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カモメ賢者と黒髪の少女  作者: ジャパンプリン
第七章 三人の賢人(前夜編)
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第75話 叡者の仮説

俺は、空から魔法大学に帰還した。

地上は警備が厳重だが、空中はガラ空きだ。

ましてやカモメの一羽や二羽など当たり前に飛んでくる。

(カモメ)姿の俺なら紛れて忍び込むのは容易い事だ。


大学母屋の勝手口。

その(ひさし)の上に乗り、カモメ(ずわ)る。

暫くすると勝手口のドアが開く音がした。

出てきたのは、シェリーだ。

シェリーは振り返って俺を見上げた。


「モーゼス、おかえり」


優しくはにかみ両手を差し出すシェリー。

俺は飛び降り、そっと手のひらに着地した。


「俺が(ひさし)に乗ってるって、よく分かったな」


「えへへ。

 私も最近、何となく分かってきたの。

 ここで探す感覚」


シェリーの目線が胸元へと向かう。

なるほど。

ティシアが得意としてる、魔力感知か。

胸で分かるとか言ってたもんな。

シェリーも成長したということか。

二重の意味で。


シェリーは(カモメ)を胸に抱き抱えると、母屋へと足を運び始めた。


――――――


研究室に戻ると、ティシアと母アストリッドが椅子に座り、談笑していた。

帰還の挨拶を済ませると、俺は早速本題を切り出した。


「さっき空を飛んでてちょっと気づいたことがあるんだ」


二人は揃って瞼を広げ、どういうことかと続きを促してきた。


「うん。でもまずは俺達も座るとするか」


首を回してシェリーに目配せすると、彼女は頷き傍らの椅子に腰を下ろした。

俺は勿論シェリーのお膝の上だ。

準備は出来た。

説明を始めるか。


「ええと、どこから話したものか。

 ……そうだな。

 まずはこれだ。

 シェリーの黒髪って魔力を吸ったり出したりしてるんだよな?」


「そうね」

 

ティシアの相槌とともに、母も無言で頷いた。


「それでだ。

 俺もずっと魔力圧が関わる吸い込みだと思ってたんだが。

 よく考えると吸収の可能性もあるよな。

 そう仮定すると、重要なのは濃度だ。

 変動してたから押し込む事ばかり考えてたが、手ごたえは皆無だった。

 でも、これならどうだろう。

 試してみる価値、あると思わないか?」


「濃度、ね……。

 確かに、その可能性はあるかもしれないわね。

 でもこれ、どうやって調べるの?

 シェリーの頭を覆う感じだとマズイでしょう?」


流石はティシアだ。

濃度と聞いて即座にその思考に至るとは。

賢者の肩書は伊達じゃない。

そこなんだ、問題は。


そんなことを思いながら、俺は言葉を重ねた。


「ああ、マズイな」


「え? どうして?」


これまで空気に徹していたシェリーの口から疑問の声が飛び出した。

と、そこに、


「魔力酔いってやつさ」


母が口を挟んできた。


「そもそも、体にかかる魔力濃度って、普通は安定してるからね。

 だから、迷宮とかで急に魔力の濃い場所に行くと眩暈がしたりするのさ」


そういうことだな。

母の解説に俺は首を振り、同意を示した。

すると今度はティシアの口から彼女の見解が示された。


「でも、シェリーちゃんはその辺強そうな気もするけど…。

 普段から、黒髪を通して魔力の出入りがある訳だし」


なるほど。

確かにそれも一理ある。

案ずるより生むが易し。


「んー、じゃあ、ちょっとだけ試してみるか?」


「そうね」「そうさね」


ティシアと母の同意を得て、早速俺達は実験してみることにした。

ふたたび魔力測定を行う。

ということは……ゴクリ。


と思ったのも束の間、案の定、俺は部屋から追い出された。

準備が出来たら呼びにくるから、との言葉とともに。


……ええ。知ってましたよ。

ええ。


――――――


再び入室を許された俺は、翼を広げて羽ばたいて、研究室に飛び込んだ。

だが、断じてシェリーの寝間着姿に誘われたわけではない。

俺には一刻も早く実験に取り掛かる義務がある。

そう、これはただ、(カモメ)の叡者としての責務に忠実なだけだ。


研究室で待っていたのは、夏にふさわしい薄着をしたシェリーだった。

いや、ティシアと母も居るな。

当然だ。


シェリーの頬は白桃の如くほのかな赤みを帯びていた。

寝巻(ネグリジェ)の中ほどを両手で握り、恥じらいの表情を見せる。

か、可愛い……。


ん? 残る二人の視線が変だな。

その表情は呆れの色をはらんで見える。

……。

まあ良いだろう。

早速実験に取り掛かるか。


二人の監修のもと、俺とシェリーは再び測定器に入った。

ふざけるのはここまでだ。

俺は精神を統一し、シェリーの頭を覆う感じで魔力濃度を高めることにする。

と言ってもカモメの羽根の厚さの如く、ごくわずかな変化だ。

この程度の制御、今の俺には造作も無いことだ。

あくまで実験だし、シェリーの身に危険が及ばない範囲に留めておかないとな。


「どうだ?」


「うん……なんか変な感じがする。

 呼吸をかき乱されるような、そんな感じがするの」


その時、測定器の扉が開かれた。

扉の先には真剣な表情のティシアが見える。


「これじゃあダメね。

 貴方の起こした濃度変化、この測定器でも検出できなかったわ。

 なのに、もうシェリーちゃんは異常を感じてるじゃない」


そうだな。

これではっきりした。

頭を覆うようなやり方ではダメだ。

やはりそうか。

だが俺には秘策がある。

俺は頷き、続いて二の矢を放つことにした。


「そこでだ。俺に考えがある。

 ヒントは、雲だ」


「雲? 何よ唐突に」


「うん、そうだな。唐突だが、雲だ。

 雲って、外から見ればあんなに境界がハッキリしてるのに、

 中に入れば霧に入ったかのような錯覚を覚えるんだ」


ティシアが首を傾げている。


「つまり黒髪、というより頭の境界ギリギリに沿って濃度の跳びを作れば。

 そうすればシェリーに負担をかけずに濃度を増せるんじゃないか。

 これが俺の考えだ」


「でも、それって無茶苦茶難しくない?」


「難しいさ。

 でも、俺なら何とか出来るだろう」

ストック切れました><;

残りの話は書き上がり次第の投稿になります。

投稿時間はお昼頃の予定です。

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