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前世の記憶が生えたとて、スキルなしには厳しいです  作者: ヒコしろう


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第24話 アディンさんの親友

アディンさんのお願いで出会った人というのは男性であった。


僕としては、


「僕と話したい人って聞いたから、てっきりアディンさんの彼女さんでも紹介してくれるのかと思ってました」


などと、アディンさんに期待はずれだった事をチクリと言ってやった後に、目の前の男性に、


「どうも、はじめましてアルマと言います」


と頭を下げる僕に彼は、


「いや、寂しい事を言ってくれる。 君の屋台で君から一杯奢ってもらった事があるのに…」


と言って摘まんだ1枚の銀貨を小さく揺すって見せてくる。


『ん? 銀貨??』


と困惑する僕だったが、次の瞬間、少し前に踏んだり蹴ったりだったあの日に鉄貨1枚というミルクムギチャの屋台にて銀貨を出した男性客の事を思いだし、


「あぁ、あの時の! あれから来てくれなかったって事は、美味しくなかったんですね。 それをワザワザ僕に直接言う為に知り合いのアディンさんに…」


と、今回の呼び出しの理由を察して凹む僕に彼は慌てた様に、


「違う、違う、違う!」


と言って、知り合いであるアディンさんに、


「アディンからも言ってやってくれ」


とお願いすると、アディンさんは少し面倒臭そうな顔をしながら、


「アルマ少年の売っていた飲み物の味は気に入っていたらしいが、コイツの仕事柄あまり町をウロウロ出来ないから許してやってくれ」


と僕に説明した後に、男性に、


「ほれ、これで良いか?」


と聞くと、男性は悲しげにアディンさんに向かい、


「なんか、面倒臭そうだな…」


と小声で文句を言った後に、今度は僕に向き直り、


「紹介が遅れたが、私の名前はリッターでファベル騎士団所属…って、所属や階級を言ってもアルマ君にはピンと来ないと思うから、騎士団長オネストの息子で君に非道な行いをしたバカな弟のデセオの一番上のお兄ちゃんで、アディンとは学生の時からの親友だ」


と、情報量たっぷりな自己紹介をしてくれたのだった。


何でも彼の騎士団でのお仕事は主に情報収集らしく、僕に銀貨を差し出したあの日は、市場でわざとに僕を突き飛ばして僕のミルクを台無しにしたあのとてもカタギとは思えない連中を探っていた最中だったらしい。


その時の彼はすでに僕の事を一方的に知っていて、弟である四男坊が迷惑をかけた僕が自分のターゲット達に被害を受けた事を気にして、


『これで足りるかな?』


と銀貨を差し出して、


「釣りは要らない」


という事により地面に撒き散らしてしまった僕のミルクの代金を補てんをしようと考えてくれたらしい。


彼は、


「まぁ、思惑は失敗してアルマ君に鉄貨1枚分の損失を追加で与えちゃったんだけどね」


と恥ずかしそうに再び銀貨を僕に差し出し、


「これは父上からだ。 間接的にだけど君の屋台の材料をダメにした謝罪の印だから受け取ってあげて」


と言ってくるが、全く話が見えて来ない僕は、


「いえ、よく分からないお金は受け取れません!」


と、その銀貨を突っぱねると、リッターさんは、


「本当にウチのデセオより年下なのか? あのバカなら理由なんて気にせずに飛び付くのにな…」


と僕の受け答えに驚きながら、同級生だったらしいアディンさんに、


「アディンからも受け取る様に言ってやってよ」


と泣きついていた。


するとアディンさんはリッターさんに、


「お前の弟がやらかした時に説明したように、アルマ少年はそこら辺の普通の子供ではない。 そして残念ながら俺より考え方が大人であり、フンドシ戦士の話を触れ回った件により俺はアルマ少年からかなり嫌われているという自信がある」


とフンスと何故か自慢げに腕組をしながら、


「なので、俺からのお願いはあまり意味が無いだろう。 正直、リッターに頼まれた今回の呼び出しだってアルマ少年が申し出を受けてくれた事に俺が一番ビックリしているぐらいだぞ…嫌いな奴からの頼みなのに」


と客観的に僕からの自分の評価を発表するので、僕は、


「悲しい評価を自信満々で発表しないで下さい。 なんかプリプリ怒っていた僕が悪者に感じてしまいますから」


とアディンさんにお願いすると、リッターさんまで僕に、


「なんか、親友が迷惑をかけているらしいな…すまん」


と、頭を下げてくれるというややこしい状況である。


しかも、更に分からないのは、


『う~ん、なんで騎士団長さんが間接的に僕のミルクをダメにした事になるんだ?』


という点であり、僕としては理由の分からないお金は受け取りたくないのは変わらずだが、そのお金が提示された理由は凄く聞きたいので、面倒臭い駆け引きなとせずに直球でリッターさんに聞く事に決めたのである。


