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前世の記憶が生えたとて、スキルなしには厳しいです  作者: ヒコしろう


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第36話 帰りますよ

まだハンドルーターは試作品も完成していないが、僕としても納得の出来の魔石式ライトは見事に五つ完成し、完成品は一つだけ自分用に残して残りの四つは錬金ギルドに買い取ってもらった。


水晶ガラスで凸レンズを作り、反射板のパーツにはサビオさんから教えてもらったコーティング材を塗布して鏡のように反射率を上げ、魔合金素材のライトのフレームや新たに追加したパーツは騙し絵顔の大将さんの作で、大将さんには、


「今回はちょっと面倒な依頼かもしれませんが、上手くいったら定期的に今回と同じパーツの生産依頼をお願い出来ますので…」


と、今回は開発費のつもりでちょっと色を着けた報酬を提示して僕との専属契約をしてもらうと、


「そいつは有難い!」


と、頑張ってくれたことで、新しいくライトのレンズ部分にスライド機能を追加出来た。


これにより凸レンズを前後に動かす事で照らし出す光をワイドとピンポイントに切り替え可能で、凸レンズを守る為に取り付けたカバーを手動でパカパカすればモールス信号も送れる。


『まぁ、僕はモールス信号を扱えないので合図程度だけど…』


とまぁ、多機能になった魔石式ライトは回路は寄せ集めのリサイクル品であるが、


『今は説明や売り込みの為に一つでも多く欲しいから』


と、なんと金貨1枚と銀貨5枚という高値で買い取ってもらえ、僕のお財布には金貨六枚というお小遣いが舞い込んだのだった。


開発費として魔合金のパーツや凸レンズ作りなどで金貨2枚程消えてしまったが使った分はしっかり取り戻せたのでホクホクである。


『次からはもう凸レンズやその他のパーツのレシピが出来ているから、材料費用だけでキットが揃うからジャンジャン作って儲けなきゃ!』


と、再びゴミ置き場にて壊れた魔石ランプ探しを計画している。


それは他機能魔石式ライトは商人ギルドの行商人達の荷馬車や、職人達の作業時の手元照明に、騎士団の新装備としても期待されているらしいからである。


そして、普通は兵士や騎士団など治安の守られた町や村にしか冒険者ギルド以外の各種ギルドは支店を作らないのであるが、正式な村になる前段階のウチの集落にも、


【半月毎の騎士団の交代の時に臨時で】


という特別仕様で、商人・錬金・職人ギルドから持ち回りで派遣された職員さんが1日だけの出前ギルドに来てくれる事に決まった。


これにより半月という時間はかかるが、僕は集落に居ながらにして錬金素材や魔道具のキットなどを注文出来たり、職人ギルド経由でパーツの加工などのお仕事をお願いできたり、あとは商人ギルドで今回作ったギルド口座に入金や出金に残高照会も可能になり生活の便利さが向上してしまった。


『これでやっと引きこもったまま稼げるぜ!』


という状態にようやく成れたと云える。


それに商人ギルドでは冒険者ギルドのように魔物の解体は請け負ってはいないが、魔物の素材や、魔石に、塩漬けにすれば肉でも買い取ってくれ、商人ギルドが提携している指定の商会とならば商品のお使いまで可能となった。


まぁ、あちらも慈善事業ではないので少しの手数料は取られるが、今までなら文官さんと騎士団員さんの交代ついでに食料品だけなら買ってきて貰えたが、これから日用品なども訪問したギルドの方が商人ギルドへ注文してきてくれるので、お抱えの行商人を手に入れたようなもんである。


そんな感じでファベルの町での二週間はあっという間に過ぎて、明日には集落に向けて早朝に出発する為に、今回もお屋敷へと来ている。


そして、そんな僕は今、ファベル準男爵様とその息子であるリデルさんの前に、騎士団長さん、集落派遣組の騎士団員のカパルさんとソロさんに続き僕の順番で並べられて、お代官様親子に滅茶苦茶お小言を頂いているのである。


お叱りの内容としては、


「今回、町のギルドが中心となりファベルの町…いや、ご領主様が預かるボスケ伯爵領全体の利益になる新たな魔道具の開発に関わったアルマ《《殿》》をスラムで野宿させていたらしいな!」


というものである。


僕が好きでスラムでのテント生活を望んでいただけで、完全に騎士団の方々にはとばっちり案件であり、僕としても、


「いやぁ、宿代をうかせたいのと、顔見知りの皆に逢いたくて僕が勝手にスラム地区に拠点を構えただけでして…」


と必死に訴えたのであるが、問題なのは今回お代官様サイドの会議で、


『ここ数日天候が悪く、そんなに整備されていない街道がぬかるんで移動に時間がかかる可能性があるので、出発を1日早めて夜間移動をせずに2日がかりで安全に移動するか!』


