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前世の記憶が生えたとて、スキルなしには厳しいです  作者: ヒコしろう


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第43話 猪鍋パーティー

魔技師の初級錬金術師試験を無事に合格した僕は、錬金ギルド前で僕の試験の終了を待っていてくれたスラムの皆とファベルの町の役場でもあるお代官様のお屋敷に向かった。


用件はイースお兄ちゃんのご近所さんの中で自分で住民税が納められそうにないメンバーをまとめてウチの商会の牧場で雇おうという計画である。


今回の再開発で来年の春にスラムから追い出される予定なら、牧場の居住スペースは修繕が終わったらしいから寒くなる前に引っ越してもらう事にして、今から役場に住民税を納めて新しい住所を登録する手続きに向かっているのだ。


結局顔役のおばちゃんをはじめ、昔レディーの三名に、片足木製義足の気さくなおっちゃんに、かなり高齢のおじいちゃんと、僕より年下の子供が四人と、到底牧場をお任せ出来る労働力では無いが、イースお兄ちゃんと僕と同い年か少し上そうなタルバ君と獣人族の血を引くケモミミ少女のルアちゃんの冒険者組も、


「税金は自分達で払えるけど家賃までは難しいから皆と一緒に住まわせてくれないか?」


と相談されたのだ。


しかし、イースお兄ちゃんが皆の事が心配で一緒に居たいだけだと知っている僕は、


「じゃあ、牧場とかのお仕事をお手伝いしてくれるんなら家賃は要らないから」


と三名の働き手を手に入れたので、最悪牛魔物からミルクを搾ってミルクムギチャの材料にするという少しハードルの高そうな計画を諦めたら、スラム地区でやっていた家庭菜園と冒険者組の狩った魔物の肉での最低限の生活は維持出来る。


それに冬の角ウサギ狩りをフルで頑張れば僕なしでも何とか皆の毎年の住民税は納められる計算である。


農家だった老夫婦の畑は牧場メンバーに管理運営を任せるが、残された民家と納屋と馬小屋とオマケでもらった馬魔物はファナさんとリラちゃんに管理してもらいウチ商会の支店として活動してもらう事になっている。


ミルクムギチャの屋台経営もカリーナちゃんが集落に来ている穴をファナさんがスラムで、旦那さんが亡くなり家も失ったお母さんとまだ幼い男の子の親子をスカウトしたそうで、この後で初顔合わせも兼ねてダッシュボアで猪鍋パーティーの予定なのだ。


『マジで試験合格出来て良かったぁ~、これで落ちてたらパーティーがシラケまくるところだったよ』


と安堵した僕が次に考えないといけないのは如何にしてこの大所帯を安心して暮らしていただくかという事であるが、


『まぁ、それは猪鍋でも食べながら皆で考えますか!』


と一旦棚上げしておいたのであった。


さて、税金も納めて住民登録も済んだので全員晴れてスラムっ子からファベルっ子へとクラスチェンジしたのであるが、ファベルの町の農業地区というのは壁で守られた市街地の一つ外側で、旧市街地であるスラム地区よりも周辺を守る壁は石を積み上げた石垣という安全面からいうとチンピラが流れて来て少し治安の悪くなったスラムと同じぐらいである。


ウロウロしているのがチンピラか、野菜や家畜を狙う魔物かという違いぐらいだ。


『話が通じない魔物の方厄介かな?』


とも思うが、すぐに、


『まぁ、チンピラも話が通じない奴が多いな』


という答えにたどり着いた僕は、塩味ベースの猪鍋を頬張りながら、


『このメンバーで大丈夫かな?』


と少し不安になる。


そしてこのメンバーというのが、


領都の近くで昔は旦那さんと一緒に宿屋をやっていたという顔役のおばちゃんことカメリアおばちゃん。


そしてカメリアおばちゃんのお仲間である昔レディー、年齢は秘密…というか年齢的なもので忘れたのではないか些か不安になる三名の女性で、一人目はカメリアおばちゃんと一緒に料理を担当していたムエットばーちゃん。


二人目は長年どこぞの貴族家の下働きで掃除と洗濯をしていたというコスタばーちゃん。


三人目は自称歌姫だったという謎多きミステリアスばーさんのカラールちゃんであり、昔レディー三人の中で彼女だけ『ばーちゃん』と呼ばれるのを嫌い『ちゃん』づけである。


そして片足を魔物に食われたというおっちゃんはトレスさんという名前で、元は運送業を生業にしていたのだが、貴族に納める名馬を運搬中にワイバーンの群れに襲われて仲間と名馬と自分の片足を持って行かれ、冒険者が駆けつけてくれ奇跡的に命は助かったが、仲間の家族への保証や名馬を受け取れなかった貴族への謝罪金で全てを失ったという苦労人である。


そして大人枠最後の一人は、口減らしの為か、はたまた介護が苦痛で普通に家から追い出されて行き場を失ったのかは全く不明で、いつからスラム地区に居るのかすら誰も知らないというおじいちゃんである。


まぁ、ミステリアスではあるが、ご本人は至って分かりやすいスペックの歯が全く無くて猪鍋の具は刻んでお出ししないと食べられないという、前世であれば要介護認定がおりるタイプのちゃんとしたTHIS ISおじいちゃんのマゴスじーちゃんである。


