20話 お友達と初めての外食
私たちは猫カフェ建築用の土地やその周辺地域を散策し終え、定食屋ガブリへと戻ると、[営業終了]という看板が置かれている。
「ベイツさん、今日の夕食は誰の当番?」
「リット、急にどうしたんだ? 今日の当番は俺だが?」
リットは何か企んでいるのか、ガッツポーズをする。
「えへへ。実はね、今日お父さんやお母さんと最近開店したばかりのレストラン[クザン]に行くの。ベイツさんと咲耶もどうかな?」
レストラン[クザン]? そんなお店が、街内に新規開店していたんだ。
「あのレストラン、もう開店していたのか。色々あって、すっかり忘れていた」
ベイツさんも知っているんだ。
「リット、そのお店って有名なの?」
せっかくだし、彼女に詳しく教えてもらおう。
「超有名だよ!! クザンは、今国内で一番勢いのあるレストランなの。本店は王都にあって、現在チェーン店が8ヶ所もあるんだから」
前世の記憶だけしかないから、8ヶ所のチェーン店が凄いのか全然わからないけど、国内にそれだけあるのだから、料理もかなり美味しいってことだよね。
「どんな料理があるの?」
「オークと養殖ピッグがメインだけど、サラダに使われている野菜も新鮮で美味しいし、デザートのアイスクリームやプリンなんか、顔がとろけるほどの美味さなんだって。それでいて、価格を平民用に低め設定なんだよ」
オークって前世の小説だと、猪の怪物だよね。ピッグは英語で豚だから……どうしよう、どんな味なのか見当がついてしまった。多分、私にとって、前世で食べ慣れた料理だよ。でも、ここは驚いておかないといけない流れだ。
「そ…それは凄いな〜〜。私、食べたことないな〜」
誤魔化せたかな?
「ピピピピ」(訳:演技が下手すぎる)
「にゃにゃにゃ〜〜」(訳:ですね。その様子だと、前世で食べ慣れていますね)
う…ルウリとフリードが鳥語と猫語で、突っ込みを入れてきた。
ベイツさんなんか、リットに見えないよう、必死で笑いを堪えている。
「でしょでしょ!! ベイツさん、みんなで行こうよ!!」
良かった、リットには演技だとバレてないよ。
「そ、そうだな。夕食を、そういった店で食べるのも悪くない。リットの両親が了解してくれたのなら、皆で食べに行こう」
「やった〜〜〜、ちょっと待ってて〜〜〜」
リットが喜びながら、入口から店内に入っていく。
ベイツさん、笑いを堪えながら話すのやめてください。
演技って、意外と難しいな。
○○○
リットの両親アルドさんとミントさんから了解を得たので、私たちはレストラン[クザン]へとやって来た。中に入ると、5組ほど待っていたけど、私たちは20分ほどで席に着けた。この店はペットや従魔を入れられないので、ルウリとフリードには店の外で待ってもらっている。
席には、メニューが2つ配備されており、私とベイツさん、リットたちに分けて見ている。メニューを拝見すると、料理名とその横に綺麗な絵が描かれており、どんな料理なのかがわかりやすい。メインとなるものを見ると、私の知る[豚の生姜焼き定食][トンカツ定食][トンテキ]にそっくりで、内心驚いている。
「リット、どれも美味しそうだね」
「だよね!! 値段も、そこまで高くない。毎日、ここへ来たいよ」
リット、毎日来るつもりだったの?
