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10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます  作者: 犬社 護
1章 家族からの別離(前世)

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9話 破格すぎる依頼達成ボーナス

私の考案した【猫カフェ】、アマンガムさんにも絶賛され、この企画は即採用されました。開店資金や店の維持費も相当必要とされるけど、喫茶店から得られる収入と、猫と戯れる時間制限付きの費用、建築予定とされる場所の立地、集客率などを考慮すれば、黒字経営も可能と判断されました。誰も試したことのない試みだから、宣伝すれば大勢の客が押し寄せてくると意気込んでいます。


「咲耶さん、素晴らしいアイデアを考案して頂き、誠にありがとうございます。私は報酬を準備しますので、ミケーネにどんな猫用玩具が欲しいかを聞いておいてくれませんか?」


「玩具の名前がわからない場合、絵でも構いませんか?」

「ええ、問題ありませんよ」


アマンガムさんは、壁際に設置されている棚の引き出しから、文具類(1冊のノート・鉛筆・消しゴム)を取り出す。


「こちらに描いてください」

「はい、わかりました」


彼はニコッと優しく笑い、それらを私に手渡してから部屋を出ていく。街にはペットショップらしき店もあったけど、ありきたりなものはミケーネだって知っているよね。まずは、彼女の要望を聞いてみよう。


「ミケーネ、運動不足を解消させる玩具なら、どんなものが欲しいの?」

『そうね…家の中を全力全開で走り回れる玩具が欲しいわ』


全力全開……ああ、あれならいけるかな。

私は、彼女の希望に沿ったものを描いていく。


「咲耶、そんな都合の良い玩具ってあった?」


ルウリは邪魔にならないよう、テーブルの上に降りて、私の描いている絵を興味津々と見ているわ。


「ルウリ、ミケーネはなんと言ったんだ?」


ベイツさんも、気になっているようだ。


「家の中でも、全力全開で走り回れる玩具だって」

「そんな便利なペット用玩具、販売されていたか?」

「さあね、わからないよ」


これ、描いていいのだろうか?


「ほお~上手いな。咲耶は、将来画家になれるぞ」


ベイツさんが、私の描きかけの絵を見て褒めてくれた。


「あ…ありがとうございます」


絵を描いている時、心が不思議と落ち着く。だから、私はもっと上手く描けるようになりたいと思い、小学校の美術の先生からしっかりと基本を学んだ。


「絵は綺麗なんだが、この丸い物体の正体がわからない」


ベイツさんが知らないとなると、もしかしてこっちの世界にないの?


「これは……」


ルウリは考え込んでいるけど、これが何かわかるのかな? この国で販売されていないとなると、アマンガムさんも必ず質問してくるから、上手く誤魔化さないといけない。


「一応、猫が部屋の中でも、全力全開で走り回れるものを描いてみました。この中に入って歩けば、この…丸い物が動く仕掛けです」


《キャットホイール》と言いたいのに言えないよ。


「ベイツ、これはキャットホーイルだよ。猫専用玩具で、100年程前に販売されていたもので、今は廃盤となっているから、販売しても問題ないよ」


良かった~、販売されていたんだ。


「猫専用のキャットホイール、そんなものが過去に作られていたのか。これだけ大きければ、平民の家に設置するのは厳しい。需要も少ないから、廃盤となったのかもな」


「かなり珍しい一品さ。咲耶は記憶喪失だから、閃いて描いたものだろうね」

「咲耶。聞いただけで閃いて、ここまで精密に描けるのは凄い才能だぞ!!」

「あはは…ありがとうございます」


ルウリがフォローしてくれて助かったけど、私の株が上がってしまい複雑です。


『凄いわ凄いわ!! これがキャットホイール!! 何故かよくわからないけど、その中に入りたいと感じるわ!!』


ミケーネも、興味津々で描きかけの絵を見て興奮している。

気に入ってくれて良かった。

アマンガムさんにもわかるよう、猫の絵を付け足しておこう。


『これ、私よね!! ああ、早く中へ入りたいわ!!』

「ミケーネ、どうしたのです? そんなに興奮して」


猫の絵を描き終えたところで、アマンガムさんが部屋へ入ってきたので、この雰囲気に困惑している。


『ご主人、見てよ、これ!!』


ミケーネが興奮して、アマンガムさんのズボンを爪で引っ掛け、こっちへ来るよう催促する。彼はそんなミケーネに怒ることなく、私のもとへ来る。


「ほう、これは綺麗な絵ですね。なるほど、見ただけで、どんなものかわかりますよ」


「アマンガムさん、これは今から100年程前に作られたキャットホイールと言われる猫専用玩具です」


アマンガムさんは、私の事情を知らない。ここはルウリの言葉を使わせてもらおう。ミケーネに言われて、閃いて即興で描きましたなんて言ったら、私の株がまた上がってしまうもの。なんか、心苦しいよ。