するとリッターさんの説明によると、あのイライラして僕を突き飛ばしたチンピラ達の組織の一人が仲間を裏切って騎士団に情報を売り渡して、ボスや幹部を失う事になっていたらしい。


そして僕が市場で突き飛ばされた日は、その仲間を売った密告者というのをチンピラ達が追い回していたらしく、リッターさん達騎士団のメンバーがその密告者を密かに保護した為にチンピラ達はターゲットを見失いイライラしている所に、たまたま進行方向にお買い物中の僕がいて、


「ドン!」


からの


「ミルクぶっしゃぁ~!」


となったのだそうだ。


現場でチンピラ達をマークしていたリッターさんからの、


「秘密裏にダメになった材料費を補てんしようとしましたが、失敗しまして…」


という報告を受けた騎士団長さんから、


「アルマ君はお前の親友のアディン君と顔見知りだから、なんとか接触して直接渡してきてくれ…アディン君に託すんじゃなくて、リッターがその目でアルマ君という人物を見てくるように」


と、このお金を託されたらしいのだ。


だけど、その組織を裏切ったチンピラの一人というのが、どうやら僕が両親や集落の皆の無念を少しでも晴らす為にハッタリで行った呪いの儀式が予想以上に効いた為に組織を裏切る事になったらしい。


流れとしては、僕が死刑になるであろうマーキオ村の村長に死の間際まで苦しむようにあの呪いの言葉を放った現場に密告者となるマーキオ村出身の男の両親も居たそうだ。


そいつの父親は村長の部下として色々とあの村で秘密裏に行われていた金と暴力による独裁政治に関わっていたらしく、死刑こそ回避できたが犯罪奴隷として鉱山送りにされ、主に村人の監視役だった母親の方は罰金刑で済んだのだが家財を全て手放して、マーキオ村にも居辛くなって昔に村を出た息子を頼りファベルの町に来て親子で隠れるように生活していたらしい。


そこから運命が加速し、鉱山の作業についてすぐの父親が落盤事故で死亡。


母親が僕からの呪いだと恐怖しノイローゼ気味になる。


あの村長が村での独裁状態の発覚を恐れて以前から、


『他所から嫁を貰う男は良いが、村の中で結婚する事を拒否した娘が他の町に嫁に行って村の秘密を話さないように』 


という安い恐怖心から、長年にわたり金貸しや無茶な村のルールで村の娘が奴隷に落とされて他の国へと売り飛ばすというパターンの時に使っていたファベルの町に拠点置く村長のお友達でもある犯罪組織への就職を村を出る条件として村長から指示されて仕方なく働いていた密告者となる息子に対して心を病んでいる母親は、


「あの村に居ても貴方に幸せは来ないと思って村から出したけど、貴方も村長(アイツ)の奴隷商売の手下だったなら呪われてしまう!? 今からでも遅くないから組織を抜けて!」


と涙ながらに懇願されて組織を裏切る事になったらしい。


組織は密告により主要メンバーが捕まり解散、密告者もなに食わぬ顔で不安定な母親の為に真っ当に暮らしていた矢先に、チンピラとしてファベルの町に居た元組織のメンバーの、


『あれ? あの資料を持ち出せたのって…』


という推測から密告者だとバレてしまってからのあの日、というかなり手数の多い連鎖反応であった。


しかし、確実に僕からスタートした呪いがグルっと迂回して少し僕のお財布にダメージを与えただけに思えてしまい、益々その差し出された銀貨を貰う訳にはいかなくなり、リッターさんからの、


「貰ってくれ」


というお願いに僕は、


「いや、貰えません」


という押し問答を繰り返していると、アディンさんが、


「もう、面倒だからアルマ少年が騎士団長殿(リッターの親父さん)からの寄付として教会の孤児にお菓子でも振る舞ってやれよ」


と提案してくれたのだった。


それならば騎士団長さんに出したお金を引っ込めさせずに済むし、僕は、


『自分のお金として受け取ってないから!』


と気持ち的にも楽になる。


そして、一歩間違えば僕も同じ境遇だったかも知れない孤児にお菓子をプレゼント出来るというオマケまでついたナイスなアイデアに僕は、


「それ、最高です! たまにはアディンさんも役に立つ事を言うんですね…ビックリしました」


とアディンさんへ賛辞の言葉を送り、リッターさんも、


「悪い奴じゃないんだけど、アディンはよく言動でトラブルを起こすが、ごく稀に良い事を言って問題を解決してくれるんだよ…本当にごく稀に」


とアディンさんを褒めたのであるが、当のアディンさんは、


「何だよ二人とも、それ全く褒め言葉じゃないからな!」


と少し拗ねてしまったのであった。

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