被害状況
ダンジョンで暮らす聖女?なんでこんな話になったのか?
4階までが、勇者たちに対応しきれず、被害が出てしまった。
みんな、まさか勇者が本当に入ってくるなんて思わなかったから。
誰かのイタズラだと思ったのだ。
その結果、少なくとも5人が怪我をした。
もちろん、重症ではない。
ちょっとした切り傷だ。
だが、俺たちがこんな怪我をするなんて。
誰かの血が流れたことが、悲しい。
魔素溜まりで、みんなもう治ったけれど、一部踏み荒らされた畑もあった。
そこは、協力すれば、あと3日程で戻るだろう。
それより何より。
ギアだ。
ギアが、聖女を家に住まわせた。
これには、緊急会議が開かれた。
「どうするったって、、、なあ」
俺がヒグに話を振ると、ヒグは目を逸らす。
マイティも目をそらす。
そんな俺たちに、ピイが大声をあげる。
「聖女の聖魔法で、うちらみんな、やられちゃったらどうすんの?!」
セイラも合わせる。
「そうよ!勇者の切り傷どころじゃないのよ!私たち消滅するんだから!」
こいつら、意見合うことなんて、あったんだな。
そんなことを、ぼんやり考えていると。
2人の矛先が俺に来た。
「「ちょっとカイ!!!聞いてるの?!このまま聖女をダンジョンに置いておくなんて出来ないでしょ!!!」」
2人で声を合わせて俺に詰め寄る。
あーめんどくせ。
なんとかやり過ごそうとしていると、ドアが開いた。
そこには、ギアと噂の聖女。
聖女は、恐る恐るといった感じでギアの後ろにくっついてる。
おや、ずいぶん仲良くなれたんだな。
ギアも、満更でも無い顔しちゃって。
俺も、胸の中があったかくなる。
ギアは、決心したように、俺たちに向けて話し始めた。
「彼女は、レシア。皆も知ってる通り、聖女だ。でも、彼女は、ここで、僕達のことを、もっと知りたいと言ってくれてる。僕は、もう少し、彼女を僕の家にいてもらって、皆のことを知ってもらいたいと思ってる。みんな、どうかな」
初めに口を開いたのはピイだ。
「ギア、あのね。私たちは、魔物なの。ギアは人間だから平気だけど、聖魔法は、私たちを消すのよ」
セイラも同調した。
「そうよ、ギア。あなたの願いは叶えたいけれど、私たちは、、、」
そう言う2人に、レシアが、恐る恐るギアの後ろから話しかけた。
「ギアから聞いた、ギアの美人なお姉さんというのは、お2人ですか?」
途端に、2人の表情が輝いた。
「なに?その話、詳しく教えてくれる?」
聖女に急に近付く2人に、レシアはたじろぎながらも、精一杯答える。
「えっと、、、ギアには、強くてかっこいいお兄さんたちと、美人な2人のお姉さんがいると聞きました。みんな、とても優しくて、心のきれいな人達で。ここにいる皆さんが、ギアの大切な家族だと」
レシアが、ピイとセイラにぎゅうぎゅうに抱きつかれて、苦しんでいる。
俺は、ギアに笑って親指を立ててやる。
ギアも、親指を立てて、ニコッと笑う。
満場一致で、レシアは家族に迎えられた。
書いているうちに、物語が独り歩きするって、、こういうことなんですね。