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第62話 真相への扉

「ちょっとここは、落ち着いて考えようじゃないか」


昼食後のカフェテラス。

俺達四人は談笑を続けていた。

話は自然とミルコロンの――縁結びという名の――

呪いへと向かっていった。

その()(なか)、母アストリッドがそう切り出したのだった。


母の目が師匠の目に変わったのが分かる。

そして、言葉を続ける。


「元々、ここへ来た目的はシェリーちゃんの黒髪から湧き出る魔力が大きく減ったことを調べることだったね。」


確かに。

そのために俺たちはここまで旅してきたのだった。


「そうだな」


(カモメ)はコクコクを首を縦に振り、傍らのシェリーもまた静かに頷いた。

向かいに座るレフカンは、興味深げに聞き入っている。


「それと、ノエリアでアンタを叡者にしたこと。

 叡者の証の修行でアンタも大分魔力の扱いが上手くなった。

 今ならカモメ姿の魔力量でも逆転生は成立させられるんじゃないかって話だ」


そう。これだ。

このために、俺達はわざわざ道中でノエリアに立ち寄ったのだった。

ノエリア学術院で(カモメ)の力を証明し、叡者と認定される。

叡者の証は更なる高みへと導く修行の道具でもある。

ノエリアからここまで、約二ヶ月に渡る舟旅の傍らで俺は修行に打ち込んできた。

おかげで魔力の変換効率は格段と上がった。

効率も加味した実質的な魔力量は、もはや転生前を超えた実感がある。

だがそれでも、


「ん~、まだギリギリ届くかどうかってところだと思うけどな」


これが俺の正直な気持ちだった。

あと少し、だがそこの伸びしろはもう殆ど感じられない。

どうしたものか……。


「そうかい。

 まあアンタもこの短期間によくやったと思うよ。

 賢者になっても驕らず、修練を重ねた成果がこれだ。

 は…‥師としてこれほど誇らしいことはない」


だが、俺に掛けられた言葉は暖かいものだった。

斜め向かいに座る叡者の顔には、慈愛に満ちた微笑みが浮かんでいた。

あれは、母の顔だ。

母は再び表情を引き締め、話をまとめにかかった。


「さて。最後に、朝の調べもので大分神界のことも掴めてきた。

 神界について分かってることはこうだったね」


 ・神界は、現世(この世界)に似た世界

 ・二つの世界は交差するだけで、互いに独立している

 ・転生法は現状唯一判明してる神界との接点


今日は朝から禁書庫で神界についての伝承を調べ直してきた。

レフカンの協力もあり、俺達は手早く結論を整理した。

俺も、過去に調べたことがあったしな。


「これらに加えて、私らはもう二つ知ってることがある。

 シェリーちゃんの黒髪だね。

 黒髪から湧き出す魔力は、

 転生失敗で感じた――恐らく神界からの――

 魔力波と感じが似てる」


これは以前、母がシェリーを抱きしめた時に気付いたことだったな。

元々女性は魔力の感度が高いのだが、叡者ともなると相当なものだろう。

母は即座に見破ってみせた。

そして、


「最後の一つだね。

 アンタらがアステロン魔法大学で、

 ティシアって子と調べてきたことだ。

 黒髪は、現世の魔力を吸い込んでる」


これだ。

これにはさしもの母――叡者サメロス――も気付かなかった。

魔道具の力を借りたとはいえ、ティシアもまた只物ではない。

いずれも俺一人では辿り着けなかった真実。

俺とシェリーの二人だけではどうにもならなかっただろう。

俺達は未だ未熟だが、心強い味方もいる。


俺は、一人じゃない。

シェリーと二人だけでもない。

家族だけでもない。

多くの人々に支えられている。

俺の心が内側から湧き上がる柔らかな熱に満たされてゆく。


その時、母の言葉が再び俺を、現実へと引き戻す。


「ということはだ。

 黒髪から神界へ、直接メッセージが送れるんじゃないか?」


そう言い切った母の顔は、師の顔も混ざり合い、一体化して見える。

あんな表情の母は始めて見る。

母もまた、ここに来て何か一線を越えたのだろうか。

だとすると、俺がカモメになったことにも意味があったのかもしれない。

そう思ったら、俺にも少し実感が湧いてきた。

ようやく俺も、師がかつて俺に臨んだ地点に立てたのかもしれない、と。

この場で俺は、師と対等だ。

だから、対等な相手として言葉を交わす。


「なるほど……。

 確かに、筋は通ってるな。

 これは、試す価値がありそうだ」

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