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前世の記憶が生えたとて、スキルなしには厳しいです  作者: ヒコしろう


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第46話 生け贄の少女

仮の役場前にはマーキオ村の村人と思われる全員が僕の登場にそわそわしながらも、ゆっくりと地面に両ヒザをついて此方に無抵抗である意思を示す。


其を見て唖然としている僕の隣ではカリーナちゃんが、


「なんだか厄介そうだから一旦コレを降ろしてくるね」


と肩に担いでいる跳ね鹿をクイッと軽く持ち上げて僕に見せてから我が家へと小走りで走って行く。


そしてようやく思考が少し動き出した僕は、やっとこの異様な現状にムカムカとしてきて、出前感覚で村の女性を生け贄にデリバリーしてきたという村人達に、


「何が目的か知らないけど、とりあえず生け贄とか考えたヤツ前に出てこい、踏んづけてやる!」


と早朝からカリーナちゃんと狩りに出ていたせいか、とあるレジェンド一卵性双子オネェの名言みたいな怒り方をしてしまっているが、僕もあまりの出来事に考えがまとまらずパニックを起こしていたのだと思う。


すると真っ白な無地の服の少女が前に進み出て、


「私が望んで生け贄として参りました」


などと言ってくる。


僕はこんな少女にそんな責任まで背負わせる大人達に本格的にイライラしながら、


「本人が望むとか望まないとか関係ないんだよっ!」


と、まだ何か決められた台詞を話そうとしている少女を黙らせ、


「おい、この子の保護者は? 居ないのか!?」


と村人達を睨むと少女の近くに居た夫婦らしい二人がそっと立ち上がって頭を下げたので、僕は二人に歩み寄り、


「嫌なら嫌と保護者が言わないと誰が言うのさ!? 女の子が大人達に囲まれて生け贄になれって迫られたら怖くて断れないよ。 何なの、また前の村長みたいに誰かに弱みとか握られて我慢してあの子を差し出したの?」


と聞く僕に、夫婦と思われる二人は固まったまま頭を上げる事すらできない。


僕はそんな二人の大人に、


「何とか言いなよ!」


と怒ると、生け贄装束の少女が、


「叔父様と叔母様は悪くありません。 私が…私が望んで…」


と僕にすがり付いてきたので、


「お前もお前だ!」


とあまりにも話が通じない奴らに僕の中身のオッサンも我慢の限界を迎え、少女の片耳をムギュとつまみ、そしてギュインと捻り上げると、少女は、


「イデデデデッ」


と切ない鳴き声を上げる。


僕は少女の耳を捻り上げたまま、


「生け贄ってのは、これより痛い事されるかも知れないんだよ! 理解してる?!」


などと怒っていると、カリーナちゃんが獲物を降ろして戻ってくるなり、僕は彼女からズシンと膝まで衝撃で沈む勢いのチョップを入られて、


「ちょっと離れた間に何がどうなったら女の子を虐める流れになってるのよっ、アルマちゃん! 事と次第によったらアタシ、アルマちゃんでも踏んづけてやるんだからっ!!」


と叱られてしまったのだった。


それからはマルテスさん立ち会いの元でカリーナちゃんによる聞き取り調査が行われ、その間僕は、


「女の子を虐める男はそこに座って反省していなさい!」


というカリーナちゃんの指示に従い大人しく地べたに正座をして聞き取り調査を眺めていたのだった。


さて、何故生け贄などという事になったかというと、


『先ずスタートはあのマーキオ村の村長が一番の元凶ではある』


というこの点だけは僕の中では譲れない。


そんな村長達の悪事がバレて大捕物の末に村人が沢山投獄されていた地下牢にてあの日の僕の【呪う】発言に進む。


その後に比較的軽い罰の村人がマーキオ村に帰り呪いの噂を広めて、村長派閥の村人が夜逃げ同然で出ていく。


マーキオ村の村長派閥というのはあの村の中でも金や土地を持っていた者が多く、罰金を払う為に村人に金を取って貸し出していた農耕馬は売り払われ、小作人に貸していた畑は管理する主を失い、今年の春先にマーキオ村は作付けどころではなかったそうで、管理も行き届かない畑は過去最悪の大不作になっているそうだ。


ただ時系列を大人しく聞いている僕でも、


『それは働き手不足が原因ですよね!?』


と分かる理由のハッキリした不作であるが、村人達には、


「あの集落のアルマという子の呪いだ!」


となり、


「マーキオ村に今残っている者だけは、もう許していただけないか相談に行こう」


という事に決まり、僕がファベルの町に初級錬金術師試験に行って留守の時に代表で数名集落を訪れていたらしい。


ここからが面倒な事に、マーキオ村から来た方々を対応したマルテスさんや騎士団員の方が、僕の留守を彼らに伝えると、マーキオ村から歩いて来た皆さんは、


「なら、せめてアノ村長の悪巧みの犠牲になった集落の方々に許しを願おう」


となり、マルテスさん達の案内で墓場に移動する。


するとそこにはお盆シーズンが終われば片付ける予定の夏の日差しで少しくたびれた精霊馬がお供えしてあり、ソレを見たマーキオ村の方々は、


『野菜に杭が刺してある!?』


と驚き、


『これは野菜を不作にする呪いだ!』


と判断して、


『許してってお願いしにきたけど、まだ滅茶滅茶怒ってるじゃん…』


と、肩を落として村へ帰り、そんな寂しそうに帰る村人達を見送ったマルテスさん達は、


「あぁ、亡くなった集落の方々の知り合いがマーキオ村から来たんだな…あんなに寂しそうにして、仲が良かったのだろう」


と、隣の村の両親達の知り合いがふらっとお墓参りに来て、ついでに生き残りの息子の顔でも見たかったのだろうぐらいに考えて、集落に帰ってきてから何だか連日忙しそうな僕たちに、


