見抜かれた踏み込み
いよいよ迎えた伝統の一戦、ミニ・エル・クラシコは、超高速の頭脳・戦術戦となっていた。
カスティージャの生命線である、左SBマリオの爆発的なオーバーラップと、ングゥワチュチュの完璧な危機察知能力。
バルサBの天才GKダニエルが放つ、前蹴りのように鋭く正確な超長距離のロングフィード(カウンター)に対し、
マリオが自慢のスプリントで戻り、ンガチュチュがセカンドボールを狙い、張り付いている。
おかげで大火傷には至らないものの、バルサBの絶対的な砦であるダニエルを崩さなければ、カスティージャに勝利はない。
<前半35分:見抜かれた「踏み込み」>
「ダン、前を向ける!」
中盤でングゥワチュチュが、惚れ惚れする鋭い出足でパスカット、すぐさま低く速いパスを繰り出した。
ゴール右45° 約25mの位置で、ダンが精密なトラップで納めて前を向く。
相手が寄せてくるより早く、ダンの左足は、夏の湖畔で掴んだ「絶対にブレない軸」で深く地面を噛む。
右足インステップで、ボールの真後ろのわずか数mm下を擦り上げる――「懸河」の必勝のフォーム。
ドゥォオシュッ!!!
空気を切り裂く重低音とともに放たれるボール、バーの上へと高く跳ね上がり、そこから突如として「ガクッ」と急降下した。今まで3部のあらゆるキーパーを絶望させてきた理不尽な軌道。
しかし、ダンが蹴り出したその瞬間、バルサBの守護神ダニエルは、素早くゴールラインの後まで下がり(ゴール内に入り)、ボールを凝視している。
そして軌道を読み切ったか、鋭く落ちてくるボールに対し手の平を重ね、ボールを前へと弾き出した。
「くっ……!」
ダンの碧い目が驚きで揺れる。無敵を誇った「懸河のドライブ」が、正面から完全に破られた瞬間だった。
味方はゴール前へ詰め切れておらず、バルサDFにセカンドボールを易々と拾われてしまった。
『うぉおおお!今世紀「ベスト」セーブだ!!あの生意気なハポネス(日本人)小僧のドライブを止めたぞ!』
U-23、3部の試合にも関わらず、興奮の坩堝と化すバルササポーター。
<後半への布石>
「ふん! だから言ったろダン! 相手の『キャンドゥ』の防御の型を甘く見るなって!」
前半を0-0で終えたロッカールーム。チョビが鼻の頭に汗をかきながら、前半のダニエルさんのセービングデータを整理していた。
二人に構わず、マリオがふらりと割って入る。
「よぉ、前半から行ったり来たりさせられて、ピッチが荒れちまったよ。後半走りにくいぜ、なんか良い手ないのかよ、チョビ。」
――ピッチが荒れた
マリオの言葉は、発明の母だった。
(そうか、懸河ドライブは踏み込みが深いから読まれてしまったんだ。と言う事は…4つか、ンフフッ)
ダンの瞳に、再び曾祖父・井助譲りの不敵な光が灯った。
「みんな、後半も僕にパス集めてくれよ、絶対決めて見せるから」
「おぉっとにかくすごい自信だ!どうやるんだ?」
マリオが口火を切り、他のメンバーも興味深く見つめて来る。
「それはね…」ダンが一通り語ったところで、
「ふ、ふん!オレ様もそれが言いたかったのさ、先に言われちゃったぜ!」といつものチョビ節。
バルサBの絶対障壁ダニエルを崩すための、カスティージャの「楽しいサッカー(反撃)」の準備が整った。
第1編からここまで読んでくださった方はお気づきかもしれませんが、
懸河ドライブは必ずバーより上、余裕を持った高さから、ゴール内の高め一杯付近に落としています。
野球の縦方向のバックドア・だいぶ高めボールゾーンからストライクゾーン高め一杯へ、です。
(実現可能性はあるけど、今のサッカーには無い視点、技術)
なので、懸河ドライブだとわかっていたとしても、並の一流?キーパーではどうしてもボールだと誤認、反応遅れが発生して手が出ません。
ダニエルさん、半端ないって!




