第51章:おだやかで平和だった、彼との残された日々(3)
・・・母とぼくとは、
ぼくの仕事に関する問題、すなわち、
長く安定した勤務状態と安定した収入の確保をめぐる諸問題により、
長らく大きな確執を抱えていて、お互いを激しく憎んで牽制しあう関係だった。
ぼくは、どの工場や現場でも、自分なりに全力を出し、
懸命に取り組んではいたものの・・・
語学書を人前で音読してみたり、
東大受験の話なんかを、しかめっ面で不愉快そうに聞く同僚や先輩・上司に向かって楽しそうに、だれかれかまわず振ってみたりと、
とにかく自分の「わが道をゆく」をいつでもどこでも通し、
それがために、どこの仕事場でも最後には「四面楚歌」の敵だらけとなり・・・
職を転々と渡り歩くハメにもなった。
このことは、
遊郭で知り合い、結婚まで考えていた「洋子ちゃん」にも、たびたび口すっぱく注意されてはいたのだが・・・
ぼくが耳を貸すことはなかった。
やがて、別れることに。
ぼくは、いまでもそういった「基本姿勢」「理念」は変わらない。
・・・周りがどう、ぼくのことを思ってくれているのかは知らないが、
今後もずっと、
電車内でリトアニア語の洋書も読むし、
矢板市の図書館でも、女子高生ににらまれても、
全国通訳案内士の受験書と、語学本を見せびらかしながら、堂々と勉強するぞ。
ねたむなら、どんどんねたむがいい。
嫌うなら、トコトン嫌ってくれよ。
だいたいな、
そんなハナクソ未満の、くだらねぇ連中にかまっていられるほど、
俺の人生の時間は、残されちゃいねぇのさ♪
そんな俺様に、それでも、どうしてもケンカ売りてぇっていうんだったら、
・・・いつだって高額で買ってやるし、受けてたつぜ。
誰でもかかってこい。
俺のポリシーや信条・信念を邪魔してけがすヤツぁ、
ナニモンだろうと、ゆるさねえ。
なにか、俺の生き方に文句でもあんのか、コラ。
勉強して何が悪い。
(まぁ・・・これじゃ、敵はいなくなりませんよね。)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・話がかなりそれてしまったが、
茶太郎ちゃんの介護を通じて、
ぼくは母に感謝し、以前のような憎しみや嫌悪や、
普段から彼女をどことなく避けていたような、あの「苦手意識」も、いつしか消えていったものだ。
・・・みんな、
茶太郎ちゃんが、無言で間を取り持ってくれた。
失いかけていた、
ぼくと母との「親子の絆」ってやつをね・・・。




