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前世の記憶が生えたとて、スキルなしには厳しいです  作者: ヒコしろう


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第28話 新たな仲間

角ウサギのシーズンは終わったが僕は今日も草原エリアにて角ウサギを狩っている。


それは純粋にお金の為ではなくて、ちょっとしたお礼の為であり、そして今の僕にはちょっとした仲間達がいるのだ。


「アルマぁ~、あっちの罠に一匹掛かってたから倒しちまって良いかぁ?」


と少し遠くから聞こえる声の主はイースお兄ちゃんという17歳の青年である。


彼はスラムに住んでいるという騙し絵顔の大将さんの知り合いで、僕のようにスラムに流れ着いた子供を何人か面倒を見ているという映画版のジャイアンからジャイアニズム要素を抜きつつ、更に優しくて面倒見を良くしたような性格のスラムのガキ大将的な人物だ。


彼もDランク冒険者という肩書きを持っているが、僕みたいに私利私欲に走らずに全て食べていけないスラムっ子達に還元したり、冒険者の先輩として彼を慕うちびっ子達に薬草摘みや鉱石拾いを教えてお気遣いが稼げるようにしている為に冒険者としての依頼をこなしていないだけで、本気で冒険者として活動すればCランクになっているぐらいの槍の使い手である。


そんな彼が何故僕と一緒に春はまだ遠く寒い草原に来ているかというと、


「了解だよぉ~、トドメ宜しくぅ~」


と僕が空振りの罠を回収しながら答えた数分後に、


「アルマくぅ~ん、倒せたぁ~!」


と、僕と同い年ぐらいの少年であるタルバ君が嬉しそうに倒した角ウサギを見せにくる。


すると、その後ろには、


「タルバ君、イースお兄ちゃんが、嬉しいのは分かったけど血抜きが先だって言ってるよ」


と、僕に走って獲物を見せに来たタルバ君を追って走って来ているのは、タルバ君より背丈は大きいが年下だという獣人族の血が混ざった猫っぽいケモ耳少女のルアちゃんである。


なぜ彼らと狩りをしているのかを簡単に説明すると、業務提携をしたからだ。


イースお兄ちゃんは今もスラムに残っている幼い子分達にご飯を食べさせたり病気になった子供に薬を届けたりして万年貧乏で装備なども整えられず、コツコツと簡単な依頼をこなしてDランク冒険者になった苦労人である。


そんなイースお兄ちゃんと、二人の冒険者志望のタルバ君とルアちゃんにちゃんとした装備を騙し絵顔の大将の店で揃えて、追加で作ってもらった足バサミを五つプレゼントして、僕が知っている罠での狩りを伝授するというものだ。


そうする事で彼らは冒険者として安心して活動出来るようになり、僕は魔道具用の魔石を手に入れられ、残った角ウサギの肉は、スラムに残っているイースお兄ちゃんの子分達や子分達の世話をしてくれているご近所さん達の食事へと変わる。


残された角ウサギの角などの素材もスラムを卒業したイースお兄ちゃんの子分の一人が見習い職人として頑張っている工房に持ち込まれ現金に変わりイースお兄ちゃんが面倒を見ているスラムっ子の日用雑貨を買う資金となる。


ここまで出来て僕の出資は騙し絵顔の大将の店に装備や追加の足バサミの罠の代金として渡した金貨2枚分にもならない。


なのに僕は魔石が手に入り、お肉を食べて元気いっぱいなイースお兄ちゃんの子分たちが協力してくれて、ゴミ置場のガラクタの中から壊れた魔道具を集めてくれる契約なのである。


生活魔道具などは錬金ギルドの決まりにより修理代金が高く設定されており、


「なら新品を買おうかな」


という人が多く、見習い錬金術師がお小遣い目当てで修理して錬金ギルドに持ち込んでも古の錬金術師が考案した筆跡鑑定魔道具にて魔術回路が本人の直筆が否かが分かるのでズルして転売も出来ず、勿論勝手に市場に流せば逮捕案件になる為に、


『壊れた生活魔道具を直そう!』


という人は少なく、見習い錬金術師が初級錬金術師試験に挑む際に解体してお手本にしたり、回路の修理などで構造を勉強する為に使うぐらいなのだ。


だが僕は違う、前世では月刊の科学雑誌の付録の電子工作が大好きで、中学の技術の電子回路図あたりの授業内容のテストではクラスの上位に食い込んだという普段の成績からは考えられない快挙に担任までもが喜んでくれたという過去を持っている。


なので、


『魔道具なんて図面見たけど殆んど電子工作みたいモンだから、使える回路なんて何個有っても問題ないし、壊れた回路を直していくうちに、どの魔術回路がどんな役割とか理解出来たら改造だって出来るだろう』


