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前世の記憶が生えたとて、スキルなしには厳しいです  作者: ヒコしろう


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第27話 稼ぎきったから

角ウサギ狩りのシーズンが終了した。


個体差があり多少の買い取り金額に差が有ったが、罠を仕掛ける場所を見極める技術が向上したのか一回の狩りで銀貨5枚近く稼げ、森狼とバッティングして獲物を諦めて逃げ帰ったり、天候から狩りに向かうのを断念した日も有ったので、年始から角ウサギ狩りのシーズンが終わったこの1ヶ月半で満足に活動出来た日数は20日程度であった。


『でも日給5万を20日以上だよ! すごくない?!』


という事で現在僕のマジックバッグの中の複数のお財布には合わせて白金貨1枚分の銀貨がジャラジャラと唸っている。


『頑張った。 偉いぞ僕!』


と、誰も褒めてくれないので自分で自分を褒めてあげておく、夏には10歳になるとはいえまだ9歳の少年が1ヶ月半の間で100万円を稼いだのだ。


『月収100万ぐらいって、前世でも稼いだ事ないぞ!?』


と興奮しているが、上位の冒険者ともなると厄介なターゲットならば一回の討伐報酬と素材の買い取りで白金貨1から2枚などサクッと稼ぐというのだから、冒険者とは夢もあるが、


『どんな危ない魔物と戦わないと生き残れないんだよ上位冒険者は!?』


と、罠に掛かって弱った角ウサギを倒す事しかしたことが無い僕にでも、その上位冒険者向けの依頼が金額に見合うぐらい危険な事ぐらいは理解でき、


『メインの仕事を冒険者で行くのは無理だろうな』


と、自分の今の力量も客観的に見られる大人な自分が諦める事をオススメしてくるのだった。


となると他の手段で稼ぐ方法が必要になるのだが、人も少ない集落で母のやっていた雑貨屋を再オープンしてもお客になる人もまだ居ないし、初級商人として行商人になるにも売れる品物を集めるのにこのファベルの町に来て、誰も居ない集落に帰るコースでは稼げるイメージがわかない。


なので、


「集落にもっと人が増えないと店は無いな」


との結論に至る。


では見習い木工職人の方はどうかというと今あるお金なら余裕で大工道具を揃えられるだろうが、使い方から地道な練習が必要になる。


『前世で使った事があるのなんて、ノコギリと金槌に釘のセットと、あとギリギリ使った事があるのが、ヤスリとかかな?』


と全く経験がない訳ではなく、なんなら使った事は少ないがノミと木槌のセットだって、


『仏像って作れるかな?』


などと、すぐに断念したがテレビで見た仏師に影響されて少しチャレンジした経験があり扱い方だけなら少しは知ってる。


しかし、そんな前世の木工知識の殆どは、


『基本的には電動の丸ノコにインパクトドライバーと電動のジグソーでも有れば、切って、穴あけて、木工ネジでパンパンパンで何でも組み上がってしまうから日曜大工は楽しいなぁ~、次はどんな電動工具を買ってみようかな?』


という、文明の利器頼りなものなので、この世界で使えるのかすら怪しい。


「まぁ、簡単な大工セットだけそろえておけば、棚ぐらいは作れるだろう」


と、脳内会議の結果、大工セットへの予算が可決される。


では一番確実にお金になりそうなのは、


『やっぱり錬金術師かぁ』


という所に辿り着くのだが、それも『見習い』という枠であり、マジックバッグや魔法が放てる魔道具の杖などは、とてもじゃ無いがまだ作れないのは理解している。


『では何が作れるの?』


という疑問については、考えていても答えは出ない為に、


「よし、直接錬金ギルドに聞きに行こう!」


という事でやって来た錬金ギルドにて、いつもお世話になっている試験担当の職員さんが僕を見つけて、


「アルマ君、もうどのコースで初級錬金術師試験を受けるか決まったかい?」


と声をかけてくれた。


このコースというのはポーションを作る薬師と、魔道具を作る魔技師に、錬金術全般を網羅して研究する正真正銘の錬金術師の3コースである。


薬師でも魔技師でも世間的には錬金術師であるが、錬金術の歴史に名を残すような偉人は薬師と魔技師を両方極めたワンランク上の錬金術師である。


『では何が違うの?』


という僕の素朴な疑問に職員さんは見習い錬金術師向けの幾つかの資料を取り出して僕に丁寧に教えてくれた。


錬金術師が作れるアイテムのレシピや資料は、その錬金術師の一つ上のランクの物までしか解禁されない。


たとえば見習いである僕が薬師系の錬金術師を目指すなら、見習いランクの傷軟膏や胃薬などのレシピで調合の知識と、繰り返し調合する事で技術を身に付ける。


すると次なるステップに踏み出す為に、薬師系の初級錬金術師のレシピである低級ポーションなどのレシピを購入して勉強し、錬金ギルドにて薬師系の初級錬金術師向けの試験をパスするのと合わせて、実際に一定水準の指定のポーションを自分の工房で作り規定量提出すれば晴れて初級錬金術師となる。


