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第68話 親子の語らい

エンシェルムを出港してから約二週間。

俺達は、ある港町で船を下りた。

初夏の日差しに祝福され、世界の全てが力を帯びて見える。

加えてここは地域最大の港。

人々の生み出す活気もまた相当なものだ。

(カモメ)達は、港と市場の喧騒を横目に通り抜け、街の中心部からほどなく離れた宿で落ち着くことにした。


今、俺とシェリーは母アストリッドの部屋に集まり、今後の予定について話をしている。

母はベッドに、シェリーは椅子に腰掛けている。

俺はベッドでカモメ座りだ。

何となく、な。


「ねえ、モーゼス。

 ここからアステロンまで馬車で三日って言ってたわね。

 ティシアさんに、先触れの手紙を出しておかない?

 いきなり行ったら、また前回みたいになるかもしれないし」


シェリーの提案に、過去を思い出す。


「まあ、流石に前回みたいなタックルはもう無いと思うが。

 ……そうだな。

 船旅で母さんも疲れただろうし、

 この街で少し休んでから行くか」


俺の背に手が置かれた。

母だ。

カモメ姿になってからというもの、俺の扱いはいつもこんな感じだ。

まるでペットのよう。

失礼するぜ。

いや、でもやはり、この見た目では仕方ないか。

などと考えていると、母の声が聞こえた。


「それは助かるね。

 ノエリアからエンシェルムの時は、そうでもなかったんだけどね。

 これも歳か。

 嫌になるね、まったく」


「じゃあ、決まりだな。

 一週間くらい、ここで羽を伸ばすとするか。

 まぁ、俺は伸ばしてる方が疲れるんだけどな」


俺はそう言って立ち上がり、羽を広げてみせた。

二人の口から笑い声が漏れる。

こういうのも良いよな。

一家団欒ってやつだ。


――――――


翌日の朝、朝食を終えて部屋に戻り、シェリーと二人で佇んでいると、扉を叩く音が聞こえた。

シェリーが返事をすると、扉が開いて母が姿を現した。


「やあ、二人とも。

 良かったら散歩にでも行かないかい?

 良い天気だ」


昨日は疲れたなんて言っておいて、一夜明ければ散歩か。

元気じゃないか。

まあ、断る理由は無いし……


「そうだな。

 俺もたまには歩いてみるか。

 シェリーはどうする?」


「ん~、そうね。

 私は少し宿でゆっくりするわ」


ん? なんか意外だな。

そんな疲れてるようにも思えないが。

気が乗らないとかか。


「そうか。

 それも良いかもな」


俺の言葉にシェリーが小さく頷いた。

母もまた頷いたのが見える。

決まりだな。


「じゃあ、行くか。

 よっと」


掛け声とともに(カモメ)は飛び上がり、母の右肩に止まる。


「モーゼス、アンタさっき自分で歩くって言ってなかったか?」


む。厳しいな。

でも、宿内をカモメが歩いてると野良と間違えられるし。


「宿の中だけ、な」


「……まあ良いだろう」


――――――


今、(カモメ)は母と並んで海縁(うみべり)の散歩道を歩いていた。

波音が心地良い、清々(すがすが)しい朝だ。

だが外界の雰囲気とは裏腹に、母の言葉は険を覗かせる。


「ティシアって子に会うのか。

 私はどうにも気が進まないね」


……それもそうか。

ティシアの件が切欠で俺はエンシェルムに旅立ち、音信不通に至ったわけだし。

それだけならまだしも、帰ってきたら今度はカモメになってるときた。


「まぁ気持ちは分かるが。

 でも、そのおかげでシェリーに会えた訳だし。

 悪い事ばかりでもないさ」


俺がそう言い放つと、母もまた、合いの手を入れてくる。


「ん~、それもそうか。

 確かに、シェリーちゃんが気にしてないんだったら、

 私が余計な口を挟むことでもないか」


良かった。

まずは第一関門を抜けたか。


「あの二人は仲良かったぞ。

 なんだかんだで二ヶ月一緒に過ごした訳だし。

 それに、ティシアもまた一角の賢者だ。

 会ってみれば、案外母さんとも気が合うんじゃないか?

 俺だって、別に喧嘩別れじゃないしな」


「……そうさね。

 あまり余計な事は考えずに、まずは会ってみるかね」



――――――


それから数日後、魔法都市アステロンでは――

モーゼス(カモメ)のかつての想い人、アマルティシア。

彼女は自宅の屋敷の一角でソファに身を預け、手紙を読んでいた。


「え?

 シェリーちゃんとモーゼスが来る?

 なになに、お母さんも一緒?

 私、恨まれてるんじゃないかしら。

 ルカがああなったのって私のせいだし……」


アマルティシアの眉間に皺が寄り、眉根が下がる。

その表情は、どこか上の空だ。

しばらくの(のち)、彼女は小さく(ひと)()ちた。


「旅に出ようかしら」

第七章は5/1投稿開始予定です。

変更がある場合は、その旨活動報告でお伝えします。

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