11話 初めてのお友達
11話 初めてのお友達
ここは冒険者ギルドに隣接する喫茶店、メニューを見た限り、カレーやピラフといった軽食があるので、ベイツさんが戻ってきたら、ここで食べようと思い、ジュースだけ飲んで乾きを癒していると、ベイツさんが上機嫌で戻ってきた。
「咲耶、ここを出よう。遅い昼食となるが、俺の行きつけの定食屋があるんだ」
「定食屋?」
「ああ。ガブリという店名で、冒険者たちの間でも好評なんだよ」
冒険者たちに好評となると、いずれ私も使うかもしれない。
今のうちに紹介しようってことだね。
「わかりました、行きます」
私とルウリはベイツさんに連れられ、冒険者ギルドから程近い場所にある定食屋ガブリへと到着する。お店の外観には、店名が大きく掲げられた看板がある。店内に入ると、昼食時間帯が1時間程過ぎていたこともあり、席も1/3程しか埋まっていない。
「あ、ベイツさんだ!! 空いている席にどうぞ〜〜〜」
私と歳の近い女の子が元気よく、席へと案内すると、すぐに別の席へと行き、お客様にどんな料理を注文しますかと接客する。あの子、明るくて、どんなお客様に対しても、従業員として平等に優しく接客している。私は少し人見知りする傾向があるから、見習わないとね。女の子は接客を終わらせると、私のいる席へ、お水とおしぼりを持ってきてくれた。
「はい、どうぞ」
女の子がお水の入ったコップをテーブルに置くと、私とベイツさんにおしぼりを渡していく。
「ありがとう。リット」
「ありがとう」
「うわあ〜、綺麗な鳥さんだ」
女の子は目を輝かせ、私の左肩に留まっているルウリを見ている。
「この子は、ハミングバードのルウリだよ」
「ルウリ? ということは、あなたが咲耶?」
「うん…って、私のことを知っているの?」
「今、街中があなたの噂で持ちきりなんだよ。私はリット、10歳!! よろしくね、咲耶、ルウリ」
私も知っているけど、直に言われると、なんだか恥ずかしくなる。
「リット、宜しく」
「ピピピピ(リットか。心も綺麗だね。咲耶のお友達になってあげて)」
ルウリの言葉に、私はハッとなる。
この街に来て以降、生活に必死で、お友達を作る余裕なんてなかった。
私と同じ年齢の女の子リット、せっかくだからお友達になってほしい。
よ~し、ここは私から言ってみよう。
「リット、私とお友達に」「咲耶、私とお友達に」
「え?」「ハモった‼︎」
「「ぷ、あはははは」」
まさか、2人して同時に同じことを言うとは思わなかったので、途中で言葉を止めてしまい、つい互いを見つめ合い笑い出してしまう。
「どうやら、2人の愛称はばっちりのようだな」
ベイツさんが笑い合う私たちを見て、にっこりと微笑む。
「リット、俺は《ガッツリガブリ定食》、咲耶には《控えめガブリ定食》を頼むよ」
「ピピピピ(僕は、この小豆煮をお願い)
ルウリがリットに言ったけど、彼女にはピピピとしか聞こえなかったようで、首を傾げる。
「リット、ルウリは小豆煮を注文したの」
「え、そうなの!? 咲耶、凄いね。了解です!! 咲耶、時間がある時に遊ぼうね」
「うん、リットも頑張ってね」
リットは、厨房の方へ向かっていく。
「咲耶、ルウリ。リットの第一印象は?」
「すっごく良いです!! まさか、同時にお友達になってと言うとは思わなくて、つい笑っちゃいました」
あれには、びっくりだよ。1人目のお友達GETだ!!