「リット、流石に毎日は無理よ。破産しちゃうわ」
「そうだぞ。月に1回だ」
「あはは、そうだよね」
なんか、アルドさん、ミントさん、リットを見ていると、温かな家族だなって思う。私の前世の家族と似ている。今世の家族は、こんな温かさを絶対持ってないよ。あったら、記憶喪失になるはずないもの。
「お母さん、私はピッグジンジャー定食!!」
「良いわね、私はオークカツ定食ね」
「俺は、オークステーキ定食だ。ベイツと咲耶ちゃんは?」
アルドさんたちは、もう決まったようだ。
「私はピッグジンジャー定食ですね」
「俺はオークステーキ定食だ」
「了解だ、俺が注文を入れよう」
アルドさんが店員さんに注文してくれたので、ここからは待ち時間だ。こうやって店内を見渡すと、やっぱり日本のレストランと似ている。店内も広いし、みんなが美味い美味いと連呼して、料理を沢山食べている。皆が笑い合って話し合い、とても楽しい雰囲気が醸し出されている。私、こういった感覚、好きなんだよね。しばらく皆と談笑していると、料理が届いたので、私は自分の料理を眺める。
ピッグジンジャー、見た目は生姜焼き定食と瓜二つ。
香ばしいタレの匂いが、食欲をそそる。
リットが真っ先に肉をほおばる。
「美味しい〜〜〜。咲耶も食べてみなよ」
「うん」
私も、肉の一切れを食べる。
……あれ?
美味しい、美味しいのだけど、なんか変だ。
日本の豚と違うせいかな?
濃いソースで誤魔化しているけど、なんか違和感を感じる。
「美味いな、オークステーキ!! って、アルド、どうした?」
アルドさんを見ると、私と同じように手を止めている。
「うん? いや? 王都で食べたものと、味が違うと思ってな」
「チェーン店だし、完璧な味の再現は無理だろ?」
「それはそうなんだが、もっと根本的な何かが違う」
アルドさんも、違和感を感じているんだ。私の場合、日本との差異で感じているものだけど、彼は何を根拠に、その答えになったのだろう?
「あなた、どういう意味なの?」
ミントさんとリットも手を止めて、アルドさんを見る。
「多分だが、こいつはDランクのオークの肉じゃない」
え、メニューにはオークと記載されているのに、実際は違う肉を使っているってこと?
「お、おい、滅多なこと言うな!! 誰が、盗み聞きしているかわからないんだぞ!!」
ベイツさんが焦って、アルドさんの話を止める。
「あ、すまん。つい…な。まあ、美味しければ、なんでも同じだ。さあ、食べるぞ!!」
アルドさん、それ、フォローになってませんよ。ベイツさん、さっきまで美味しそうに食べていたのに、速度が遅くなっている。私とリット、ミントさんは違う料理なので、美味しく堪能しました。その後、リットはプリン、私はアイスクリームを注文し、半分ずつ分けて食べた。すっごく美味しかったけど、日本で食べ慣れているせいで、感想を言う際、フリードのような食レポのようになってしまったのに、アルドさんとミントさんは何故か、私のことを気に入ってくれた。お会計をして店へ出ると、ルウリとフリードが待ってくれていた。
「2人とも、お待たせ」
「構いませんよ。貴方たちが食べている間、こちらも色々とありましたので」
「そうだね、フリード。面白いことがあったよ、色々とね」
なんか含みのある言い方だな? 食事中、何をしていたの?
「ところで、ベイツ」
「なんだ、ルウリ」
「せっかく、こうして咲耶もリットと知り合い、互いに仲を深めたのだから、咲耶を彼女の家に宿泊させてはどうだろう?」
ええ、急に何を言っているの!?
流石に、アルドさんたちに迷惑がかかるよ。
「私も咲耶とお泊まりしたい!!」
「私も、リットとお泊まりしたいですけど…」
私はアルドさんとミントさんを見ると、2人は笑顔を返してくれた。
「アルド、咲耶ちゃんなら良いんじゃない?」
「そうだな。明日は、店の定休日だから問題ない。咲耶ちゃん、リットと遊んでやってくれないか?」
「え…はい、わかりました!!」
まさか、承諾してくれるとは思わなかった。
明日、定休日でよかった。
私は自分のアイテムボックスに、何かあった時のために2日分の着替えを用意しているから、今からでも行ける!!
「咲耶、良かったな。友達の家で、楽しんでくるといい」
「はい!!」
私は大喜びで、ベイツさんに返事する。
初めてのお友達の家での宿泊。
なんだか、胸が高鳴ってきたよ。
私とリットは笑顔で手を繋ぎ、定食屋ガブリを目指して歩いていく。




