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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
R―巡らせる。ナイツ
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町の人気者


 ……一行が次に向かったのは、割と人の多い通り。そこに入った途端、道を行く人々が、闇代に声を掛けてきた。


「あら、闇代ちゃんじゃない。戻ってきたの?」

「うん」

「おや、闇代ちゃんか。久方ぶりじゃの」

「お爺ちゃんも久しぶり」

「あーっ! 闇代ちゃんだー!」

〈おい、闇代じゃねえか〉

〈戻ってたんか〉

「そうだよー」

 老若男女(ついでに生死も)問わず、彼女に声を掛けていく。そんな様子を見て、狼は驚いていた。

「お前、地元のアイドルかよ……?」

「まあ、除霊師だからね」

「除霊師って、みんな知ってるのかよ?」

「うん」

 この町の住人は、無論霊感を持たない者が殆どだが、そのほぼ全員が霊の存在を知っている。それ故、町にいる除霊師のことも、町長より知られているくらいだ。そうでなくとも、こんな小さい町に金髪の幼女がいれば、否応なく有名になってしまうだろう。

「この町だと、霊も人も、みんな顔見知りだよ」

 やがて周囲に人だかりが出来、闇代だけでなく、傍にいる狼たちも注目の的になった。

「闇代ちゃん、その子は彼氏かい?」

「ううん、お婿さん」

「おいこら」

「ほーう、それなら子供が出来るのも時間の問題かね?」

「ちょっと気が早いよ~」

「早いも何も出来ねえから!」

 狼に子孫を残す能力はない。闇代もそれを了解しているはずなのだが……まあ、いいか。

「そっちの麗人は?」

「この子たちの保護者です、一応」

「なるほど。子供たちだけだと不安ですからね~」

「はい」

 優もこの空気に馴染んだ様子。予想通りといえばそれまでだが。

〈おい、こいつ退魔師だぜ……〉

〈まじかよ? やっべー、逃げないと!〉

「……もう引退した。今はただの人ダ」

 何か、一部から怖がられている一片。まあ、(自称元)退魔師では、仕方ないだろうが。

 そんなこんなで、彼らが人混みから抜け出せたのは、一時間ほど後である。



  ◇


「ったく、えらい目にあったな」

 一行は昼食を取るため、近くにあった蕎麦屋に来ていた。―――のだが。

「おい、見てみろよ。闇代がいるぜ」

「マジだ。いなくなったって聞いてたが……」

「こっちに戻ってきたらしいぞ。あ、そうだ、折角だから写真撮っとこう」

「……(怒)」

 通路を挟んだ反対側の席にいた若者たちが闇代にカメラ(スマホに内蔵されてる奴)を向けた途端、傍にいた女性店員が額に青筋を浮かべる。そして、闇代を遮るように、若者たちの前に立ち塞がった。

「んだよ、邪魔すんなっての!」

「店内での撮影はご遠慮ください」

「はぁ? 何言って―――」

「店内での撮影はご遠慮ください」

「……はい」

 その行動に文句を言おうとした若者たちも、店員に笑顔(with怒りマーク)で凄まれ、渋々引き下がった。

「……」

 その様子を見ていた狼は、何とも言えない表情を闇代に向けた。

「ん? もしかして、お揚げが欲しいの?」

「いや、いらんが」

 闇代は油揚げの入ったきつね蕎麦を食べるのに夢中で、今の光景をまったく見ていなかったようだ。

「ほら、あげるよ。あーんして」

「いらんっての」

 闇代が箸で食べかけの揚げを持ってくるが、狼はそれを突っ撥ねる。

「……ん?」

 ふと横を見れば、先程の女性店員がこちらをじっと眺めている。―――いいなぁ、私も欲しいなぁ。そんな声が、どこからともなく聞こえてきた気がした。

「……頼むから、ほんとに止めてくれ」

「そう?」

 闇代は少し残念そうにしながら、揚げを自分の口に運んだ。狼も自分の蕎麦を平らげ、再び視線を横へ向けるが、そこにはもう女性店員の姿はなかった。



  ◇


 ……食後、またも人々に取り囲まれつつ、彼らはとある校舎の前までやって来た。

「ここは?」

「わたしが春まで通ってた学校だよ」

 校門に取り付けられたプレートには『絆学園』とある。夏休みだが、部活に来る生徒のためなのか、門は開いている。

「ほら、行こ」

 どうやら、ここが彼女の目的地らしい。今は完全に部外者であるはずなのに、何食わぬ顔で敷地内に入っていく。

「私と瞳君はここで待ってますから、狼は闇代ちゃんと一緒に行ってください」

 優に言われ、狼は仕方なく闇代について行った。

「あ、闇代ちゃんだー」

 誰かが声を上げ、それに呼応するように沢山の生徒(部活中なのか体操着姿)が集まってきた。

「ほんとだー」

「闇代ちゃん久しぶりー」

「戻ってたんだー」

 そしてまた、人々に囲まれる。どこでも人気者だな、闇代は。

「後ろの人、もしかして彼氏?」

「うん」

「違う」

「へー、そうなんだ」

「違うっての」

 最早お約束のやり取り。それが終わると、別の一人が思い出したかのように口を開く。

「そういえば、神ちゃんが会いたがってたよ」

「さっき会ってきた」

「そうだったんだ」

 さっきの霊と知り合いらしい。この子も霊感持ちなのだろうか。

「お父さんには会ったの?」

「まだだよ」

「それなら早く帰ったほうがいいよ。闇代ちゃんがいなくなってから、すごく寂しそうだったから」

 闇代の父親も有名人らしい。除霊師の知名度、恐るべし。

「それじゃあ、一回顔見せないと」

「そのために来たんじゃないのか?」

 少なくとも、狼はそう聞いていた様子。ともあれ、彼女は次の目的地を実家に決めたようだ。

「じゃあ、もう行くね」

「えー? もう行っちゃうの?」

「暫くこっちにいるから、ね?」

 名残惜しそうな生徒たちに別れを告げる闇代。そんなこんなで、彼らは『絆学園』を後にしたのだった。

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