第61章:茶太郎ちゃん天国へ(6)
尾形先生は・・・
茶太郎ちゃんがまだ若いころから、
ことあるごとに、病気を治療してくださり、
同時に、その節目節目に、茶太郎ちゃんの成長過程をも、ぼくといっしょに、見守って下さった方だ。
いってみれば・・・
先生だって、ぼくらの家族の一員のような存在だったのだ。
先生はぼくに、
生前の茶太郎ちゃんの、安全な「抱っこの仕方」も教えてくださったし、
よく、茶太郎ちゃんのお顔を、
「かわいいかわいい」と言ってくださった。
結局、茶太郎ちゃんが尾形先生になつくことはなかったものの・・・
先生は、
「ヨシヨシヨシヨシ」と、いとおしげに、目を細めていたものだ。
先生に抱っこされた彼が、嫌がって、両足で先生にキックしようと暴れた際にも、
「茶太郎くん・・・とっても、やんちゃなんですねぇ・・・」と、お気を悪くされることもなく、
丁寧に、優しく茶太郎ちゃんを診てくださった。
あるとき、
体が不自由になった茶太郎ちゃんを、ぼくが抱っこして、
診察台にあげたとき・・・
茶太郎ちゃんは、ぼくの左手の甲を、ペロペロとなめたが、
それを、先生が、無言で見つめていたことがあった。
皆さんもご存じのように、うさぎが手をペロペロなめるときって、
その人が大好きで、信頼している証拠なのである。
・・・嫌いな人間の手を、けっしてうさぎがなめることはない。
だからぼくには、
プロの獣医学博士たる、尾形先生のそのときの心の中のつぶやきが、静かに、耳に届いていたのだ。
(・・・栗原さん。よくがんばって、今日まで茶太郎ちゃんを育ててきましたね。
いま、彼が、こんなにしんどい状態なのに、いとおしそうに、あなたの手をなめた。どれほど、あなたが彼を、長年大切にかわいがってきたのかが、私には、手に取るようにわかりましたよ・・・。
あなたが茶太郎くんを愛する心・・・その気持ちに応えるように、茶太郎くんもまた、あなたを愛しているんですね・・・。)
きっと先生も、
ただの一介の「患者」としてではなく、
それ以上に、かわいい存在として、
茶太郎ちゃんを愛してくれていたのだろう。




