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前世の記憶が生えたとて、スキルなしには厳しいです  作者: ヒコしろう


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第29話 僕のせいですか?

風が少し暖かく感じられるようになる頃、お代官様のお屋敷からお使いの方がギルド宿に居る僕を訪ねてきた。


内容としては、


「家が出来ましたから、一週間後に帰りますよ~」


というお知らせである。


しかも擦り付け事件の加害者チームの親御さんからの引っ越し祝いで、どうやら家具や寝具だけは既に搬入されているらしく、お使いにやって来た文官の方から、


「集落に帰っても行商人なども人が居なくなってからは回って来なくなり、食料などすぐには購入出来ませんので、最低でも半月程度の目安で日持ちのする野菜などと、あと鍋や食器など必要そうな物はあらかじめ購入しておいて下さい。 出発日前日に荷馬車で荷物を受け取りにまいります」


と言ってくれているので、僕は今週中にこのファベルの町でお世話になった皆さんに、


「お世話になりました。 来週町を出ます」


という挨拶回りに加えて、集落にて必要な日用雑貨などを買い集める為に町に繰り出したのだった。


角ウサギのシーズン終わりに財布に有った白金貨1枚分のお金は、錬金術の器具セットやら何だかんだと使った結果、残りは金貨3枚とちょっと程度まで少なくなってしまった。


しかし全く後悔はしておらず、おかげでイースお兄ちゃん達と仲良くなり小型魔物の魔石も十分な数が手に入り、彼の子分的なスラムっ子達が頑張ってくれ僕の為に全部はまだチェック出来ていない程の壊れた魔道具も中ぐらいの木箱にどっさりと集めてくれている。


そして、イースお兄ちゃん達のご近所さんの紹介でよく働くファナさんとリラちゃんの親子と、力仕事と用心棒もこなせるムキムキなオネェ様のカリーナちゃんというミルクムギチャ屋台をお任せ出来る人材もスカウト出来た。


ちなみにファナさんとカリーナちゃん(本名カルロさん♂)には騙し絵顔の大将さんに紹介状をお願いして、商人ギルドにて見習い商人の登録をしてある。


僕が店をオープン出来る中級商人ならば僕の紹介状でも良かったのであるが、その為だけに年間金貨1枚をギルドに持って行かれるのはキツイすぎる。


なので今回は、あんなガラクタの山に埋もれてはいるが店を持つ職人兼商人というハイスペックな騙し絵顔の大将さんに、銀貨三枚とお酒の差し入れに加えて、彼女達の屋台の鍋等の購入はあの店を利用するという専属契約を結ぶかわりに紹介状を書いてもらったので、費用もかなり押さえられた上に、屋台の改造やメンテナンスまで費用は取られてしまうがあの騙し絵顔の大将さんに丸投げできている。


なんだかんだで最近まで罠での狩りを続けていたし、午後はミルクムギチャの屋台にも顔を出していたから、魔道具作りの練習も殆んど出来てないのが予定外だったが、錬金ギルドにしか売っていない魔道具用の材料の購入が面倒くさいだけで、魔道具作りの練習は集落に帰ってからでも出来るのでヨシとする。


ただ、今では仲間と呼べる人が居るファベルの町を離れる事に寂しさを感じるが、同時に集落に帰って工房として使えるスペースに錬金術の機材を並べてガッツリ魔道具作りや、春になれば集落の周りで摘める薬草などで薬の調合が出来るのを楽しみにしている自分もいる。


『あとは、自給自足用に農具と野菜の種とかも買っておきたいし、お世話になった兵士長さん達の詰所にはお菓子を買ってご挨拶に行かないとな…あとは何が必要だろう?』


などとバタバタしているうちに一週間はあっという間に過ぎて、旅立ちの前日になってしまった。


挨拶回りも無事に済んだのだが、僕が町を去るといっても、この町の管轄下の近場の集落に戻るだけなので、馬車でも用意すれば会おうと思えば会えるし、特に涙の別れという事もなく、けっこうアッサリした別れとなったが、なぜかカサドルさんだけは例の親父さんの店でボロ泣きの送別会をしてくれたのだが、カサドルさんのあまりの号泣っぷりに僕はちょっぴり引いてしまい一滴の涙も出ては来なかった。


そんなお別れイベントも全て終わらせ、荷物は既に明日の朝に集落に旅立てる様に荷馬車に積んであり、今夜の僕は明日の朝イチの出発の為に初めてこの町のトップであるファベル準男爵様のお屋敷の客間にて泊めていただく事になっている。


だが、ただ夕食をご馳走になってフカフカであろうお貴族のお屋敷のベッドで眠る為に昼過ぎからお屋敷に呼ばれた訳ではなく、準開拓村としと再出発する集落の住民一号として新しく集落の長となる方との顔合わせや、今後の集落の発展の為に僕も微力ながら協力する事になったので、その打ち合わせである。


