第74話 王者の閃き
タイトル変えてみました。
最終章突入時には元に戻します。多分。
しばらく作者の実験にお付き合い願いますm(__)m
俺は自由だ。
行く手を阻むどころか上下左右、背後に至るまで何者の姿も見当たらない。
眼下には魔法都市が見える。
あの巨大な魔法都市とて、今の俺にかかればパン切れのようなものだ。
そう。
俺は今、空という名の庭を独占し、全能感を満喫していた。
向こうに上昇気流が見える。
あれを使ってさらに上空へと飛び上がるか。
っと、何かが上からやってくる。
あれは、トンビか。
ははぁ。
縄張りを主張してるのか。
だがここは俺の庭だ。
その勝負、受けて立つ。
――飛んでるけどな。
トンビの野郎が一気に距離を詰めてきた。
降下の勢いを生かした、良い立ち回りだ。
俺を相手に距離を詰めるとは、
トンビにしてはやるじゃないか。
だが、カモメは空の王者。
この俺を相手に空中戦で勝てると思うなよ。
俺は針路を上に取り、トンビの急襲を逸らしにかかる。
だが、敵もさるもの。
俺の行き先を狙って旋回してきた。
トンビの嘴が頭上に迫る。
――ここだ。
俺は軽やかに傾転し、已んでのところでトンビの初撃を躱してみせた。
トンビが急旋回し、再び俺を追ってくる。
だが、急降下の利は失われた。
ここからが本番。
見てろよ、この野郎。
――――――
トンビが俺を追ってくる。
今度は同じ高度、つまり同条件だ。
奴は燃費が悪い。
このまま逃げ続ければ、奴は何処かで諦めざるを得ないだろう。
だがそれでは面白くない。
まずは、これだ。
俺はトンビを真後ろに誘うと、一寸の間だけ翼を狭めて小さく速く羽ばたいた。
俺の背後に生じる渦が、トンビの周りの流れを掻き乱す。
よし。
たった一瞬だが姿勢が崩れた。
この隙を逃す俺じゃない。
咄嗟に羽ばたきを止め減速し、即座にトンビの背後を取った。
勝負ありだ。
カモメの速度にトンビは敵わない。
後はこのけしからん奴をどうしてくれるか。
撃墜するのも忍びないが……。
その時、トンビが頭を下に向けた。
急降下して距離を稼ぐ、逃げの動きだ。
負けを認めたか。
良いだろう。
ここは見逃してやる。
王者の情けだ。
――――――
一仕事終えた俺は上昇気流に乗り、更なる高みを目指した。
風に押される心地よさに身を任せて頭を空にする。
だが気付けば思考が再び顔を表す。
俺の思考は再びシェリーの黒髪へと吸い寄せられていった。
シェリーの黒髪。
そこで何が起きているのか。
周囲の魔力は吸収するが、俺の魔力は全く吸い込まない。
どういう事だ?
いや、待てよ。
いま俺は、吸収と言ったな。
これはつまり、圧をかけて吸ってるわけではないということか?
あくまで布が水を吸い上げるかの様に、拡散吸収が作用している……?
だとすると、必要なのは圧ではない。
濃度だ。
しかも均一に、か。
難しいな。
!!!
むお!
何だ!?
雲か!
マズいな。
モヤに囲まれて何も見えない。
何とかして外に出ないとな。
――いや、これだ!
今、俺はいきなり雲に突っ込んだな。
これはつまり、境界が不連続なのだ。
だが、一度内に入れば中は均一。
そうだな。
これは試してみる価値がある。
だが、まずは雲から出るのが先決だ。
仕方ない。
魔法を使うか。
一様流
途端に周囲の霧が流れ、俺は再び視界を取り戻した。
気がつけば、魔法都市から随分離れてしまったな。
今や麦粒かと錯覚するほどに小さく、後方に見える。
俺は宙返りを決めて、同時に半捻りした。
そして目線の先に魔法都市を捉えた。
帰ろう。
シェリーの元へ。




