ご利益=あれば儲け物
「気が進まねえな……」
「仕方ないでしょ。他に行く所ないんだから」
ぼやく狼と、それを宥める上風。本当にこの二人、傍から見ると仲のよい姉弟に見える。
「とりあえず、闇代がいないことを祈るか」
狼は恐る恐る、といった感じで店の戸を開く。
「おかえりなさい」
「「わっ!」」
戸のすぐ向こう側には、優が立っていた。
「驚かせんな」
「すいません」
口では謝っているが、まったく悪びれる様子の無い優。狼はやや不服そうな目で優を見ていたが、無駄だと悟ったのか黙って店に入った。
「てかお前ら、そこで何してんだ?」
店に入った狼は、店の中にいた面々に向かって呟いた。店の中には、下宿している闇代や一片は勿論、氷室や紗佐、戸沢までもがお茶を啜っていた。
「何って、闇代ちゃんに呼ばれたんだけど」
「闇代かよ……」
氷室の答えに、狼は露骨に顔を顰めた。それを見た闇代は、大変不服のようだ。
「どうして嫌そうな顔するの?」
「こういう場合、絶対ろくなことがないからだ」
「酷っ!」
「そうですよ狼。今日は、私が皆さんを集めるように闇代ちゃんにお願いしたんですから」
「そうかよ」
優に説明されるが、それでも狼は顔を顰めたままだった。また良くないことが起こりそうな、気がしたのだ。
「という訳で、これから皆さんにこれをお渡ししたいと思います」
優は店の奥から籠を持ってくると、カウンターの上に置いた。
「なんじゃこりゃ?」
「お守りです」
籠の中には、神社などで売っているようなお守り(のような何か)が入っていた。
「まさかとは思うが……、こいつらを集めたのはそれを配るためか?」
「はい、そうです」
即答されて、どこぞの新喜劇よろしく倒れそうになる狼。
「あら、どうかしました?」
「いや、ここまであほな理由とは思っていなかっただけだ」
あほって……。
「安心してください。狼の分もちゃんとあります」
「そんな心配してないから。てか、何でお守りなんだよ?」
「色々事情がありまして、このお守りをあちこちに配布しないといけないんです」
「俺らにそれを手伝えと?」
「いえ、それほど沢山はないので、狼のお友達―――仲間でしたっけ? まあとにかく、そちらを優先しようと思ったまでです」
狼と話しながらも、優はお守りを皆に配っていく。
「ご家族の分もありますので、帰ったらちゃんと渡してくださいね」
戸沢は最初、「こんなものは必要ない」と言って受け取ろうとしなかったが、優の営業スマイル押しに負けて、結局全員が受け取った。
「くどいようですが、ご家族にもちゃんと渡してくださいね」
そうして、やや釈然としないまま本日は解散となった。