あと僕は両親達が愛した集落の為に協力する事を決めたのであって、お代官様から、


「お手伝いをしてくれたらお給料を出す」


と少し前に打診があり、見事に尻尾を振った訳では無い…と、自分に言い聞かせている。


さて現在、僕の目の前にはこの町のトップのファベル準男爵様をはじめとして、よくは知らないが多分このお屋敷の中の管理職的な方々がずらりと並んでおり、


『市長さんと市役所のお偉いさんの会議ってところかな?』


などと呑気な感想しかない僕は会議の邪魔にならないように端っこの席でおとなしく座っていると、ファベル準男爵様が、


「では、ここからは開拓村の管理者とマーキオ村の村長代理を任せる息子のリデルに変わる」


と、まだ20代半ばと思われる男性を紹介する。


『あぁ、マーキオ村の村長さんも兼任するんだ。まぁ、あちらの村議会議員的な人もゴッソリ逮捕されたからねぇ』


などと、隣村とはいえあの村に良い印象がなくなり、興味も湧かない僕は他人事のようにボーっと会議が終わるのを待とうとしていたのだが、リデルさんなる男性は椅子から立ち上がると、


「えー、本来であれば私の補佐をしてくれる事になったマルテスが管理者として就任する予定でしたが…」


と話し始める。


パパであるお代官様よりもハキハキと話し、仕事が出来そうな印象のリデルさんは、どうやら暫くはこのお屋敷で色々な書類仕事を行い、集落の方にちゃんとした役場が建ってから本格的に彼の村長仕事が始まるらしく、それまではマルテスさんという以前ウチの集落の調査隊のリーダーも努めてくれていた中年の文官さんが代理で集落に派遣されるらしい。


どうやらリデルさんの説明ではマルテスさんがリデルさんのポストに配属される予定だったのであるが、どうやら、


『荷が重い…』


という理由からマルテスさんが辞退したのを、最近までこのファベルの町の所属するボスケ伯爵領の領都にある城にて勤めていたリデルさんがご領主様の指示で帰って来てマルテスさんの代わりに管理者となる事が決まり、マルテスさんはリデルさんの補佐に回ったのだそうだ。


『まぁ、集落の管理だけかと思ったら隣村まで面倒を見る事になったら話が違うってなるわなぁ~』


と他人事のように聞いていた筈の僕であったが、その後のこの会議室で報告された内容で変な汗をしこたまかく事となる。


それは、ファベル準男爵様としてもマーキオ村の欠番となった村長の席を、


『村人の誰かがやってくれるだろう』


と思っていたのだそうだが、何処かのアホが地下牢にて盛大に、


「マーキオ村の村長もそれに荷担した奴も許さない! 呪ってやる!!」


などと宣言したせいらしく、その宣言を直に聞いた罰金程度で釈放されたメンバーからその話を聞いたマーキオ村では、


『村長の事を止められなかった我々にも罪はあるのでは?』


と、かなり頑張って独裁に堪えていた村人チームまで呪いを恐れて、


『呪われた村の村長なんてやりたくない』


と、誰も手をあげずで村長の席は今も空席のままらしい。


そして、実際にあの時投獄されており、誰かさんの「呪ってやる」宣言を直に聞いたりした村長派閥のメンバーの家族は呪いにビビって夜逃げ同然に村を去ってしまい現在のマーキオ村はとんでもない状態なのだそうだ。


しかも、


『どちらかと言えば村長派閥でした』


みたいな村人までかなりの数が逃げ出したマーキオ村の復興まではマルテスさんは想定して居なかった為に、


『話が違うから辞退したい!』


となり、お屋敷の中でもかなり揉めた結果として今の配置におさまったのだそうだ。


なのでマルテスさんへの申し訳ない気持ちで僕のガラスのハートはチクリと痛みを覚えてしまう。


そして、あの時地下牢に居た騎士団長さんもこの会議に出席している為に、僕の腹いせと嫌がらせがハーフ&ハーフの口先だけの呪いの話はここに居る皆さんにも伝わっているだろう。


だから、


『何だか【お前のせいだろ!?】みたいな皆の視線が痛い…』


となり、背中どころかパンツの中まで変な汗まみれで居心地も着心地も悪い僕は、


『お父さん、お母さんゴメンナサイ。 もう冗談でも「呪ってやる!」なんて言いません』


と、天国に居るはずの両親経由で何とか神様に、これ以上僕が脅し文句で吐いた呪いの噂が広がらない様にお願いできないかと謝罪と祈りを込めてソッと瞳を閉じると、そのまま暫くは瞳を開かずに、


『あ~何かもう眼を開けたくないなぁ~。 そうだ! 早く夕御飯にならないかなぁ?!』


などと全力で現実逃避を試みるのであった。

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