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第72話 叡者と煩悩

昨晩は女ども三人にこってり絞られた。

そして一夜明け、皆で魔法大学まで歩いてきた。

(カモメ)が先導し、女どもは三人横並び。

ティシアと母アストリッドの間にぎこちなさは感じられない。

全ては計画通りだ。


そう。

全ては計画通りなのだ。

ぐすん。


そして今、(カモメ)達はティシアの管理する樹海の入り口へとやってきた。

正確には、ティシアの研究室の扉の前だな。

俺は小動物だから良いとして、ホントにあの部屋に三人も入れるのか。


ん?

今、後ろでティシアが鼻で(わら)ったように聞こえたが。


扉の前で立ち尽くしていると、

不意に体が持ち上がった。

ティシアだ。

両手で持ち上げてきた。

そのまま俺は、左の小脇に抱えられ、


「ふふん。まあ、見てのお楽しみよ」


頭上からティシアの声が聞こえた。

首を回して周りを見ると、シェリーと母の苦笑いが見える。

何だ?

また、何かやらかしたか?


ティシアが右手で鍵を開け、扉が開かれた。

そして、俺の目に飛び込んできたのは衝撃的な光景だった。



――――――



何があった?

これではまるで、隕石が衝突して、全てが吹き飛ばされたかのよう。


そう。

そこには、整理整頓の行き届いた、小綺麗な部屋があった。

中央に(そび)えるのは、大型の魔導機。

魔力計測装置だ。


「どう?

 見違えたでしょう?」


そう言ったティシアの声色は、どこか誇らしげだ。

でも、あの樹海をここまで片付けたのなら、

大したもんだ。


「あぁ。前回とはえらい違いだ。

 でも、アレだけあった魔道具とか、

 一体何処にやったんだ?

 整理するにしたって限度があるよな。

 どちらかと言うと、

 消えた様に見えるんだが」


「そ、それは……」


言葉に詰まったか。

何か怪しいな。


「もしや、実験室に放り込んだだけとか」


「い、嫌ね。私に限ってそんなこと……」


図星だったか。

多分、シェリーの手紙が届いてから、

慌ててこの部屋の掃除をしたのだろう。

計測したいって伝えてたしな。


「それより!

 計測よ。

 まずは貴方から始めましょう」


誤魔化したな。

まあいい。

気付かぬふりをするのも紳士の嗜みだ。


「そうだな。

 では、早速だが要領を教えてくれ」


「ええ。

 と言っても難しいことは無いの。

 ただ中に入って、シェリーちゃんの黒髪にしたみたいに魔力操作するだけよ」


「なるほど。

 お安いご用だ」


――――――


装置の中には腰掛けがあった。

俺は腰掛けの上でカモメ立ち。

ティシアの指示だ。

装置の扉が閉まり、思わず息を飲む。

俺、狭いとこ苦手なんだよな……。

空を飛び回る、鳥の本能なのだろうか。


む。

ティシアの合図があった。

では、始めるか。


転生術の要領で、

目の前の空間に魔力で圧をかけてゆく。

一点に、周囲から均等に。

計測だから出力は要らない。

ゆっくりと強弱を付けながら、

波形を意識して……。


(しばら)く続けたが、そろそろ限界だ。

中心ではどんどん圧が高くなる。

これ以上は危険だ。

結局、魔力の逃げ場がないからな。


ここからは圧を落としてゆく。

周囲から均等に魔力を吸い取りゆっくりと。

結局、加圧の倍ほど時間をかけて減圧した。

それを見計らったかのように、カチリと音がして計測装置の蓋が開いた。


装置の外に出ると、ティシアが何やら真剣な面持ちをしている。


「どうだった?」


「そうね。

 等方性が素晴らしいわ。

 真球率は99.99%を超えてる。

 よくぞここまで見事に制御するものね」


「俺も今や叡者と認められた。

 その名は伊達じゃないさ」


「じゃあ次は、シェリーちゃんの黒髪との干渉を見ましょうか」


む、むむむ。

それはつまり、シェリーと一緒に入るって事だよな。

服を着てると計測できないって言ってたし。

これは……。


「じゃあ、モーゼス。

 貴方はちょっと、

 向こうで待ってなさい」


「え? でも、一緒に入るんじゃないのか?」


「そうだけど。

 まさか貴方、乙女の着替えを覗くつもりだったのかしら?」


ティシアが横目がちに見下ろしてくるのが分かる。

いや、ティシアだけじゃない。

他の二人もだ。

視野の広い(カモメ)には見える。

まずいな……


「い、いえ。

 滅相もございません。

 叡者にして紳士のこのモーゼス。

 神に誓ってそんな不道徳な真似は致しません」


「どうかしらね……。

 まあいいわ。

 準備ができたら呼ぶから、

 それまで大人しくしてるのよ」


ふぅ。

何とか凌ぎきったか。

残念だが仕方ない。

ここは大人しく従うか。

壁にある扉を開け、隣の執務室へと移動する。


執務室のソファに飛び乗り、(カモメ)は目を閉じた。

これから俺は、シェリーと二人、生まれたままの姿で装置に入るのか……。

ゴクリ。

緊張するぜ。


シェリー。

どんな感じなんだろう。

最近は特にプロポーションも良くなって来たし。

ついでに魔力薬(精力剤)のお代わりとか、用意してくれないかな。

うん。

計測なんかよりそっちの方が大事だろう。

邪魔者二人には席を外してもらって――


その時、扉がノックされた。


「もう良いわよ。

 研究室にいらっしゃい」


ティシアの声が聞こえたかと思うと、扉が開いた。

俺は即座に翼を広げ、扉の向こうへ飛んで行く。


部屋に飛び込んだ俺の目に入ってきたのは――

シェリーがなんか、寝巻の様な服を着てる。

なんで?


「ふふっ。

 毎回裸というのも問題があり過ぎるから、

 私が開発したの」


なん……だと?


くそう。

余計なことしやがって。


ぎゃう!!!

首つかまれた!


「貴方、ほんと碌でもない事しか考えないわね」


く……苦しい。

たすけて……。

ごめんなさい。


心の中で懇願していると、首から手が離された。


「まったく。

 紳士が聞いて呆れるわ」


ふぅ。

酷い目にあったぜ。

周りを見れば、シェリーも母も苦笑いを浮かべている。

これは、嵌められたのか?

ぐぬぬ……納得行かん。


恨みの念を込め、ティシアに目を向ける。

するとティシアは鼻を鳴らし、言い放った。


「じゃあ、二人とも準備できたみたいだし、

 早速始めましょうか」



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