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10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます  作者: 犬社 護
1章 家族からの別離(前世)

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6話 教育者の選定

「合格よ」


試験が終わった直後、アメリアさんから驚きの一言が告げられる。


「やった!! それじゃあ、Fランク冒険者として生活できる!! いたたた」


飛び上がったせいで、さっき蹴られたお腹が痛い。

たった2日間だけの訓練だけでも、頑張れば認められるんだ!!

ベイツさん、ルウリ、ありがとう!!


「ええ、Fランクからのスタートよ。正直、体力面は基準以下で、フェイントを含めた攻撃も素人レベルだけど、時折鋭い一撃が放たれていたわ。防御に関しても同じで、無駄な動きが目立つけど、終盤に見せた攻撃を防御してからの反応速度はかなりのものだった。まだまだ荒削りだけど、あなたはこれから伸びるわ。ベイツさんの肩に止まっているハミングバードも、あなたの性格と将来性に惚れて、従魔契約に応じてくれたのね。これからも、頑張ってね」


やった、褒められた!!

まだ始まったばかりだけど、幸先のいいスタートを切れたわ!!


「はい、頑張ります!!」

「ふふ、可愛い癒し系ほのぼの冒険者のデビューね。あなたは無能者だけど、そこまで悲観することはないわよ。潜在能力が高いから、経験を積めば、きっと何らかの力を得るはずよ。そういった実例は、多数報告されているの」


アメリアさんが私の頭を撫でてくれる。私は恥ずかしくて頭を下げてしまったこともあり、周囲の冒険者たちが私を見て微笑ましい笑顔を向けてくれていたことに、全然気づけなかった。


「とりあえず、ベイツさんのところへ戻りましょうか」

「はい」


私はベイツさんとルウリのもとへ行き、剣術の未熟さと体力不足を痛感したこと、短い時間だったけど、戦闘中に何故かアメリアさんの動きを少しだけ予測できたことを伝えた。


「はは、そうかそうか。だから、中盤以降の動きに荒さが少なくなったのか。こいつは驚きだ。君は強くなるよ」


やった、ベイツさんに褒められたわ‼︎


『うんうん、良い傾向だよ。これからも頑張ってね』


当初、ベイツさんの左肩に留まっていたルウリも、私の右肩に留まり、褒めながら羽根で私の頭を撫でてくれた。


「咲耶は、良い師匠と従魔がいて幸せね。さあ、まずは冒険者カード用の証明写真を撮りましょう。咲耶だけ、私についてきてね」


「はい」


ベイツさんの冒険者カードを見せてもらったけど、あれは日本で言うところの免許証のようなものかな。お父さんのものより少し大きかったけど、写真も鮮明で、その横に性別・年齢、幾つかのスキルと魔法が記載されていたわ。しかも、スキルと魔法に関しては、所持者の自由で非表示にもできるのだから凄い。


私は撮影専用の部屋へと案内されると、そこには旧型の大きなカメラがテーブルに置かれている。部屋自体は、日本で見たことのあるものと同じ作りだ。照明、椅子、椅子の後方にある白い壁、私も一度だけ撮ったことがあるからわかるわ。でも、カメラの横に置かれている10インチくらいのボードって何だろう?


「その椅子に座って、背筋を伸ばしたまま、ずっとカメラの方を見ていてね」

「はい」


写真撮影自体はすぐに終わり、私がアメリアさんのもとへ行くと、彼女はあの10インチのボードを見ていたので、私がそっと覗き込んだ。


「あ、私が映ってる‼︎ 凄く鮮明だ‼︎」


この世界の技術力って、意外に高い。

カメラだけじゃなく、クーラー、冷蔵庫、列車、電話もあるもの。

流石に、テレビや飛行機はないけど。

気になるのは、車がないことかな。

列車があるのに、何故車がないのだろう?  

いつか、ルウリに聞いてみよう。


「ふふ、最新鋭のカメラだもの、当然よ。さあ、写真も決まったし、受付へ戻るわよ。咲耶に任せられる依頼が、一つあるの」


今の私でも任せられる依頼って、何だろう?

気になるわ。


私が受付へ戻ると、アメリアさんは受付奥の部屋へと入っていく。ベイツさんやルウリと合流して一緒に待っていると、彼女が一枚のカードと依頼書を持ち、こちらへ戻ってきた。


「これが、あなたの冒険者カードよ。紛失すると、再発行料として10000ゴルドを支払わないといけないから、必ず携帯しておいてね」


10000ゴルドの罰金!?