「お墓参りに知り合いっぽい人が来てたよ」


と言う事すら忘れていたところ、この生け贄騒ぎである。


そしてこの騒ぎに至るまでマーキオ村で何があったかというと、


『呪いはあります!』


と信じきっていた村人は勿論、今まで呪いの噂を半信半疑に聞いていたメンバーまで、


「作物を狙った呪いを行っていたぞ!」


と聞いた上で、マーキオ村では今までに見たこと無い程の不作が実際に起こっているという事実から、


「どうするんだよ! どうやって許しを乞うんだよ!!」


と焦りだし、金品で和解するにはマーキオ村から金持ちだった村長派閥は逃げ出しており、現物で差し出す作物も大不作となりこの冬も越せるか怪しいとなると村人達な頭を抱えるしかなくなる。


その時に立ち上がったのは元村長の側近だった夫婦の娘である。


彼女は自分の両親や兄が悪事に手を染めている事を知らないまま領都の学校へ入学していたらしい。


彼女の両親としてはマーキオ村で行われていた独裁に気がつく前に知り合いのつてを頼りに幼い娘を村の外に出せば、


『村長から村の現状をバラさない様に村の青年と強制的に結婚させられたり、其を拒否して消されたり売り飛ばされたりはしないだろう』


と考えて彼女を何年も前に手放して協力者にお金だけを送っていたのだそうだ。


だけど、両親と兄は村長と共に処されて家財は没収され、流石に幼い時に村を出た娘までに捜査は及ばなかったが、送られていたお金が止まると代理の保護者も彼女の世話をする理由はなくなる。


そして次の年の学費が保護者から払われない彼女は退学となり、故郷のマーキオ村にどうにかこうにか戻ってみれば、両親は居らず家も没収されて行き場を完全に失ったところ、その娘の母の妹にあたる反村長派閥で虐げられながらマーキオ村で暮らしてきた叔母夫婦が、


『娘のあの子には罪は無いから…』


と、彼女を引き取ったのだそうだ。


そして、村は大不作となり僕の怒りを鎮める為にどうすれば良いかという会議の席で、あの生け贄装束の少女が、


「私が捧げ物になります!」


と名乗り出たと…


『いや、本当に僕を何だと思ってるんだよっ!』


と、怒りが再び込み上げるが、カリーナちゃんに大人しく座って反省を促されている僕は、そろそろ痺れてきた正座の足をどうする事も出来ないまま、


『不作は畑の土をちゃんと耕さなかったのが悪いんでしょ!? 呪ったりしてないし、もういいから全員マーキオ村に帰れよ…』


と願ってしまう。


しかし、カリーナちゃん的にはどうしても許せない点があるらしく、あの少女の叔母夫婦に、


「いっぺん面倒をみると決めたのになんで生け贄にあの子が名乗り出たのを止めなかったの?」


と聞くと、叔母夫婦の旦那さんが、


「すみません…義理姉の嫌がらせで私たちの娘も昔…」


と、村長のやり方に不満のあった自分たちが、不等な年貢を設定されたりと様々な嫌がらせで云われの無い借金を背負わされ、その挙げ句に娘が見せしめで売られた事を話してくれた。


そんな二人は、涙ながらに、


「頭ではこの子に罪は無いと理解はしておりましたが、引き留めようとする気持ちよりも、あの子が望んで生け贄となるのなら…と娘が連れて行かれた時に側で見ていたあの時の姉夫婦の顔がチラついて、これで良いんだと思ってしまったのは確かです」


と項垂れている。


僕としては、


『う~ん、そこまで聞いちゃうと怒るに怒れないなかな』


と思ってしまうが、カリーナちゃん的にはそうはいかないらしく、


「娘が不等に連れていかれた悔しさを知ったうえで、仕返しをしても良いなんて、ちょっとでも考える様なクズにあの子を引き取る資格はない!!」


と珍しくオネェ口調を忘れて真剣に怒り、叱られている叔母夫婦を庇う為にカリーナちゃんに、


「叔母さん達を責めないであげて下さい! お願いします」


とすがり付く少女に、カリーナちゃんは、


「アンタもアンタだ、簡単に生け贄、生け贄って言ってるけど、まがりなりにも世話してやろうとしてくれた叔母夫婦に姪を生け贄捧げたという罪を背負わせたいのか!?」


と、プンスカモードのカリーナちゃんは、


「そんなことを言うのは、この口かぁぁぁ!」


と生け贄装束の少女の下唇をムギュんと摘まむと、ギリッと捻り上げてしまっていたのだった。

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