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第50章:おだやかで平和だった、彼との残された日々(2) 

 ・・・茶太郎ちゃんがおむつを装着し、


 チンゲンサイをバリバリ食べ、


 ゆっくりとケージ内のマイクロファイバーのタオルの上を移動しながら、


 懸命に、けなげにがんばって生きていくさなか・・・


 ぼくの私生活も、大きな転機を迎えつつあった。


 最初の警備会社を辞め、2社目に就職したのだ。


 よっぱら、最初のいいかげんでデタラメな体制の事業体質に嫌気がさしていたぼくが下した・・・


 適切だが、遅すぎる決断だった。


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 2社目の警備会社・・・


 ぼくははじめてここで、1号警備にあたる、


 「施設警備」というものを経験した。


 道路工事のようなところを警備する、いわゆる「2号警備」では、お天気次第では、作業が中止となることも多く、


 金銭的に、安定しているとはいえなかったからだ。


 そこでぼくは、職安を通じ、


 はじめから「施設警備希望」で面接を受け、2つ目の警備会社に、正社員として採用されるにいたったのだった。


 (最初の「P」という警備会社では、辞めてから元同僚に聞かされてはじめて知ったのだが、実は、そこでぼくは3年以上も「アルバイト警備員」という最低ランクの身分だったのだ・・・! どうりで、有休もボーナスもなかったわけだ・・・。)


 しかし、現実はそれほど甘くはなかった。


 最初に配属された外資系の某企業の守衛をやることになったぼくは・・・


 そこで、「Y」という青森県出身の年配のクソじじいから、壮絶なイジメを受けた。


 そのロクデナシ野郎は、


 どこかで会って・・・いや、初見から、


 どこかで見たような気がしていた。


 (・・・この初老のジジイ、どこかで見たような気がするけど、どこだったろう?)


 なかなか思い出せなかったぼくだったが、ようやく気がついた。


 (そうだ! こいつは、アイヒマンだ。あの、ナチスドイツの親衛隊中佐で、ユダヤ人絶滅計画の立案者・・・逃亡先のアルゼンチンでイスラエルの諜報機関ちょうほうきかん「モサド」に逮捕され、エルサレムでの裁判で有罪宣告されて、のちにテルアビブの刑務所で絞首刑になった、アドルフ・アイヒマンそっくりじゃないか!! 制帽せいぼうをかぶると、さらに似てくるな・・・。

 なるほどな。さしずめこいつは、「青森のアイヒマン」ってところか。さらに、ここがドイツ系列の外資系企業だということも、そうなってくると、あながち、ただの偶然じゃなさそうだな・・・。)


 それに加えて、


 「24時間勤務」だったので、茶太郎ちゃんの世話は、


 ぼくがそこに出勤する日には、そのすべてを母に一任していたのだ。


 はじめのうちは、母を警戒していた茶太郎ちゃんではあったが・・・


 すぐに母を「世話人」「家族」として受け入れ、


 母も彼を、「チャーくん」と呼んで、本当の息子のようにかわいがってくれた。


 さきの「B」という、ドイツ系列の外資系企業の警備に嫌気がさしていたぼくではあったが・・・


 「替わりの人がいないから」という理由で、


 なかなか辞めさせてはもらえず、


 結局ぼくは、


 2019年7月1日から、


 同年10月まで・・・後釜あとがまが就任するまでのまる3ヶ月以上も、


 その施設警備を続けることになった。


 ・・・本当につらい日々だった。


 あとで、何かの機会に、そこでの様子もエッセイで紹介しようとは考えている。


 もちろん、「守秘義務」には細心の注意を払って。


 このつらく、先の見えない日々を救ってくれたのが・・・


 ほかでもない、


 茶太郎ちゃんであった。


 彼と自宅で合流し、うれしそうな彼、すやすやとマイクロファイバーの上で眠る彼を見るたびにぼくは・・・


 心が癒され、また優しく落ち着いた気持ちに戻ることができた。


 そしてまた、


 「茶太郎ちゃんに会えて、本当によかったなぁ・・・。」と、


 いまさらのように、かみしめるのだった。

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