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前世の記憶が生えたとて、スキルなしには厳しいです  作者: ヒコしろう


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第42話 初級錬金術師試験

夏も盛りを過ぎた頃のこと、僕は我が家の畑から夏野菜のキュウリっぽい見た目の野菜と、ちょっと前世のイメージより大きいがフォルムがナスっぽい野菜を手に集落の墓地にやって来ている。


腰の聖剣・正雄を引き抜くと、そこら辺に落ちている良い感じの長さの小枝をチョチョイと削ってから、ファベルの町の商会にて適当に春植の野菜の苗を見繕ってもらった為に名前もよく知らないキュウリの親戚とナスの親戚みたいな野菜に枝をブッ刺すと、


「うん、何とかそれっポイな」


と、お盆名物の動物を作ってみた。


前世の記憶が有るために、


『まぁ、この集落にはお墓なんて最近まで無かったからこっちの作法は知らないんで、多分お盆なんての無いとは思うけど、コレは皆の初盆ぐらい形だけでもやらないと何となく僕が気持ち悪いからやってるだけだから気にしないでね』


と心の中で念じた後に皆のお墓の前にちょっとサイズ感のおかしい野菜の動物を1セットだけ並べて、


「これでヨシ!」


と満足気にお墓に手を合わせていると、僕のお手伝いをする為についてきてくれたカリーナちゃんが、


「アルマちゃん、それなぁに?」


と僕の作ったなんちゃって精霊馬を指差して聞いてくる。


『あぁ、やっぱりこっちの世界にはお盆も精霊馬も有る訳ないわな…』


と感じた僕は、野菜の動物達をカリーナちゃんに、


「空の世界に居る集落の皆に、集落を見せてあげたくてね。 ほら、こっちが馬で、これに乗って帰ってきて何日かこっちで過ごしたらこっちの牛で空の世界に帰って行く用だよ」


と説明すると、カリーナちゃんは夏の空に浮かぶ入道雲を見上げて、


「確かに、あの雲なんて神様が居る空の世界にまで届きそうだモンね」


と納得してくれたらしく、僕に向かい、


「アルマちゃんのそういうロマンチックなところ大好きよ」


とウインクを飛ばしてきたのだが、彼女は続けて、


「アタシてっきりアルマちゃんが試験に受かりたい一心で、作り物の生け贄を捧げてパパさんやママさんに神様への伝言をお願いしているのかと…」


と、ホッとした表情になっていたので、


『あっ、これ生け贄の代用品と思ってたんだ…』


と彼女が何かしらの儀式を疑っていた事を理解して、


『これで灯籠船とか近くの川に流したら完全に異教徒の儀式だとか思われるかもしれないな…』


と勉強の合間の気分転換に和風なお盆を楽しむ事は控える事を決めたのであった。


そして、その日の夕方に集落の見回りをしてくれている騎士団のカパルさんとソロさんが、


「誰かが墓場で良からぬ儀式をした後が!」


とマルテスさんに報告して集落で軽い騒ぎとなり、僕たちも仮の役場に集合させられたてしまったのだが、カリーナちゃんの、


「あれはアルマちゃんがパパさんやママさんに逢いたいからって、雲の階段を駆け上がる馬をね…」


という説明を最後まで聞かずにマルテスさんが、


「ダメだアルマ君! どんなにご両親に逢いたくてもアンデッド召喚で動き出したご両親はもうただの魔物…」


と涙を流しながら僕を抱きしめ、


「理不尽に家族を殺されて、今もやり場のない悲しみや怒りが有るのも理解は出来る。 しかし、それをすればアルマ君も死者の王の供物になってしまうぞ!」


と必死に訴えてくる。


僕としては、


『えっ、お盆の風習は異教徒ぐらいのつもりでしたが、邪教徒認定されてますか?!』


と焦りつつも、


『今後迂闊に前世の風習を楽しむのを控えるんじゃなくて、全面禁止としようかな?』


と反省し、僕に涙ながらに、


「今なら戻れる! 闇に魅入られてはダメだ」


と僕の肩を掴み前後にシェイクするマルテスさんに、


「とりあえず、揺するのを一旦…酔いそうです」


とだけお願いする僕であった。


そんな夏のイベントのもあったが、家事全般をカリーナちゃんがサポートしてくれたおかげで僕は初級錬金術師の勉強に集中する事が出来て、夏の終り近くには、


「ヨシ、今度こそ合格してやる!」


と気合いを入れて、ムギチャ号の引く荷馬車に揺られ、カリーナちゃんと共にファベルの町へと向かったのである。


間もなく完成する集落のお屋敷にお代官様の息子のリデルさんが越してくれば本格的に入植者が集落にやって来る。


今回のファベル行きで我が家の雑貨屋スペースに並べる商品を買い付ける予定のカリーナちゃんも、


『大きな商会の息子とかが店を持つ目的で越してくる可能性があるから、モタモタしているとビジネスチャンスを逃してしまうわよっ! アルマちゃんも初級錬金術師になって生活魔道具を直接お店に卸せるようになってもらわないとアタシ困っちゃうんだからぁ~』


と、彼女なりに僕に気合いを入れてくれている。


道中で夜明かしをして午前中に到着したファベルの町は夏の暑さも少し緩んで爽やかな風が吹き抜ける通りには出歩く人が増えており、これから冬までの間にせっせと冬仕度を済ませようと、在るものは食料を買い込み保存食とし、また在るものは冬までに稼ごうと商いに励んでいる。