「はい‼︎」


これが、私の冒険者カードなんだ。


私の名前と写真、あと冒険者ランクがFとだけ簡潔に表示されている。さっきの水晶玉による解析で、私の情報がこのカードに記憶されていて、魔力を流すと、全情報が見られるんだよね。あと、私が成長すると、カードも更新されるって言ってた。どんな原理でそうなっているのか不思議だわ。


無くしたら10000ゴルドの罰金、ベイツさんから貰ったポシェットの中に入れておこう。冒険者カード用のポケットがあるから、そこに入れてチャックすれば大丈夫だよね。


「ベイツ様から聞いていると思うけど、Fランクに魔物討伐依頼はないの。殆どが、街の中での依頼になる。あの人嫌いのハミングバードを従魔にするあなたなら、この依頼を達成できるかもしれない」


アメリアさんから渡された依頼書の見出し欄には、《猫探し》と記載されている。

依頼者の欄には、商人[アマンガム・ルミングス]と名記されているわ。


依頼内容を拝見すると、溺愛している飼い猫ミケーネが家から突然いなくなったようで、これまでに4組のFランク冒険者たちが挑み、捕縛に成功こそしているけど、数日中には必ず脱走している。家で虐待されているわけでもないのに、何故逃げるのか皆目不明で、飼い主の商人さんも困り果てているという。平凡な三毛猫のため、目印として鈴の付いた有名ブランドの首輪を必ず装着させている……か。


「もともと、この依頼が出された時期は3ヶ月前なの。依頼そのものを達成できた冒険者ならいたんだけど、家へ帰しても必ず脱走するから、今では依頼達成条件に、《脱走する原因を突き止めてくれ》というのも追加され、報酬もFランクとしては破格の5万ゴルドになっているわ」


「5万!?」


この世界のお金の単位は《ゴルド》で統一されており、野菜とかの値段を調べた限り、1ゴルド=1円だと思う。Fランクの平均報酬金額は2000ゴルドだから、1人前とは程遠い冒険者に対して、5万円の報酬金額なんて驚きだよ。依頼主の商人さんは、それだけミケーネという猫を大切にしているんだね。【猫探し】か、大変かもしれないけど、アメリアさんが勧めてくれているし、この依頼に挑戦してみよう。


「わかりました…やってみます!!」 


「了解よ。期限は一週間、依頼人からの希望で、仮に期限内に達成できなくても、罰則とかはないから安心してね。それじゃあ、この依頼を受理するから、少し待っていて」


昨日ベイツさんに教えてもらったけど、冒険者ギルドの依頼には、全てに期限がある。掲載されている期間内に依頼を必ず達成させないと、達成報酬は支払われないし、罰則も生じてしまい、依頼を受けた冒険者の信頼が損なわれてしまう。冒険者カードにも、その履歴が残ってしまい、今後の活動にも大きく影響する。だから、掲示板に貼られている依頼を引き受ける際は、必ず全てを見通すようベイツさんにきつく言われている。


今回は罰則がないようで、私としても安心する。

初めての依頼が、猫探しか。

どんな依頼であっても、一生懸命やるだけよ。


『ふ~ん、猫探しか。今の君なら、多大な労力を使う事なく達成できると思うよ』


 アメリアさんが席を外すと、私の肩に止まっているルウリが鳥語で囁く。


「猫探しって結構大変だよ?」

『ふふふ、やってみればわかるよ』


日本でも、猫探しのプロがいるくらい大変なお仕事だ。私一人だと、絶対かなりの労力がかかると思うけど? その自信のある発言は、何を根拠に言っているのかな?


「咲耶。依頼先へ行く前に、教育者をこのリストから選んでちょうだい」


アメリアさんが戻ってくると、A4サイズの紙を手渡される。


「教育者?」


「ええ。冒険者登録後には、必ずDランク以上の一人前と言われる冒険者から、自分を教育してくれる者を一人選び、その人から一ヶ月間手解きを受けないといけないの」


そんな決まりがあるんだ。手渡されたリスト欄には、私を1ヶ月間教育してくれる名前がズラ~っと記載されていて、合計で12名もいる。あ、下の方に注意事項がある。


【指名した理由を、必ず提示すること】


理由を言わないといけないんだ。

適当な理由を言うと、指名しても却下されるかもしれない。

ここは、真剣に答えよう。


「それなら、私はベイツさんを指名します」

「理由は?」

「ベイツさんは、私の命の恩人です。この3日間だけでも、様々なことを学ばせてもらいました。先輩としての視点、新人としての視点、両方の視点で捉えた際の注意点を教えてくれました。とてもわかりやすかったので、もっと絆を深めたいです」


私が正直に理由を明かすと、周囲からざわめきの声が聞こえてきた。私の返答に対して怒っているのではなく、褒めてくれているようです。


「偉いわ、真剣に考えてくれたのね」

「はい。それに、もう1つ理由があります」

「あら、それは何かしら?」


「冒険者の多くが、パーティーを組んでいます。1ヶ月間も私に付き合ってくれるとなると、パーティーの方々に多大な迷惑を掛ける可能性があります。もしかしたら、パーティーに相応しい依頼が、その間に舞い込むかもしれません。その点、ベイツさんはソロでAランク、冒険者として収入面も安定していると思うので、彼を選びました」


