え直す。
「これは、本気を出さんとならんか」
そう言うと尊の愛剣【カグツチ】に炎が纏った。
「なっ!?そんなことできるの?」
翔馬が驚きの声を出す。
尊は黒の魔獣に向かっていく。
その後をハンターたちが続く。
だが時間が経つにつれ、ハンターたちの動きは鈍っていった。
「レベルが違いすぎる……」
「本当に倒せるのか……?」
弱音が漏れ始める。
「あきらめるんじゃない」
1人鼓舞する尊。
その時だった。
「……騒々しいのう」
空洞の奥から響いたのは、凛とした、貴族のような気高い声。
暗闇の中に、二つの黄金の瞳が灯った。
それだけで、この場の空気が凍りつく。
いや――空気だけではない。
その場にいた全員の本能が警鐘を鳴らしていた。
やがて、銀色の巨躯が、ゆっくりと姿を現した。
黒狼をさらに上回る体躯。
月光を溶かしたように光り輝く銀毛。
一歩踏み出すたび、洞窟が震える。
「……あまりに喧しいゆえ、眠りを妨げられてしもうたではないか」
絶望が支配する広間。
誰も、動けない。
辺りを見回し
「ふむ。事情は察した」
とつぶやき、そして、銀の魔獣は黒の魔獣へ歩み寄り。
「カァァァァッ!!」
咆哮。
その一声だけで、黒の魔獣の巨体が塵となって消滅した。
「なっ……」
絶句。
Bランク以上の精鋭たちですら、ただ立ち尽くす。
それでも。
尊だけは剣を構え、前へ出た。
銀の魔獣がその姿を見下ろす。
「お主が、人の代表か?」
「……そうだ」
銀の魔獣の瞳が細められる。
「ふむ……お主から、雲竜の匂いを感じるな」
尊の表情が変わった。
「なっ……!? あなたは、神獣なのか?」
尊の口から漏れた言葉に、一部のハンターたちが息を呑む。
この場にいる者の中で、神獣の存在を知る者は極めて少ない。
銀の魔獣は静かに顎を上げた。
「そうじゃ」
その声音は、圧倒的な威厳を帯びていた。
「わらわこそ、この地を千年護り続けし土地神――銀月狼じゃ」
この度は読んでいただきありがとうございます。
この作品は、構成、文章を先に考え細かい描写等に関してはAIにて修正しています。
よろしければ感想、評価など書いていただければ今後の参考にさせていただきたいと思います。