頑張ってなんかモニョモニョと喋ってはくれるが、口元から息が漏れて聞き取り難く、本人も長文を話すのは疲れるのか何か言っている最中で電池が切れた様に寝てしまい、


『えっ、死んだ!?』


と、こちらの心臓に悪い特徴を持つというある意味二周回って皆のアイドル枠であり、ちびっ子達は、


「マゴスじー、お茶飲める?」


とか、


「マゴスじー、生きてる?」


などといつも絶えず誰かが近くにる。


そしてマゴスじーちゃんの周りで猪鍋をモリモリ食べているのはちびっ子四人衆である。


端から、イースお兄ちゃんみたいな冒険者志望のルーク君。


お腹いっぱい食べれらるなら頑張っちゃう食いしん坊のロッシュ君。


夢はお店屋さんというプラタちゃんはミルクムギチャチームに入りたがっている。


そしてロッシュ君の為にお料理のお手伝いを頑張るスゥちゃんの四人である。


彼らとイースお兄ちゃん達が冒険者組の三人には修繕か終わった牧場の従業員棟とキッチン回りと居間の修繕が終わった母屋を自由に割り振ってもらっている。


まぁ、冬までに色々と揃えれば来年からは畑も出来るし、皆が稼げるアイディアも浮かぶだろう。


そしてミルクムギチャ三人娘改め、僕の母さんが立ち上げた雑貨店【マルシャン商会】のファベル支店チームとなるファナさんとリラちゃん親子と、まだ若いお母さんのアクアさんとお子さんのゲイル君はヨチヨチ歩きの可愛い盛りで、この支店チームのフィジカル担当、乙女流棍棒術始祖(※あくまでも本人曰くです)であるカリーナちゃん(※本名カルロさん)から、


「こちらがアタシ達の旦那様のアルマちゃんよぉ」


と、僕としては、


『いや別に仕事は紹介して開業資金は出したけどその後は特に何にもしてないから旦那様なんてくすぐったい…いや、この旦那様は(商会の)ではなくて(ワタシの♡)という意味か!?』


微妙に判断に困るような紹介されたアクアさんは、僕を見るなり深々と頭を下げて、


「私の夫はマーキオ村にて村長の縁続きという事で私も知らない所で色々と人様に言えない事をしていたらしく、今は北の銀鉱山にて罰を受けております。 アルマ様の集落の方々の件もファナさんより聞いております」


と言ったかと思うと彼女は地べたに膝をつき、


「こんな私がアルマ様にこのような厚かましいお願いをするのは場違いな事も承知しております…承知しておりますがその上で息子のゲイルだけは保護していただきたく…」


と言いながらジャパニーズ土下座というか、こちらの世界でいう服従姿勢という屈辱的な姿で僕に息子を託そうとするので、僕は慌ててアクアさんを立たせて、


「こらっ、ゲイル君の前でお母さんがそんな事しないのっ! 僕もビックリするから二度としないでください」


と軽く叱ってから、


「リラちゃん、ゲイル君とあっちで皆と遊んでくれますか?」


と、商人修行により気が利くレディーに成長しつつあるリラちゃんにお仕事をお願いすると、


「任せてよ」


と心強い返事がかえってきただけでなく、


「アルマお兄ちゃん、多分いっぱい食べたからゲイル君はもうすぐ眠たくなるからゆっくりお話したら良いよ」


と、寝かしつけまで引き受けてくれ、そのお言葉に甘えてファナさんとカリーナちゃんと一緒に僕は、アクアさんとの面談を行う事にした。


どうやら、アクアさんがマーキオ村の村長派閥の人間だった事はスカウトしたファナさんも知らなかったらしく、


「スラムに来たばかりの様でしたのであまり根掘り葉掘り聞くのも失礼かと…」


と、とりあえずファナさんが初級商人になりミルクムギチャだけでなく食べ物なら屋台で何でも売れる様になったので、


『仕込みも忙しくなるから丁度良いわ』


と、ミルクムギチャと軽食を売る屋台の売り子としてスカウトしたアクアさんには、ミルクムギチャの屋台を始めたきっかけとなった僕の事をファナさんが話していたそうで、アクアさんも売り子として働くようになってから聞いた話ではじめて、


「まさか、アルマさんというのはアノ…」


と、お世話になっているファナさんの上司的な人間がマーキオ村の中でも噂になっていた呪いをかけた人物その人であり、呪われても仕方ない事をしていた村の人間の一味に自分の夫も参加していた事から、


「いまさら逃げ出しても生きては行けないし、正直に名乗り出て私はまた無一文で追い出されても息子のゲイルだけは…」


と考えたそうだ。


『僕を何だと思ってるの!?』


とは思うが、アクアさん自身も他の所からお金で売られて来て、あの村長の縁続きの青年だった旦那さんの嫁として村長名義で買われた奴隷の一人だったそうだ。


あの村で行われていた悪事には全く加担してはいないが、村長の派閥の人間というくくりではあり、村長が処刑され奴の財産は全て没収されたのに伴いアクアさんも奴隷から解放となったが、


『売られた村には帰りたくないし、買われた村には居場所がない』


となった経緯には同情してしまう。


しかし、僕としては、


『僕は別にあの村長の関係者全員の不幸を願っていない。 たしかにあの時【呪う】とは言ったけど、本人としては集落に盗賊をけしかけた村長やその一味を許してはいないだけで、あの村全体を無差別に呪ってはいません!』


とだけは言っておきたい。

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