第20章:今にして思えば・・・
今にして思えば・・・
思い当たるフシはたくさんあった。
話はやや別な方面へ飛ぶことになる。
ぼくに倉庫を貸してくれた熊田君のことだ。
彼とは、2006年4月に、矢板市にいまもある『S看護専門学校』で出会った。
詳しい流れは、拙作『たからものⅡ』を参照されたい。
彼とは、看護学校時代も、その後の派遣社員時代も、仲良くさせていただいた。
一部の看護学生から、白い目で見られ、差別的な「無言の静かなイジメ・嫌がらせ」を受けていた、元・性犯罪者のぼくは、
熊田君がいてくれたからこそ、なんとか2年はがんばって在籍できていたのだから。
それは、いまも純粋に感謝している。
その一方で、
もう交流が途絶えたいまだからこそいえるのであるが・・・
彼には、ぼくへの友情とは裏腹に、もうひとつ、ぼくに対する「別の感情」があったことにも、
彼の発する言葉の端々(はしばし)や、目つきなどから、ソレとなく気づいてはいた。
それが、
「自宅へのコンプレックス」である。
熊田君が彼本人の口から語ったところによると、彼は小中高時代、一度も自宅へ友人を招いたことはないという。
彼に頼まれて、何度か二階のベランダのアンテナの撤去作業を、友人として手伝いに行った事がある。
初めてその家に一歩足を踏み入れたとたん、異様なにおいが鼻をついた。
「・・・うっ! コ・・・コレは・・・小便のにおいだッ。」
食事中の皆様には申し訳ないと思うが、人の尿のにおいと、別な何かの尿のにおいが混じりあった感じの「異臭」。
(これはたしか・・・ネズミの『尿』。そうだよ。たしかにそうだ・・・!)
ネズミの尿というのは、特有の、まるで「ピーマン」のような異臭である。
人間の尿の「アンモニア臭」とは、また一味ちがった、恐竜時代末期以来・・・
地球全体に静かに・・・しかし暴力的にただよい、凶悪に自己主張しつづけている、連中固有の悪臭なのだ。
どうやらそれは、ここの唯一の住民である、熊田君の祖父の尿と、この家に住み着くドブネズミのまきちらしたものらしい。
(そういえば、彼の可愛い妹さんについて、こう聞いたことがあったな。前の古い実家には、自分の病気のじいさんがひとり寝起きしていて、定期的に熊田君が弁当を買ってきて、祖父に届けてるんだって。しょっちゅうネズミが出て、そのたんびに妹さんは泣き出していた、とか。そうか、それでな。・・・なるほどね。つまり、そういうわけだったんか・・・。)




