↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世の記憶が生えたとて、スキルなしには厳しいです  作者: ヒコしろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/43

第11話 せつない里帰り

盗賊に襲われたあの日、両親の命懸けのサポートにより命からがら僕が集落を逃げ出したのが春の事だった。


そして色々あり、予想していたより早く、そして予想して居なかった規模でその集落に向けて皆を弔う為に出発出来ることが嬉しくもあり、協力して頂ける皆さんには有難い気持ちでいっぱいである。


集落に向かう荷馬車の荷台に乗せてもらいながら、ズラリと列を作る前の馬車や馬に乗る騎士団の方々を眺める僕の心に今も引っ掛かっているのは、


『せめて幼なじみの二人と一緒に集落から逃げ出したかった』


という無念の気持ちである。


ある意味で僕の両親はあの地獄の様な状況の中で、


『息子だけは無事に逃がす!』


という願いが叶ったと言ってもいい。


まぁ、僕の必死な、


『両親と一緒に逃げ出したい』


という願いは叶わなかったが、それでも他の家の皆よりは幸運だったのだろう。


集落から子供の足で歩いて半日のマーキオ村で数日待ったが集落から逃げ出せた人は僕以外は現れず、ファベルの町のスラム地区でも、


『僕みたいに集落の誰かが流れて来ないかな?』


と、辺りの顔ぶれを気にしながら暮らしていたが、最近では、


『もう、友達もみんな…』


と諦めてしまう自分が居て、何だか時間差で心に大きな穴が空いた気分になってしまう。


ただ有難い事に、そんな心のダメージも前世の記憶分、『散らし方』の様な感覚を人生経験から身につけており、アルマ君としての剥き出しの幼いガラスのハートを軋ませはするが、砕け散ることなく生きていられる事に関しては神様に感謝するしかない。


馬車に乗るお金もなく、ファベルの町まで来る時には腹を空かせたまま数日間歩いた道を馬車ならば丸1日もあればマーキオ村まで到着し、


『なんだかあの日の僕が可哀想になるな…』


などと、村まであっさり到着した事で馬車の便利さを痛感する。


到着したマーキオ村では騎士団長さんや、お代官であるファベル準男爵様から任命されたこの調査隊の責任者さんにヘコヘコしながら、


「我々も助けに向かいたかったのですが、なにせ村を守る兵士も冒険者も居ない職人や農家だけの村でして…」


などと、早々に集落を見捨てる決断をしていた村長の嘘だらけの説明に僕は胸がムカムカする気分であった。


手続き的には集落の長の代わりにマーキオ村の村長が代理でお代官様に調査や救援の依頼を出しても良かったのに、それをしなかったのは、


『全滅だな』


と、この自分の治めるマーキオ村しか興味の無い村長が暗に確認もせずに諦めたからである。


確かに僕がマーキオ村に逃げ込んだ時には集落は既に助けを必要とする状況を過ぎていたとは思う。


しかし、


『この村長が動いてくれていれば、あの夜命と引き換えに僕を逃がしてくれた両親や、村が燃やされて生存は絶望的な皆が野ざらしで半年ほど放置される事は無かったのに!』


と、逃げ出した時の僕には漠然としか分からなかったこの村長に対しての不信感が、前世の記憶が生えた今ならば確りと、それはそれは反吐が出る程に理解出来てしまう。


『オレ、コイツ、嫌い!』


と僕の脳内会議の野生を司る自分が村長を敵視し、腰の辺りから聖剣・正雄が、


『さぁ、私を抜くのだアルマよ』


と渋い声で囁く幻聴が聞こえる気がするが、それでは僕の愛剣が聖剣・正雄から妖刀・首狩り正雄へと闇堕ちしてしまいそうな為に、


『落ち着けぇ、落ち着けぇ~、ヒッヒッフー』


などと、僕が独自の方法で怒りの気持ちを体外へと散らす事に集中していると、騎士団長さん達からの、


「では休憩も出来たから目的地まで移動してテントを張ってしまうぞ!」


という出発の合図に、ホッとする僕と、


『いよいよ、集落だな』


と、あれだけ弔う事を望んでいたのに、いざあの日以来の集落に入る事に緊張して胃がキリッと軋むような自分が同居し、前世の自分から


『頑張れ、お父さんとお母さんに最後の親孝行だ!』


と励まされた僕は覚悟を決めて荷馬車に乗り込んだのだった。


両親の話では昔は家畜として飼われている牛や馬魔物に荷物を括って細い山道を使い物資を運び、見晴らしの良い高台の土地を切り開くのに丸一年かかったらしい。


そして最初の年は集落での冬越しを諦めて、その翌年の春にファベルの町の両親の知り合いの大工さんにも来てもらい前の年に斬り倒しておいた木材を使い村役場的な丸太小屋を建て、ようやく開拓が本格的にスタートしたのが十数年程前の話らしい。