『ついに来たな』


と、気合いの入る僕を乗せた荷馬車が錬金ギルドの前に到着すると、カリーナちゃんが、


「アルマちゃん、魔道具とかはカウンターまでアタシが運んでおくねぇ~、言われた通り終わった頃にみんなと来るから試験頑張ってねっ♡」


と、荷馬車の殆どを占めている来る道中で仕留めた魔物の横に手を突っ込んで、いる。


あれは来る途中で出会したダッシュボアの群れのリーダーらしき大物をウルソさんに注文して作ってもらった【ラブリースティック】という名前のバトルメイスから放たれた乙女流星撃で一撃の元に沈め、群れのリーダーを亡くしたダッシュボア達が恐怖のあまり蜘蛛の子を散らす様に逃げて行ったという出来事があり、その戦利品である。


僕としては、


『あれがウエポンスキル持ちの本気ですか…』


と、スキル無しの自分がどう足掻いても到達出来ない高みを見せられた気分になったというカリーナちゃん一人で倒した獲物である。


そんな猪魔物の亡骸の隙間から、


『大丈夫かな、押し潰されてない?』


と少しだけ心配になる僕の作った魔道具を引っ張り出しては錬金ギルドの窓口へと運んでいるカリーナちゃんに僕は、


「絶対に今夜は皆で合格祝いの猪肉パーティーにしてみせるから!」


と告げて試験に挑んだのだが、錬金ギルドにて僕を待ち構えていたサビオさんから、


「今回も総合試験だよね?! 問題数は半分ずつだけど難しさは上がちゃうから前回は残念だったけど、総合試験で合格したとなると錬金術師としての泊が…」


などと、前回教えてくれ無かった総合初級錬金術師試験の裏の真実を語っており、それを聞いた僕の中では、


『泊ってなんだよ!』


とか、


『問題数半分ずつでも難しさ2倍なら総合を受ける旨味なんてゼロだろ!』


とか、


『オレ、オマエ、ブン殴る』


などと脳内会議の議員達が暴れている。


しかし、前回僕を唆して総合試験に誘導したサビオさんに僕はカタイ笑顔で、


「魔技師の初級錬金術師試験を!」


とカウンターに受験料の銀貨一枚をバンと、ほんの少し強めに支払うと、サビオさんは、


「えっ、総合は受けないの?」


とか、


「総合なら王国最年少記録なのに?」


などと食い下がるのだが、僕が表情を変えずに、


「魔技師の初級錬金術師試験で」


と静かに繰り返すと、サビオさんは渋々魔技師の初級錬金術師試験の準備をはじめてくれたのである。


そして試験の結果としては勿論合格であり、


『僕の半月を返せ!』


とサビオさんに詰め寄りたくなってしまう。


しかもサビオさんは合格した僕の錬金ギルド証の手続きをしながら、


「ほとんど満点だったから絶対に今回は総合でも合格だったと思うよ。 勿体無い…王国最年少だよ最年少」


とまだブツブツ言っているので、僕は、


「サビオさん、僕は別に今後の見習い試験で初級錬金術師の最年少合格者は誰でしょうっていう問題で名前を書いて欲しい訳じゃないし、泊だの何だのでお金を稼ぐつもりも無いです。 便利な魔道具やポーションをコツコツ作ってお金を稼がないと稼いだ手応えが感じられないでしょ!?」


と自分の気持ちを伝えるとサビオさんは、


「そうですか…実はアルマ君の考案した多機能魔石式ライトをね王都の奴らが、見習いが考案したなんて嘘だって言ってましてね。 奴ら商品の機能は認めるが考案者に偽りが有るなら認められないって笑いながら…私、悔しくって、悔しくって…」


と、知らないところで馬鹿にされていた僕を庇う為にどうしても『泊』とやらをつけたかった事を教えてくれたのだった。


僕の為に必死になってくれていたサビオさんに、


「僕の代わりに怒ってくれてありがとうございます」


とお礼を述べた後に僕は、


「別に王都の錬金ギルドに認めてもらわなくても多機能魔石式ライトは売れるんでしょ?」


とサビオさんに聞くと、彼は、


「はい、王都やその周辺の町からの注文はあの感じでは望めませんが、このボスケ伯爵領や近隣では問題なく」


と答えてくれたので、僕は笑顔で、


「それなら何の問題も有りませんし、何なら王都の奴らが泣いて売って下さいって地面にオデコを擦り付けるような凄く便利な魔道具を発明してやりますから、サビオさんも力を貸して下さい」


とお願いすると、サビオさんは、


「私は何をお手伝いすれば?!」


と食い気味に僕に聞いてくる。


『よっぽど王都の錬金ギルドの連中に腹が立っていたんだろうな』


とサビオさんの気迫から察した僕は、


「では、初級錬金術師になったからチャレンジ出来る中級魔道具のレシピやそのレシピを応用した魔道具を全て調べて教えてくれませんか?」


とサビオさんにお願いすると彼は少し残念そうに、


「しかし、技術を応用した既存の魔道具を作っても…」


と呟くのを聞いた僕は、


「何言ってるんですかサビオさん、そのリストに無い新しいヤツを作ってやるんですよ! 凄いのを作ってもご免なさいしない王都には1個も売ってやらずに、この辺の皆だけで幸せになれるだけでも最高の仕返しじゃないですか!?」


とリストの目的を伝えると、サビオさんはハッとした表情になり、


「私は間違ってました…錬金術は人を幸せにする為にあるんですもんね」


というとサビオさんは、


「では、半月後に創薬系の試験も受けますよね。 基本的な中級レシピは本日お渡ししますが、応用レシピはその時でも宜しいか?」


などと言って、手続きを終えたすぐ後から書類を引っ張り出して何やら調べものを開始してくれたのであった。

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