第4話 護衛(後編)
護衛の依頼を終えて、折れた剣亭に戻ると、すぐにルシオンが駆け寄ってくる。
「ラガン! おかえり!」
「──ただいま」
そう返して──知らず、じわりと胸に熱いものが込みあげる。ここがベラトールではないとしても──帰る場所があり、帰りを待つものがいるというのは、よいものであるなあ、と感じ入る。
「ラガン──お前、隅に置けねえなあ」
「──妹だ」
俗な勘違いをするロルフに、一言で訂正する。
「俺は兄貴の親友のロルフってんだ!」
「誰が親友か」
調子に乗るロルフの耳を引っ張って──俺たちは手近な席に腰をおろす。
「ラガン、約束どおり、今日は俺の奢りだ! 好きなだけ飲み食いしてくれい!」
ロルフは、気前よく、そう告げる。護衛の報酬で懐が暖かいうちに、賊との戦いで助けられた恩を返そうというのであろう、意外に義理堅い男である。
「じゃあ──俺もご相伴にあずかろうかねえ」
ロルフの宣言を聞きつけて、俺たちのテーブルに椅子を寄せるのは誰あろう──酒場の主たるバルドである。
「誰だ、あんた」
ロルフはバルドを一蹴して──おお、と酒場がわく。
「このバルド様を知らんのか」
「知らん」
そういえば、ロルフは南方の出身の元傭兵である。ブロンダルでは知らぬものなきバルドのその名も、さすがに遠い南方にまでは轟いていないようで──ロルフの返答はすげない。
「なあ、ラガン──俺の口添えで護衛の依頼を受けられたんだろう?」
バルドは、ロルフの奢りにあずかれぬと知るや、すぐさま狙いを俺に変えて──恩着せがましく肩を組んでくる。まったく、たくましい男である。
「ロルフ、気にするな。バルドの分は俺が奢る」
「クラウス! おかわりだ! おかわりを頼む!」
俺が奢ると言い終えるや否や、バルドは言質を得たとばかりに、酒の追加を注文する。
「ラガンがいいなら、いいんだけどよう」
言いつつも、ロルフは納得のいかない顔で、俺を見やるのであるが──ひとたび酒が入ってしまえば、それも関係のないことである。
ロルフを交えた酒宴は、正直なところ、楽しかった。ベラトールを出奔して以来、これほど楽しい酒は初めてではなかろうか、と思ったほどである。ロルフの、お調子者で、裏表のない性格に感謝して──俺は久しぶりに大声で笑うのだった。
「護衛」完/次話「迷宮法」