そして、また練習と研鑽の日々を過ごし、次は薬師系の中級錬金術師向けの上級ポーションなどのレシピや資料を購入して次の試験へ挑むという流れである。


しかし、この時に薬師系の初級錬金術師になれたと仮定した僕は、中級の薬師系レシピは購入出来ても、中級の魔技師系のレシピや資料は購入出来ないらしい。


魔技師の方も魔道具のレシピで同じような流で試験を行い、この2つをいっぺんに勉強してチャレンジするのが総合錬金術師コースなのだ。


無論、初級薬師と初級魔技師の資格を別々で合格したとしてもその2つを持っていれば、中級の総合錬金術師試験にチャレンジ出来るが、学力に自信のある者はいきなり初級から総合系の初級錬金術師試験にチャレンジして時間短縮するらしい。


しかし、見習い錬金術師試験で苦戦した僕としては、


『試験範囲が見習い錬金術師の時みたいに広くて苦労するから…どうなんだろう? 時間短縮になるんだろうか?』


と思ってしまう。


ある意味総合系しかない見習い錬金術師の試験よりも、初級の方が系統を分けられて勉強も楽で、覚える事も半分ずつで良さそうである。


それに職員さんは、


「初級からはレシピを完全に理解する事が目的になりますから、皆さん見習い試験の時より勉強は楽だと仰いますよ」


なんて言っている。


なのでとりあえず僕は、


「春には生まれた集落に帰ってしまうので、買えるチャンスが無いかも知れませんので、見習い向けのレシピと初級試験に必要なレシピと資料をひと通り買うと幾らですかね?」


と職員さんに聞くと、彼は、


『待ってました!』


とばかりに、


「アルマさん用に見習い薬師用の調合セットと魔道具練習セットを用意してありますよ」


と言い出し、


「見習いの間にお金を稼ぐなら傷軟膏や虫除けの香なんかがオススメで、見習い用の魔道具は売れる物は有りませんが初級になれば生活魔道具でかなり稼げるようになります」


と教えてくれ、続けて彼は、


「どうします? 初級向けの調合器具やレシピも一緒に購入されるなら過去の問題集をサービスしますよ」


と提案してくれ、そしてこれら全て合わせて金貨三枚らしい。


角ウサギ狩り6日分…高いのか安いのか分からないが、カウンターに置かれた見習い向けの薬師セットの調合器具など見るからに安そうな見た目と、見習い魔技師用のセットに至っては、


『小学生の時に定期購入していた月刊の科学雑誌の付録かよ』


というクオリティーに、


『ぼったくり?』


という文字が頭を過ってしまう。


しかし後から職員さんが運んできた初級向けの器具などは急に立派な物が並んでおり、


『殆んどが初級の試験用のセットの代金だな…』  


と納得した僕は、銀貨がパンパンに詰まったお財布をマジックバッグから取り出して、


「金貨とか無いので銀貨で構いませんか?」


と聞くと職員さんに聞くと、彼は、


「全く問題ありませんよ」


と言ってくれた後に、


「見習い向けのレシピである傷軟膏をアルマさんが作った場合、直接商人に卸したりしてもらって結構ですが、まだ資格の無い初級の商品は必ず錬金ギルドに持ち込んで品質チェックの後であれば正規の価格で買い取らせて頂きます。 そしてどれとは言えませんが実技試験の対象となる基準を満たしたアイテムを納品出来た場合は筆記試験をパスすれば昇格となりますので、色々作って持って来てくださいね」


と説明してくれたかと思うと職員さんは、グッと僕に顔を近づけ、


「もしも、資格を有していないランクのアイテムを勝手に売買した場合は罪に問われますので、くれぐれもご注意下さい」


と、怖い顔で注意事項を教えてくれたのであった。


しかし自分で使ったり、無料で他人に使う分には特に問題はないらしいので、集落で低級であるが自分の為にポーションがつくれるのであれば納得の価格なのかも知れない。


だが、次に僕の前に並べられた初級魔技師用のセットの工具の隣に並べられたレシピ集を見た瞬間に、僕の心に住んでいる夢があるグループの社長と愛人風の女性のコンビが現れ、


「本日は、この、生活魔道具の、レシピセットをご紹介ですぅ」


と例のくだりをやり始めたのであった。


なぜなら、初級の魔技師の作れるレシピは生活魔道具といわれ、竈の薪に火をつける魔石式点火棒や魔石式水生成水筒等に続いて、魔石式ランプのレシピが有ったからである。


つまり、


『自分で使うなら見習いの僕でも作れる設計図が手に入った』


という事であり、騙し絵顔の大将さんのリサイクルショップで壊れた魔石式ランプを買い取っているのを見た事のある僕の頭の中のテレビモニターには、ニコニコ笑顔の夢があるグループの社長さんが、


「新しいランプのD、I、Y(でー、あい、わい)や、壊れたランプの修理にも、使えますよぉ」


と、魔石式ランプのレシピを手に持っており、隣では例の女性が、


「社長ぉぉ~、凄い、すっごぉ~い!」


と悶えている。


どうやら異世界で孤独な僕の中で社長さん達はかなり大きな存在になりつつあり、


『魔石式ランプのレシピに他の全部がオマケとしてついて来ると考えてもこれは安い、やっすぅ~い!』


と、現実世界で僕も声に出して悶えてしまいそうになる。


だって、金貨1枚の魔石式ランプをスクラップの山から1個でも修理出来たら買わなくて済んで、錬金ギルドに組み立てキットを購入して中身の回路部分を自作出来るようになれば、錬金ギルドにさえ持ち込めばクオリティーチェックはという作業はあるが売れるということである。


『キタぞこれ! 稼げる、稼げちゃうゾ』

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