そう言うと、周囲の人たちが…


『ベイツさんが羨ましい! こんな立派な子供の教育者になれるんだから~~~』

『私を選んだ貴族のガキは、本当に最低野郎だったのに。こんな子に選ばれたかった~~』


なんか、皆がこれまでの不満を訴えているのですが? それに、私を教育したかったと訴えてくれる人々の数が、意外に多くてびっくりです。


「咲耶は良い子ね。あなたの意見を、何処かの馬鹿貴族の子供に言ってやりたいわ。猫探しの依頼、頑張ってね」


「は、はい!!」


周囲が騒がしい中、私は自己紹介すると、私を応援してくれる冒険者が沢山いて驚いた。すっごく嬉しい気分になったので、皆さんに『猫探しの依頼、行ってきます!!』と言って、ルウリやベイツさんと共に、冒険者ギルドを出た。


「あの~ベイツさん、冒険者の皆さんの反応が気になるのですが?」


私の質問に対して、ベイツさんは唐突に笑い出す。


「あはははは、あいつらも咲耶の教育者になりたかったんだろう」

「ええ。私の!?」


あれって、お世辞から出た言葉だと思っていたのに。


「久々に教えがいのある新人がやって来たと思い、皆も奮起していたのさ」


教えがいのある新人? 

嬉しい、先輩方が試験での私の戦い方を認めてくれているんだ。

でも、気になる言葉を聞いたわ。


「久々って、新規で登録する人は、他にいますよね?」


「勿論、いるさ。咲耶のような新米冒険者の中にも、血気盛んな連中もいるが、彼らは先輩冒険者たちを一目置き、先輩たちの戦闘を日頃から観察して、自分の技術にしてやるという意気込みとやる気に満ち溢れている。問題は、貴族連中だ。大半が子供で、中途半端に強いせいもあって、自信過剰かつ平民を見下す礼儀知らずな奴らが多い。ここ最近、そう言った連中ばかりだったから、皆も辟易していたのさ」


「そうだったんですね」


貴族…か、どんな人たちなんだろう? 

依頼を受け続けていたら、いずれ私も出会うことがあるのかな? 

とりあえず、今は目の前の事に集中しよう。

まずは、街入口の警備員さんのところへ行かないとね。



○○○



街の入口に到着すると、行列が既に出来ており、警備をしている騎士の方々も忙しそうに身体検査を行なっているわ。この検査を少しでも疎かにすると、犯罪者が入ってくる場合もあるから、騎士の人たちも大変だろうな。


「お仕事、ご苦労様です。冒険者カードができたので、正式な滞在許可証を頂けないでしょうか?」


私は行列が途切れるのを待ってから、初日に出会った警備の騎士に挨拶すると、彼は私のことを覚えてくれており、和やかな笑みを浮かべ、私の頭を撫でてくれた。


「冒険者を選んだのか。危険なこともあるから、Fランクと言っても油断したらダメだよ。はい、街の正式滞在許可証だ。無くさないようにね」


私も、これで正式な街の住民となれたのね。


「はい!! ありがとうございます」


私は騎士さんにお礼を言い、ベイツさんとルウリと共に入口から離れていく。もう《猫探し》の依頼が始まっているせいか、2人は何も語らず、黙って私についてくる。


ここで2人に頼ったらダメ!!

私1人で、どこまで出来るのか試されているのだから。


物は試しに、その辺の猫ちゃんに聞いてみよう。鳥の言葉がわかるのなら、猫の言葉だってわかるかもしれない。丁度、近くに1匹の野良猫ちゃんがいる。


「ねえねえ、首輪に鈴を付けた猫ちゃんを知っているかな? こんな猫なの」


依頼書には猫の似顔絵も載っているから、私はしゃがんでそれを見せる。

う~ん、気まずい。

猫ちゃんが、私を凝視したまま何も言わない。


『驚いた。君を見ると、同族を見ているかのような不思議な感覚がする。君の言う猫なら知っているよ。この界隈を縄張りとするボスのミケーネさ。ボスは飼い猫だけど、毎回綺麗な音色を奏でる鈴の付いた首輪が嫌で、いつも脱走するんだ。君がボスと飼い主の仲介をしてくれれば、ボスの悩みや、あの問題だって解決してくれるかもしれない。僕についてきて、ボスのもとへ案内するよ』


嘘…鳥だけでなく、猫の言葉もわかるわ!?

しかも、脱走する理由もわかったし、どこにいるかもわかりそう。

 

気になるのが、ボス・ミケーネの抱えるもう一つの問題かな。

私一人で解決できるかな?

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