と、自作で回路から魔道具を作る練習がてら壊れた魔道具をいじくり回して新居の我が家の照明などの生活魔道具を無料で揃えてしまおうという計画なのである。


イースお兄ちゃんから獲物の血抜きを教えてもらっているタルバ君達を見ていると、


『もしかしたら僕もスラムに流れ着いてすぐにイースお兄ちゃんと出会っていたら、あんな感じで色々教えてもらっていたかもな』


などと、自分も何かのタイミングで彼方サイドの一員となり、皆で肩を寄せ合って貧しいながらも楽しそうに暮らしていた世界線を想像して、


『仲間か…』


と、幼なじみ二人の顔がチラついてしまった僕は少しせつない気持ちになったのである。


そして本日もお昼前頃までに罠のチェックと明日の為の罠の設置が終わると獲物を担いで僕たちはファベルの町のスラム地区へと戻る。


僕が寝ぐらにしていたエリアとはかなり離れている為に同じスラムといえど初めは顔見知りは少なかったが、今では僕は、


『あれ? 何年もこの辺で暮らしていたかな』


と、錯覚しそうなぐらい溶け込んでいる。


それもその筈で、イースお兄ちゃんがこの周辺の大人というかお爺ちゃんやお婆ちゃん達に可愛がられていた所に、彼の協力者として僕が認識された事で、


「アルマ君、今日も寒いのに狩りかい?」


とか、


「アルマ君、おかえり」


などと、まるでここの子供のように僕まで可愛がってくれているのである。


そんな扱いを受けると、集落から逃げ出してからというもの無意識にご近所付き合いに餓えていたであろう僕の心は震えだし、


『なんかお役に立てる事はないか!?』


という気持ちで、錬金ギルドで売っている水を混ぜると粘土状になり、乾くと石の様にカチカチになる錬金石粘土という錬金素材を購入して、麻袋に土を積めた物の回りに錬金石粘土を積み上げて竈を作り、職人ギルドにて購入した大工セットで簡単なベンチを作ったりして、ご近所さんが集まっているスラムの炊き出し広場を整備してみた。


イースお兄ちゃん達が狩った角ウサギをそこで調理し始めるとご近所さんが野菜などを持ちより、皆で大鍋料理を作り、ご近所さん皆で分け合って暖かい物が食べられるというのがここの日常である。


冬のこの時期にスラムに流れ着いても、昼食だけは炊き出しにありつけている為に空腹で命を落とす事はなく、恩義に感じたその人がまた新たに流れ着いた人を助けるという優しさの循環が出来ており、


『なんで僕はこっち側ではなく、あっちの方を寝ぐらに決めたんだろう?』


と思うと同時に、当時の僕に、


「ほらほら反対側のあっちのエリアの方が暮らしやすそうだよ!」


と教えてあげたくなる。


そんな仲良しさんが肩を寄せ合うスラム地区で僕は、冒険者だった夫を亡くして子育て奮闘中のママさんと、家から飛び出してここに流れ着いたという心は乙女の男性? をスカウトしており、僕は午後から屋台通りへと向かうのであった。


それは年末に終了したミルクムギチャの屋台のリニューアルオープンの為であり、春までは僕の名前で登録した屋台を二人に手伝ってもらう形にして、屋台が軌道に乗れば、あれでも中級商人である騙し絵顔の大将さんにでも紹介状を書いてもらって二人を見習い商人として登録して屋台を引き継いでもらう計画である。


それは先日、僕が買い物に町に出た際に、たまたまミルクムギチャ屋台の常連だった奥様に出会い、


「なんで止めちゃったの?」


とか、


「あの黒っぽい液体は何処で買えるの?」


などとしつこく聞かれた為に、


『中毒者が居るならまだ儲かるな』


と閃いて、スラム地区にて、


「子供連れでは仕事が…」


と悩む子育てママのファナさんと、その娘のリラちゃんに、


「こんな見た目だから仕事が…」


と悩むカルロ…いや、カリーナちゃんをまとめてスカウトしたのである。


屋台も木箱を流用した物から荷車を改造した立派な物に変えて、看板娘? の三人にはお揃いの可愛いエプロン姿でミルクムギチャの屋台を再開してみると、ファナさんの丁寧な接客や、リラちゃんの可愛らしさでお客さんは直ぐに戻ってきてくれ、それどころか、


『力仕事とかも有るしファナさんの助けになるかな?』


という狙いでスカウトしたカリーナちゃんが密かな人気で新たな客層まで開拓してくれている。


『これは三人をスカウトして大正解だったかもな』

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