と今回派遣される半月交代の職員さん達の出発日の変更が決まり、


「連れてきた騎士団員にアルマ少年に伝言を頼めるか?」


という指示が出されたらしく、カパルさんとソロさんに騎士団長さんが、


「アルマ君は何処に泊まっているの? 1日帰るのが早くなったから買い物とか抜かりがない様に伝えてきて」


と指示を出したという流れから、カルパさんとソロさんがギルド宿やら町の安宿を回った結果、


「何処にもおりません!」


と報告する事になり、お屋敷のメンバーがビックリして、


『あっ、そういえば商人ギルドや錬金ギルドからアルマ少年の報告が上がってるからギルドに問い合わせてみよう!』


とお代官様の閃きによりこの10日間ほど僕の専属家庭教師状態だった錬金ギルドのエリート職員のサビオさん経由で、


「アルマ君、なんかお屋敷の方々が君を探してるらしいよ」


と錬金ギルドの工房で多機能魔石式ライトを組み上げている僕まで辿り着いたのである。


つまり、お代官様的には、


『なんで、また集落に帰る時に荷物を取りに行く任務があるのに担当の騎士団員が居場所を知らなかったんだ!?』


という点がお叱りポイントなのである。


しかし騎士団員のカパルさんとソロさんが僕の拠点を知らなかった理由は、こちらに向かう馬車の中で、


「アルマ君、帰る予定日の2日前の1日は体を空けておいてくれ、最高に旨い卵鳥の串焼きや煮込みを食わせる店を案内してやる」


と二人からお誘いがあり、僕としてその時は拠点を安易に、


『ギルド宿か、高くなるなら安宿かな?』


と考えていた為に、


「じゃあ、2日前の昼に冒険者ギルド前に集合で良いですか?」


と打ち合わせしていた為である。


だから二人とも


『飯の時に迎えに行く場所を聞けば良いし、もしもの時でも町に居るならすぐ見つかるさ』


という考えで、まさかこんな事になるとは想像もしておらず、騎士団長さんに至って回避不能の貰い事故が発生したようなもんだろう。


原因を作った僕としては、


『もう、僕がヤるしかないな…』


と、土下座…いや、その上を行くスライディング裸土下寝でもご披露する覚悟だったのであるが、何かを決意したようなあまりに真剣な僕の顔を見たお代官様親子が急に静かになり、


「まぁ、アルマ《《殿》》もそんなに怖い顔をしなくても…別に彼らに注意をしただけで罰を与えるものではないので…」


と、少し前からチョイチョイ気になっていた僕への『殿』呼びであるが、どうやらお代官様達は報告に上がっている僕の【呪い】の件を少しビビっているのかも知れないと、この時はじめて肌で感じた僕は、


『あまり良い気分ではないが、カパルさんとソロさんがこれ以上叱られないのなら…』


と考え、騎士団長さんには、


『ちゃんと口先だけの脅し目的の呪いだって種明かししたでしょ? しっかりお代官様に報告してくれたのかなぁ~』


という思いを込めて軽いジト目で数秒見つめると、どうやら騎士団長さんが変な汗をかいていたので、見た目は子供、中身はオッサンの僕が現場の状況を色々と考えた結果、どうやら騎士団長さんは、


『いや、嘘の呪いって言ってたのが嘘なのでは…』


と疑い、呪いを怖れてマーキオ村から村長派閥だった連中が軒並み夜逃げ同然で逃げ出して、村長に荷担していたファベルの町の裏社会の住人達もマーキオ村出身の男が呪いを怖れた事により仲間を裏切り壊滅状態になった事実から、


『呪いはあります!』


と判断でもしたのか、上司であるお代官に盛って報告でもしたのがオチなのだろう。


だが、僕の本音としては、  


『ふざけんなよ。 スキル無しの無害な少年だわ! 嘘を見抜くスキル持ちの部下とか連れて来いや!!』


とは思うが、しかしここは大人な僕が我慢する事により、お叱りタイムを終わらせる事を選んだのだった。


とまぁ、そんなトラブルも有ったが今回ファベルの町行きは大正解だったと思う。


これでハンドルーターが完成すれば安定してお金を稼ぐ目処も立つし、初級錬金術師試験に向けての勉強のコツなどもサビオさんから聞く事が出来た。


ただ、スラムの再開発の件で少し気になる事が増えたが、それもまだ時間的猶予があるので、まだまだ打てる手はあるはずである。


という事で僕は、


『よし、今は集落に帰って依頼されたお風呂作りに集中しよう』


と気持ちを切り替える事にしたのであった。

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