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ずっと母と妹に搾取されていたことに気付けたので縁を切りました  作者: 朔晦 月陽


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9/11

意識改革とアルフレッド・ダナン


私はほとんどの仕事をロベルト様に任せるようになった。ロベルト様はやはり優秀で、書類の引き継ぎはスムーズに行われた。

むしろ私の引き継ぎが遅いことを不満に思っていたようで、だんだんと私を執務から遠ざけようとしていた。

しかし、領地の視察だけはなぜか私に同行させた。どうも領民に対してロベルト様の態度は良くない。常に上から目線の人ではあるが、相手が平民だとそれが如実に出る。

領民がいなければ領地は回らない、潤わない。もっと良い関係を築かないとと説得はするも、ロベルト様は聞き入れない。

私はロベルト様を紹介するとともに領民達に頭を下げながら、どうかこれからロベルト様が領主になっても変わらず助けて欲しいと言ってまわった。領民達は、貴族はあんなもんだ、オルデアお嬢様が珍しいんだ、私達のやることは変わらないからと笑ってくれた。


私が執務室に行くことも少なくなってきた頃、お母様の態度も変わってきた。

ここ最近事あるごとにこう言ってきた。


「新しいドレスですか?そうですね、ドナウティ公爵子息に相談しましょう」


「今度の収穫祭はドナウティ公爵子息に任せましたの。私も楽しみですわ」


「今年の王家への献上品はドナウティ公爵子息とリリーが相談してシャルフラワーの香水と、まだ発売前のシャルフラワーのハンドクリームにするのですって。きっと王妃様に喜んでいただけるわ」


「あらお母様、その手紙は私には判断つきかねます。ドナウティ公爵子息にお聞きください」


こんな風に話していたら、最近のお母様は私に相談しなくなってきた。自分の中に寂しさや悔しさがあるのも気付いているが、これでいい。こうなれば私は好きな人のもとに嫁げるかもしれないのだ。


シュルベスト辺境伯様との手紙のやり取りはもちろん変わらず続いていた。

ただひとつ変わったことは手紙の最後に


『あなたを想っている』


という言葉が増えたこと。




あと1ヶ月程でリリーとロベルト様の結婚式になる。お母様はすっかりロベルト様を頼っているし、領地経営の引き継ぎも終わっている。そろそろお母様と話をしようと機会を伺っていたら、思わぬ方向からきっかけがやってきた。

我が家にアルフレッド・ダナン様がやってきたのだ。

縁談ではもちろんなく、結婚式、披露宴での警備についての相談のために。アルフレッド様はドナウティ公爵家、つまりロベルト様のご実家のおかかえ騎士団に勤めている。我が侯爵家にも騎士団はあるが、両家の円満アピールと、公爵家が三男といえど大事にしているアピールのために少数のドナウティ公爵家騎士団が駆り出された。その中にアルフレッド様がいたのだった。

私1人執務室で披露宴の準備のための書類を確認していると、警備確認の書類を持ってアルフレッド様がやってきた。お顔を見るのは初めてだったので、名乗られて初めてアルフレッド・ダナン様と知った。黒髪に薄茶の目で、騎士らしくがっしりとした体型をしていた。


「そちらの書類は確認してドナウティ公爵子息にお渡しします」


その言葉にアルフレッド様は書類を私に渡し、礼儀正しくお辞儀をして退室しようとする。


「お待ちになって。少し私に時間をくださらないかしら?」

「私に何かご用が?」


私は執務室にあるソファーに移ると正面のソファーをすすめる。しかしアルフレッド様は断った。


「職務中に申し訳ありません。ですがダナン男爵子息にお話があるのです」


騎士にではなく男爵家次男に話があるといえば、では休憩時間ということにしますと言ってソファーに座ってくれた。真面目という調査報告書は間違っていない。

ライナがさっと用意してくれたお茶と、開けっ放しの執務室のドアの外に人気のないことを確認してから話だした。


「お時間をくださりありがとうございます。不躾で失礼を承知の上でお尋ねしますが、現在婚約者様はいらっしゃらないと聞いておりますがお間違いないでしょうか?」


アルフレッド様は怪訝な顔をしながらも、婚約者はいないとお答えになった。


「私は生涯結婚する気はありません。実家は長男が継ぎ、子供も2人産まれスペアの必要もなくなりました。騎士として1人で生きていくつもりです」


牽制するように話すアルフレッド様に苦笑する。アルフレッド様から見れば婚約者に捨てられ、次を必死に探している令嬢なのだから仕方ない。


「誤解を招く言い方をして申し訳ありません。結婚するつもりがないことは聞き及んでおりましたが、あなた様の口から聞いておきたかったのです。実は、私の釣り書に断りの返事をくれる方を探しておりますの。もちろん謝礼はするつもりです」


私の言いたい事に気付いたアルフレッド様は、気まずそうに頭を下げた。


「失礼な物言いをして申し訳ありません」

「いえ、私も自分の立場を考えず発言してしまってお恥ずかしいかぎりです。」

「いえ、良識ある令嬢に対して失礼な態度でした。お詫びにもなりませんが、そのお話謹んでお受けします」

「ありがとうございます。お詫びだなんて。お話を受けていただけるなら私にできるお礼は致します」

「謝礼はいりません……ですがひとつ希望を聞いていただけるなら、ローゼンフィル侯爵騎士団に推薦いただけないでしょうか?」


妙にあっさり話を引き受けてくれたと思えば、一応思惑があるようだ。


「うちの騎士団に?それは構いませんけれど……理由をお伺いしても?」

「ドナウティ公爵騎士団でなければどこでも良いのです。本当はなるべく遠くに行きたいのですが伝手もなく……」


どうやらこれはアルフレッド様が結婚しない理由に関係しているような気がした。


「話をしてみなければ分からないのですが、もしシュルベスト辺境伯の騎士団となればどうでしょう?」

「辺境の?もしそうなれば願ってもないことですが」

「辺境の地では未だ隣国との小競り合いがあると聞いています。もし隣国との戦争にでもなれば1番に戦いに行かねばならないでしょう。それでも行きたいですか?ローゼンフィル侯爵騎士団への推薦も可能ですよ?」

「騎士として生きると決めました。どこの地だろうと誰かを守れる騎士として生きようと。騎士と名乗りたいわけではなく、騎士としてありたいのです」

「お心承知しました。重ねて失礼な発言をお詫び致します。お約束はできませんが、辺境伯様にお願の手紙をお出しします。もし断られたらローゼンフィル侯爵騎士団への推薦をお渡し致します」


その3日後に早くもアルフレッド様は釣り書への返信を持ってきてくださった。

その後シュルベスト辺境伯様からは


『アルフレッド・ダナン殿を辺境の騎士団へ歓迎する。素晴らしい騎士精神に期待している』


と返事をいただけた。





お読みいただきありがとうございます

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