「ほう、咲耶さんは物知りですね。こんなものが、過去に開発されていたとは。ふむ、それならば、これも付け足さないといけませんね」


そう言うと、アマンガムさんは部屋を出ていき、数分程で戻ってきた。そして、彼は今回の依頼達成を証明する証明書を、私に手渡す。証明書を拝見すると、そこには、《依頼達成による報酬額》と、アイデア発案によるボーナス額が手書きで記載されており、それらの金額を確認すると、私は激しく動揺してしまい、手の震えが抑えられなくなる。《猫カフェ》《キャットホイール》、これらのアイデアを提案しただけで、報酬額がとんでもないことになっています。

 

成功報酬 ミケーネの発見と追加事項の解明          5万ゴルド

追加報酬① 猫カフェのアイデア料              30万ゴルド

追加報酬② キャットホイールのアイデア料           3万ゴルド


「3…38万ゴルドもあるのですが!? こんなに貰っていいのでしょうか!!」


私は口で説明しただけ。

それだけの行為で、こんなに貰ったらダメでしょう? 

だって、成功するかもわからないんだよ?


「これは当然の額ですよ、咲耶さん。貴方が成人していて、我が商会の従業員であれば、責任者として任命し、給料も大幅に昇給させる程の事項なんです。貴方が冒険者である以上、今の私にできるのは、アイデア料として追加報酬を支払うことだけなんです」


その追加報酬が高過ぎるような?


「貰っていいのでしょうか?」

「構いませんよ。この依頼達成書を冒険者ギルドの受付で見せれば、全額貰えるシステムです」

「わ…わかりました。大切に使わせて頂きます」


初依頼で、こんな大金をもらえるなんて、夢にも思わなかった。

でも、嬉しいな。

私の提案が認められたってことだもの。


「ところで咲耶さん、お願いがあるのです」

「お願い? なんでしょう?」


こんなにお金を貰えるのだから、出来る限りのことをしてあげたい。


「猫カフェを成功させるには、猫たちの教育が必要不可欠です。猫カフェが開店されるまでの間、貴方には野良猫たちの教育をお願いしたい。これは、猫の言葉を理解できる貴方にしか出来ない仕事です。長期間となりますので、改めて指名依頼として冒険者ギルドに依頼し、報酬もお支払いします」


私、Fランクなのに、指名依頼がくるの?

幸先が良過ぎるスタートのせいで、逆に不安が押し寄せる。


「わ…わかりました。猫たちのためにも、教育係として頑張ります」

「お互い頑張りましょう」

「は、はい」


私はアマンガムさんと握手を交わすのだけど、私の手だけがカタカタと震えている。ミケーネや猫たちのために考案した【猫カフェ】、まさか私自身がここまで深く関わることになるのだなんて、夢にも思わなかったよ。



○○○



「ちょっと咲耶、どうしたの? 何処かぎこちないわよ?」


初めての依頼を引き受け、膨大な達成報酬を貰い、猫たちの教育者になるまでの流れが激動だったせいで、《これはドッキリなのでは?》と、今も思ってしまう程だよ。心がそれだけ乱れているせいで、歩き方もぎこちなくなっているんだ。


「あの・・・」

「ああ、猫が見つからなかったのね。しょげることはないわよ。一日で・・・ってこれは?」


勘違いされたので、私は依頼達成書を見せる。別紙には、猫カフェに関わる機密事項、私への追加報酬が記載されており、アマンガムさんと教育者のベイツさんの印鑑も捺されている。

 

「い、依頼達成!? まだ、3時間しか経過していないのよ!! それに、この記載内容、ギルドマスターにも報告しないと・・・ベイツ様」


「ああ、わかってる。そこは、俺からギルドマスターに説明しよう」


アメリアさんも、金額の多さに驚いているわ。私自身、たった3時間動いただけで、こんな大金を得られるとは思いもしなかった。


「わかりました。ところで咲耶、きちんと管理するのなら、大部分をギルドに預けないといけないわ。今回、いくら引き出す?」


「それなら、40000ゴルドだけ引き出します」


冒険者カードは身元の保証だけでなく、貯金通帳の役割を持っていると、冒険者登録時に言われたわ。アメリアさんも私に気を遣ってくれたのか、周囲に知られないよう、金額の詳細を一切口にしなかったから助かります。


「わかったわ」


34万ゴルドをギルドに預けたことで、ようやく初依頼を完遂させたのね。


「ベイツ様は私と共に、ギルドマスターと会ってもらえませんか?」

「了解だ。この子には、まだ早いからな」


そういえば、ギルドマスターの確認がいるとも言ってたわ。

まだ、やり残した事があったんだ。


「咲耶、俺がギルドマスターと話している間、ここの建物と隣接している喫茶店で、ルウリと一緒に休んでおくといい」


「わ、わかりました。私が行かなくてもいいのですか?」


「本来なら行かないといけない。だが、君はFランクで、今日が初依頼だ。周囲に知っている連中もいるだろうから、今行くとかなり目立つ。今回は緊急措置として、教育者の俺が説明しておく」


「ありがとうございます」


ベイツさんとアメリアさんが2階へ行くと、私の緊張感もようやく解かれ、疲れがどっと押し寄せてくる。お言葉に甘えて、ルウリと共に喫茶店で休ませてもらおう。

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