こりゃー大変
ミスリルって、名前が素敵ですよね。
ヒグが作ったギアの剣は、そりゃーもう、立派なものだった。
何せ、ヒグが危険を冒して、少し離れたダンジョンまで行って、ミスリルを取って来て作ったのだ。
俺たちは、基本的に他のダンジョンには行かない。
行く必要も無いし、知らない魔物同士が会えば、争いにもなる。
だから、そのダンジョンのミスリルについて勇者が以前話していたなんて、ジョーイから聞いた途端。
ヒグが今から行くと言い始めた時には、そりゃーびっくりしたなんてもんじゃない。
もちろんみんなで止めた。
「ここにだって、鉱物はあるだろ」
「街から、私が剣を買ってくるわよ」
「そんな無茶するな」
そんな皆の制止を振り切って、ヒグは行ったのだ。
少し離れたと言っても、ヒグの足で歩けば1週間はかかる。
勇者たちくらいだと、1ヶ月はかかるだろうが。
ヒグは、往復3週間で帰って来ると、自分の家にこもって、ひたすらにギアの剣を作り続けた。
ドラゴンの火を借りるなど、その都度、必要な力を他の奴らからも借りながら、6ヶ月程で完成させた。
移動も含めれば、7ヶ月程かかっている。
それはもう、素晴らしい逸品としか言いようがない。
剣自体も、凄まじい切れ味で、薄いが硬さもありつつ、しなりもある、というどうやって作ったのか、さっぱり想像もつかない物。
さらに、持ち手部分は、これまた趣味良く宝石を散りばめつつ、実に握り心地も良く、更に凝った彫刻が施された、どこかの宝箱から出たら大騒ぎになりそうな出来栄え。
だが、俺たちは、一抹の不安があった。
これをギアに渡したとして、ギアは、本当に商人になる道を選ぶのか。
盗賊を相手にするには、いささか豪華過ぎるというか、本気過ぎるというか。
これではまるで、冒険者や戦士にでも贈るような品物。
ヒグは、もちろんギアに渡したい、と言っている。
そりゃそうだろ。
ギアの為に、延々と丹精込めて作った自信作。
見せたいだろう、喜んで欲しいだろう。
ギアの意見も聞きながら、会議は連日、深夜まで及んだ。
そう思っただけなんです。




