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前世の記憶が生えたとて、スキルなしには厳しいです  作者: ヒコしろう


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第25話 本当に逢わせたいヤツ

どうやら剣と魔法のファンタジー世界の常識では呪いというモノは僕のイメージよりもっと身近で予想以上に強大な力だったらしい。


『魔力を使った魔法や魔術がそこら辺でゴロゴロしていりゃあ、僕がハッタリでかけた呪いだって勝手に呪力とでもいうのか、まぁ、そんな目に見えない力だって有ると信じちゃうのかな?』


と、魔法スキルもなく魔術にもあまり触れて来なかった子供の僕と、科学の世界で生きたオッサンの僕の二人がかりでも気が付かなかったコッチの世界の【呪い】というワードの重みの強さを身に染みて感じた経験であった。


まぁ、冷静に考えてみれば酎ハイがメインのヤツの「酒を飲みにいこう!」と、テキーラやウォッカがメインの酒飲みのヤツの「酒を飲みにいこう!」は同じフレーズでもその意味や破壊力はかなり変わってくる。


それが呪いというフレーズにおいても前世とこの世界の捉え方のギャップがあっても仕方ないと思う。


だが、今回の件で痛感したのは、


『もう、呪いとか気軽に口にするのは止めよう』


という事である。


マジカルパワーなんて無い前世の世界でもあれだけ存在感のあった呪いという物が、マジカルパワー全開バリバリ夜露死苦なこちらでは、


「呪いなんて負のプラシーボ効果ですよハハッ」


では済まない可能性しかなく、そうなればオカルティックな漫画などで見た【呪詛返しの術】なんて物も有るとしか思えない。


『あっぶねぇぇぇ~、なんちゅう怖い事をしたんだ僕は!?』


と焦った僕は、この教会の神父様に騎士団長のオネストさん名義で教会の孤児院の子供達にお菓子代の銀貨1枚を寄付したのとは別に、自らのお財布からも、


『これぐらい出せば神様のご加護があるはず…いや、絶対ある! 呪い返しから守ってプリーズ、神様ぁ~』


との願いも込めて、銀貨1枚を僕名義で寄付しておいたのだった。


まぁ、神様からの加護がいただけるかは分からないが、神父様は、


「子供達の年始の祝いの食事を豪華にしてやれます」


と喜んでくれていたので、神父様から神様に、


『アイツは良いヤツですぜぇ』


という報告ぐらいは行ったと信じたい。


まぁ、リッターさんとお話をする為の会場として教会の出入り自由な礼拝堂の端をお借りしたお礼も含まれている寄付なのでそんなに期待はしていないが、これは呪いと同じで気分のモノである。


なので、


『ほら、マジカルパワー全開な世界だし…』


と、お値段以上の効果を期待してしまう卑しい自分が見え隠れして居るのも確かだ。


そんなこんなで騎士団長さん家のご長男さんとの正式な初対面となったのであるが、アディンさんがリッターさんと別れた後も僕の隣を歩きながら、


「でアルマ少年、次は何処に行く? 腹が減ってるなら良い店があるぞ!」


などと、どうやら非番の今日という日を僕と満喫するつもりで聞いてくるのだが、


『えっ、逢わせたい人であるリッターさんとのイベントが終わったのに!?』


と驚く僕を他所に彼はデート気分で、


「俺の生まれた地元は領都の隣の穀倉地帯でな…」


などと自分の生い立ちなどを交えながらアディンさんのお気に入りのお散歩コースを案内される流れになっている。


『いや、折角の休みだろ? 成人が16歳のコッチの世界の普通は、見た目は九歳で中身は異世界のオッサンみたいな僕には分からないが、アディンさんも結婚適齢期のアウトコース高めな年齢でないの? こんなお子さまとお散歩デートをしてないで彼女を見つけてデートをしなよ…さっきリッターさんも心配してたでしょ?!』