馬車が通れる様にマーキオ村までの道を広げたり、木を斬り倒して集落を広げつつ、その木材で柵を作り小屋を増やしてゆき、畑などで安定して作物が取れるようになった頃には6軒だけの集落は僕を含めて3人のベビーラッシュとなり、急に集落が明るく感じ活気づいたのもこの頃なのだそうだ。


元はファベルの町のお代官様のお屋敷に勤めていたという文官職を早期に引退して開拓村でのんびり暮らそうと、若かった両親達のリーダーとして集落に来てくれたジャッドさんがその後も長としてファベルの町とやり取りしてくれて、本当ならば今年の秋には正式な村になる事が発表され、来年からはご領主様から頂いた村の名前を出して村民募集が開始されている頃で、集落の皆も、


「とうとう正規の税金を払わないと駄目ですが、何でだろう? むしろ少し嬉しくもありますね」


などと、正規の王国民から様々なサービスの対象外となる開拓民になり、税金なども軽くなっていたが、今後は周辺の土地を勝手に切り開いて『ウチ敷地!』などという自由も、ギルドに申請するだけで店をオープン出来るといった事も出来ず、土地を手に入れるにも店を出すのも多額の費用がかかり、暮らしていくにもしっかり税金が必要になるが、


『ちゃんとした王国民』


という身分に戻れるのは、集落の皆が目指した1つのゴールだったらしい。


そんなウチ集落で一番の土地持ちだったのは、広い牧場を持ちたくて遠くの町からワザワザ来てくれたランサおじさんとマルジュおばさんのご夫婦で、ある意味牛や馬に羊と、ここが集落で一番の子沢山の大家族だったかも知れない。


そして冬は木こりと炭焼きに、夏は狩人という二足のわらじで暮らしていた無口なキゴニスおじさんは、人付き合いがあまり上手ではなく、開拓村なら静かで獲物が豊富だという理由だけで開拓に参加したという少し変わり者なおじさんだったが、村で一番頼れる力持ちだった。


僕より生まれるのが早かったオルスくんは騎士になるのが夢で農家であるオルゾおじさんに、


「木剣を振ってないで鍬を振れ!」


などと叱られ、集落唯一の薬師だったシャルムおばさんからは、


「子供の夢を邪魔しないの」


とおじさんが注意されていたのを思い出す。


僕より少し後に生まれたルーチェちゃんはオルスくんのお嫁さんになるのが夢という、オルスくんラブな女の子で、なぜかルーチェちゃんの両親である鍛冶屋のガウおじさんさんと料理上手なペルナおばさんは事ある毎に僕を可愛がってくれていたのは、今から思うと、


『集落で色恋沙汰には絶対に恵まれない可哀想な子供』


として僕を哀れんでくれていたのであろう。


そして最後は僕の両親の木工職人の父サーニウと雑貨屋の母マルシャンがこの先にある集落の全員であった。


そして、両親達が汗水たらして広げてくれた小道を馬車に揺られながらグネグネと、小高い集落に到着したのはマーキオ村を出て二時間ほどの事であった。


火を放たれていた村は見るも無惨な事になっていたが、周囲の森まで火は届いてなかったのか山火事になって居なかったのは良かったが、


『草引きを怠って誰も足を踏み入れないとこうなるのか…』


と思える程に夏の間に草が延び放題に伸びており、騎士団長さんの、


「よし、村の石垣近くを軽く片付けてテントを張るぞ」


という号令の後で、ようやく僕の出番が来たようで、


「アルマ君、水場に案内してくれるか?」


と地元民の僕は両親を探したい気持ちを我慢しながら、明日から本格的に集落の片付けでお世話になる皆さんの為に、


「はい、集落の中に井戸もありますが、拠点にしているこの場所からなら集落の横の小川と池の方が便利かもしれません…こちらです」


と案内業務を開始したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。