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クインテット。ナイツ  作者: 恵/.
O―貪る。ナイツ
43/132

(あれとかこれとかそれとか)


  ◇


 向坂狼は悩んでいた。何にかと訊かれると、言うまでもなく闇代にだろう。最近の彼女は(一時期に比べ)大人しいのだが、それでも必要以上にスキンシップを迫ってくる上、所構わず抱きついてくるため、ついこの前など狼が警官に補導されかけてしまったのだ。しかも、この一週間で七回。一日に一回のペースである。

「ったく、あの馬鹿をどうにかしねえとまともに外出できねえな」

 因みに、家にいるときは彼にべったりとくっついてくるため、暑苦しくて敵わないそうな。

「って言っても、悩んだところで無駄なんだがな」

 まともに考える間もなく、狼はトイレでの思考を中断した。今日はこれから眠るつもりだ。無論、闇代対策を厳重に施してからだが。


 ……翌日。


「お前ら、今日は休みだ」

「「は……?」」

 朝、担任の春山が、教室に入るなり生徒達に告げた言葉が前者。そして、それを聞いて面を喰らっている生徒達の呟きが後者。

「聞こえなかったか? 今日はもう休みだ。寄り道せずにさっさと帰れ」

「それは、今日は休校になったということですか?」

 状況を逸早く察した戸沢が尋ねた。こいつ、こういう時しか出番がないな。

「そういうことだ。分かったらとっとと帰れ」

 春山はそれ以降何を訊いても、帰れとしか答えなかった。


  ◇


「何だったんだろうね、さっきの」

 上風は呟くように言った。彼女は今、狼と二人っきりで下校している。帰り道が違う紗佐や戸沢、馴れ合いが苦手な一片は勿論、いつも鬱陶しいくらいに馴れ馴れしい氷室や、この頃狼に異様に付き纏う闇代までもが、彼らとは別行動をとっている。

「どうでもいいだろ。それよか、俺はどっかで時間を潰したい」

「何でよ?」

「このまま帰ると、家に闇代が居るからだ」

「あんたも大変ね」

「まあな」

 そんな他愛も無い会話(闇代に付き纏われて大変とか、闇代にべったりされて大変とか、闇代に襲われそうで大変とか)が続く。そしてひとしきり話したところで、話題がこれからの予定に変わった。

「さてと、今日はこれからどうするかな」

「なんなら家に来る?」

「それは遠慮する」

 即答する狼。例の罠とやらを恐れているだろうか。聞くところによると、上風の家は防犯上の理由で(というか両親の趣味で)からくり屋敷となっていて、そこには極めて危険な装置(地雷とかギロチンとか劇薬とか)が、ネズミ捕り感覚で設置されているそうな。

「じゃあどうすんのよ?」

「それなんだけどな」

 彼らが歩いているは、商店街の入り口付近。『虹化粧』はこの商店街の反対側に位置している。

「ゲーセンどころか、店が一個も開いてないんだよな」

「そうね」

 それはまだ時間が早いからでは? 時刻はまだ十時にもなっていない。

「行くとこねえな」

「仕方ないじゃない」


 そんなこんなで、二人は結局『虹化粧』に行くのであった。

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