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第66話 次なる目的地

シェリーの黒髪は特別だ。

魔力が湧き出し、常にシェリーの魔力を補充し続けている。

それだけでなく、ごく僅かながらも周囲の魔力を吸い込んでいる。

母アストリッドの感じるところでは、湧き出す魔力の()(どころ)は神界の公算が高い。

ということは、吸い込んだ魔力の行先もまた神界なのだろう。

そう思って、魔力の吸込(すいこみ)に合わせて俺の魔力を送ろうとしてみたが……。

結果は失敗だった。


『道は扉の先に』か。


先の失敗を経てもなお、俺にはシェリーの黒髪こそが『扉』なのだと感じられる。

これは直感だ。

元々、黒髪から生じる謎の魔力に気付いたときからそう思ってたしな。

しかし、昨日試した感じでは、うんともすんとも言わなかったのも事実。

やり方が間違ってるのか。


「扉と言われてもな……」


それから一週間、俺達は試行錯誤を重ねた。

だが、結果は梨のつぶてだった。



――――――



俺達は今日もレフカンの実験室に集まり、議論を重ねていた。

転生失敗の翌日からは、レフカンが椅子とテーブルを用意してくれた。

最近の(カモメ)は椅子の上に箱を置き、その上でカモメ座りだ。


「何か、根本的に考え方を間違えてるのか。

 そもそも、魔力の出入りがあるのは分かったとして、

 そこに干渉しようって話だもんな」


シェリーの黒髪に関わる魔力。

これの感知は出来ても、関与となると一転して、俺達は無力だった。


「これ以上何かを調べるとすれば、精密計測……ティシアのところか」


あ。

今一瞬シェリーの顔が曇ったか。

そういえば、


「そうだったな。他の方法を……」


そう言いかけた俺の言葉にシェリーの声が重なった。


「ううん。私は大丈夫。行きましょう、ティシアさんの所へ」


シェリーは複雑そうな表情で、それでもなんとか笑みを見せている。

無理をしているのは明らかだ。

だが、他に手掛かりが無いのも事実。

シェリーもそこは理解している。

とは言え……


「良いのか?」


その言葉に今度はニコリと明確な笑みを見せたシェリー。


「うん。あんなの、大したことないわよ」


その声に、もはや心の陰りは感じられなかった。



――――――



結局、あれからもう一週間ほどエンシェルムに滞在した。

長旅で疲れた母を休めるためだ。

ついでにシェリーにも休んでもらった。


俺はといえばレフカンの執務室に入り浸り、

時に思案し時に議論しと旧交を温めていた。

そして夜は飲みに繰り出し大人の時間を楽しんだ。

でも、男の楽園は勘弁してもらった。

俺にはシェリーが居るからな。



出発の日、俺達は港へとやって来た。

レフカンの伝手で信頼できる船長を紹介してもらった。

ここからは大型貨物船に便乗し、ティシアの待つ魔法都市アステロンへと向かう。

二週間ほどの船旅だ。


(カモメ)はシェリーの左肩に乗り、レフカンと対峙していた。


「世話になったな、レフカン」


「いいってことよ。

 またお前に会えるとは思ってなかったからな。

 久しぶりに楽しい時間だったぜ。

 また遊びに来てくれ」


レフカンは笑顔を浮かべている。

俺もコクコクを首を振り、それに応える。

続いてレフカンの目線がシェリーに向かい、

途端に申し訳なさそうな顔へと変わる。


「なあ、シェリーの嬢ちゃん。

 その、何だ。

 モーゼスを連れまわして悪かったな」


シェリーは軽く(かぶり)を振り、

いつもの透き通った声を響かせる。


「いえ、もう何年もずっとモーゼスと一緒だったから、何だか新鮮で。

 お母さんにも色んな所に連れて行って貰いましたし」


え?

俺は思わず首を回し、シェリーの顔を見た。

だが、黒髪に遮られて表情は分からない。

その時、頭の後ろで母の声がした。


「ま、そういうこった。

 楽しんでたのは男どもだけじゃあないってことさね。

 なあ、シェリーちゃん?」


母の言葉にシェリーは僅かに首を回し、母へと顔を向ける。

シェリーの顔が見えた。

端正な顔からは想像もできない満面の笑顔だ。


「はい。

 私、とっても楽しかったです。

 また連れて行って下さい♪」


始めて出会った時の様な笑顔に弾む声。

これまた随分とご機嫌だな。


「ふ~む。

 どこで何したんだ?」


「ふふっ♪

 それはね……内緒☆」


シェリーがバチンとウインクを決めてきた。

これはマリア譲りだな。

もっとも、シェリーに限っては決して殴りたくなるような顔はしてない。

可愛すぎて惚れ直すレベルだ。

だがしかし……


「ぐぬぬ」


なんか気に入らないんだよな。

やっぱり自然体じゃないからなのか?

悶々としていると、レフカンの笑い声が聞こえた。


「はっはっは。こりゃあ一本取られたな、モーゼス」


周りの人々が振り返るほどにデカい声だ。

コイツはコイツで相変わらずか。

……。


「ま、良いだろう。

 仕方ないさ」


思わず俺が苦笑の声を漏らすと、それに呼応するようにシェリーと母の笑い声も聞こえた。

全員で笑って別れる。

それも良いだろう。

過去の別れは湿っぽいのばかりだったからな。

これも、レフカンのおかげか。


ふいに、レフカンが拳を振り上げ、俺の目前に差し出した。

俺は(クチバシ)の先を拳に付き合わせる。


「じゃあな、モーゼス」


「ああ、レフカン。

 俺の、友よ」


――――――


こうして友との別れを済まし、俺達は貨物船へと乗り込んだ。

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