と心配になってしまう。


しかし、そんな僕の心配は不要だったらしく、アディンさんがやたらオススメするお店に少し遅めの昼食を食べに入った瞬間に、僕は、


『コイツ、やりやがったな…子供を連れてきて話しかけるキッカケにする腹積もりだったか…いや、まさか僕に逢わせたいヤツの本命はコッチか?!』


と、この店を切り盛りしているらしい姉弟さんの特にお姉さんに対してのアディンさんの態度や表情などで全てを理解したのだった。


店のお姉さんが、


「あら、アディンさん今日はお休みなの? こちらの可愛らしい男の子は…えっ、まさかお子さん?」


というのを、僕が全力で否定しようとするのを掻き消すほどの勢いでアディンさんは、


「違う、違う、こんな大きな息子が居る歳では無いです!」


と言って慌てているが、僕としては、


『いや、16歳で成人で9歳の息子…アディンさん、2年ばかりお釣りが来る。 そんなお歳ですよ』


とツッコミたくなるが、今のこの状況をちゃんと理解している中身はオッサンな9歳の子供としては、


『まぁ、フンドシ戦士の話を触れ回った罪はあるが、擦り付け事件の時には親友であるリッターさんのパパという事で僕の味方となり騎士団長さんに意見もしてくれていたらしいから…』


と、ここは全力でアシストに回ってあげる事にした。


見た目は子供、中身は大人の先輩として、あの赤い蝶ネクタイの少年を憑依させたように、


「お姉さんもお兄さんもはじめまして、僕はアディンお兄ちゃんにお世話になっている駆け出し冒険者のアルマですぅ」


とお店の二人にご挨拶をすると、調理場からこちらを見ていた鋭い目つきの男性はニコリと目尻を下げて、


「おっアルマだな、しっかり挨拶出来てえらいな! 俺はコッホでそっちが姉ちゃんの…」


というとホール担当のお姉さんが、


「クラーロよ、ヨロシクねアルマ君」


と自己紹介してくれたので、


『よし、顔が似てたから夫婦では無いと感じたが、似た者夫婦なんて言葉があるから念のために探りを入れて正解だったな』


と手応えを感じた僕はそこから、


「クラーロお姉ちゃんは美人さんだし、コッホお兄ちゃんもカッコいいから夫婦かと思っちゃった」


などと痛さ大爆発なお子さまを演じつつ、アディンさんの知りたいであろう情報を引き出す計画を開始する。


すると調理場からコッホお兄ちゃんが、


「勘弁してくれよ。 いくら何でも姉ちゃんの旦那だと勘違いするなんて、嫁に行くどころか男の気配からないから弟として心配してくくらいだぜ」


と呆れたようにいうと、ホールのクラーロお姉ちゃんは、


「ちょ! お客様の前でなんて事を」


とプクッとむくれており、アディンさんは、


「おい、アルマ少年…」


と、『変な事をいうんじゃないよ』みたいな雰囲気であるが、あからさまに、


『ナイスだアルマ少年! 膨れっ面のクラーロさんも可愛いなぁ』


みたいな顔をしているので、これで正解だったらしい。


それからも僕は前世のオッサンであった記憶と子供の皮を被ったオッサンという僕の利点を活かして、子供ならではの少々雑な話題振りや直球な質問まぜて、時にはオッサン的な変化球を駆使してクラーロさんとコッホさんから、


【好きな食べ物】


というライトな辺りからスタートして、


【将来の夢】や【好きなタイプ】


など様々な情報を聞き出す事に成功したのであった。


どうやらクラーロお姉さんは恋愛をするお年頃にこのお店を切り盛りしていたお母さんがいきなり倒れて、姉弟でお店を引き継いだらしい。


それから二人で四苦八苦しながら何とかこの食堂を軌道に乗せたらしく、気が付けばクラーロお姉さんは適齢期を逃し気味なお年頃になり浮いた話から縁遠くなっていた…という話であった。


しかし、僕はこの話に少し足りない要素があるのを見抜いている。


むしろクラーロお姉さんしか見ていないアディンさんは気付けない真実、


『僕じゃなきゃ見逃してるね』


ぐらいのこの姉弟の秘密に気付いてしまったのである。


それは、


『コッホさんがシスコンであり店に来たクラーロお姉さん目当ての客に獲物を撃ち殺す猟師ような視線を飛ばしていたから男が寄りつかなかった』


という真実で、アディンさんぐらい鈍感じゃないとコッホさんの視線に耐えられずに心が折られているはずである。


しかしこの状況はアディンさんにとってラッキーとしか言えない、


『だってライバルが淘汰された後だもん!』


まだ、心が折られていないアディンさんをクラーロお姉さんにアピールする絶好のチャンスに、僕は全力を出す事にしたのであった。

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