第64章:しめやかな通夜と、お葬式の準備(2)
「尾形先生・・・9年間、茶太郎ちゃんを助けてくださいまして、本当に感謝申し上げます。
ぼくは、生前の彼に対して、先生のしてくださった、真心と愛情のこもった治療と、ぼくたちふたりにくださったお優しい言葉とアドバイスの数々を、生涯忘れません。
尾形先生・・・そして、助手の先生、本当にお世話になりました。では、失礼します。」
尾形先生と、若い助手の獣医師は・・・
ぼくと茶太郎ちゃんに深々と頭をさげ、
合掌にて、しずかに見送ってくださった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「・・・茂雄、チャーくん、庭に埋めてあげるんだろ?」
母が、神妙な表情で訊いてきた。
「いや・・・茶太郎ちゃんは、しおや聖苑に連れていって、火葬で送ることにした。」
「でも・・・今まで、うちのペットは、みんな、ここの庭に埋葬してきたじゃないか。チャーくんも、みんなの仲間に入れてあげなよ。ミーたんだって、チョビだって待ってるんだから・・・。」
「これは、前々から決めてたことなんだよ。俺は、茶太郎ちゃんと、これからもふたりで過ごしたいんだ。決めたんだよ・・・。」
「そっか・・・。じゃあ、好きなようにしな。これから、お葬式だね。焼き場には、まだ連れていかないんだろ・・・?
なら、それまでは、ゆっくりふたりで過ごして、最後のお別れをしてあげな。」
「・・・ああ。ところで、お袋。ひとつ、訊いておきたいことがあるんだ。」
「なんだい・・・?」
「茶太郎ちゃんのお耳がね・・・亡くなって、一日以上は経っていたのに、あったかかったんだよ。それに、おむつがきれいな状態になってた。
それって、もしかして、お袋が・・・」
「そうだ。あたしね、チャーくんの、最後のおしっことうんちを、きれいにバケツで洗ってあげて、新しいおむつをつけてあげたんだよ。」
「そうだったのか・・・。だから、お耳も、あたたかかったのかもね。茶太郎ちゃん、きれいにしてもらって、本当に感謝して喜んでいると思うんだ。
お袋、ありがとね・・・。」
そういって、茶太郎ちゃんの頭と背中をなでるぼくの、大粒の涙が・・・
茶太郎ちゃんの最後のおむつに、いくつものしずくとして、
ポタポタと落ちた。