「ピピピピピ(気に入ったよ)」
「ルウリも、気に入ったと言っています」
「そいつは良かった。そろそろ、お友達を作っても、良い頃合いだと思ってね。お節介だと思ったが、ここへ連れて来たんだ。リットはガブリのオーナーの娘で、この店の接客担当だ。周囲からの評判も高く、人として信頼できる。安心するといい」
ベイツさんがリットを信頼しているのなら、いつか私の事情を打ち明けてみようかな。
「これから色々と話し合って、仲を深めていきますね。ところで、このお店って、冒険者が多いですね」
「ここの料理は冒険者寄りで、量も多い。俺の言った料理は、他の店だと、2人前くらいあるから、咲耶が1人で食べに来る場合は、控えめと記載されている料理を注文するといい。営業時間は夕方まで。昼をメインに営業している」
なるほど、お昼メインのお店か。
私にとっても、都合が良いよ。
忙しい時は、ここに来よう。
リットの方を見ると、料理が全員に行き渡り、一息ついたのか、こっちに来て、ベイツさんの隣に座る。
「リット、良いのか?」
「大丈夫だよ、ベイツさん。残りは、咲耶とベイツさんの料理だけだもん。あと、5分くらいでできるよ」
厨房にいる料理人さんに尋ねてもいないのに、そこまでわかるの?
もう、ベテランの域に達してない?
「咲耶は、ベイツさんの家に住んでいるの?」
リットは私に興味津々のようで、早速質問してきます。
「そうだよ。今はベイツさんに教育者になってもらって、ルウリと一緒に冒険者活動をしているの」
「ルウリか〜良いな〜。私も、こんな綺麗な従魔が欲しいよ〜」
リットは物欲しそうな目で、テーブルに乗っているルウリを見る。
「ピピピピピピピピピピピ(野生の動物は、そんな物欲を持つ人間を判別できる。実際、君が冒険者になって、そんな目で野生動物を見たら、皆すぐに察知して逃げるよ)」
リットはルウリの鳴き声を聞いて、目を見開いた。
「咲耶、今ルウリは、絶対私に関することを言ったよね!?」
「わかるの?」
「わかんないけど、なんかこう目を細めて、私に軽いお説教をしたような気がする」
当たっている、リットって結構鋭い。私が今言ったことを訳してあげると、リットは怒るどころか、にぱあっと笑顔を見せる。
「やった、私もほんの少しだけ理解できたんだ!!」
「ピピピピ(リットは勘が鋭い。いずれ、スキル[直感]を習得するよ)」
「ルウリがね、リットは勘が鋭い。いずれスキル[直感]を習得するって言ってるよ」
「おお、ハミングバードに褒められた!!」
そんな話で盛り上がっていると、料理完成の声が厨房から聞こえてきたので、リットが席を離れ、すっごい量の料理がベイツさんの前に置かれる。これは、日本で言う焼肉定食だ。
「ベイツさんのガッツリガブリ定食だよ〜」
そして、すぐに私の料理を運んでくる。
「咲耶の控え目ガブリ定食だよ〜。こっちが、ルウリの小豆煮。皆さん、ゆっくり堪能して食べてね」
リットは私に手を振って、そのまま厨房のある店の奥へと入っていった。
ていうか、これで控え目?
焼肉の隣には野菜とサラダがあり、ご飯とお吸い物もある。
私の目から見れば、ベイツさんの料理は超大盛り、私の料理は大盛りに見える。
焼肉の香ばしい匂いが、鼻の中にす〜っと入ってくる。
「咲耶、お腹も減っているし食べようか?」
ベイツさんに言われた瞬間、お腹が減っていることを思い出し、きゅ〜という音が鳴る。
「は…はい」
日本にいる頃の私なら、絶対残す量だけど、何故か食べきれると思う自分がいる。私は箸をとり、ベイツさんやルウリと共に、昼食を食べ始める。
「美味しい!!」
「だろ?」
行儀が悪いと思いつつも、あまりの美味しさで、食が自然と進んでいき、15分程で完食した。正直、あの量を本当に完食できるとは思わなかった。自分でも、驚きだよ。
「すっごい満足感が、私の心を支配しています」
「あはは、そうか、そうか。連れてきた甲斐があったよ。流石に毎日とはいかないが、定期的に来ような」
「はい!!」
流石に、これを毎日食べていたら、食費がかさむし、なにより太ると思う。
毎日冒険者活動で運動していたら、あれだけ食べても太らないのかな?
それなら…うう、毎日食べたいと思う自分がいるよ。




