第60章:茶太郎ちゃん天国へ(5)
・・・『おおるりペットクリニック』に到着した、
ぼくと茶太郎ちゃんのふたり。
ここに来る道中、
何度もぼくは後部座席を振り返り・・・
もしかしたら・・・という、淡い希望を抱いていた。
(あれだけ、お耳があったかかったんだから、茶太郎ちゃんの心臓の鼓動が・・・)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
クリニック内に入ると・・・
尾形先生と、
助手の若い男性獣医師が待っていた。
・・・事前に、電話連絡を入れて、
茶太郎ちゃんをここへ連れてくる旨を、ごく短いメッセージで伝えていたのだった。
カウンターの向こうがわにいる二人に、
ぼくは、ケージごと茶太郎ちゃんを診せた。
「先生・・・茶太郎ちゃん、どうなんでしょうか? 耳があたたかかったので、もしかしたらと思いまして・・・。」
「・・・栗原さん。」
若い獣医師が答えた。
「残念ながら、お亡くなりになってますね・・・。」
尾形先生は、眉を寄せた厳しい表情をしながら、無言で茶太郎ちゃんを見守っていた。
「本当に・・・本当に死んでしまったんですか・・・?」
「ええ、お気の毒ですが・・・。」
若い獣医師から、あらためて、そう告げられたぼくは、
声を押し殺すようにして、その場に泣き崩れた。
「ぐっ・・・ぐううううーっ・・・。茶太郎ちゃん・・・ちゃ・・・ちゃた・・・ろう・・・ちゃん・・・」
クリニック内は・・・
重苦しくも、せつない沈黙に包まれていた。




