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モブ令嬢に転生したので推し活していたら極悪令嬢に昇格しちゃいました  作者: 西園寺百合子


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45/50

45 推しの魅力ならいくらでも

子爵令嬢 ニーナ・ヴァロワ

皇太子  アルフレッド・クロムウェル

公爵   ジークハルト・ベルシュタイン

「いや。ごめんね。母さんが、君への教育は自分がやるってきかないから、俺が折れたんだけど。まさか、使用人がやるようなことをやらせていたなんて思ってなくて」

ジークハルトがそう言って、額を押さえながら深く息を吐いた。

ソファの背にもたれ、珍しく疲れた表情を見せる。


「あ…お義母様は私に、家のことをよく知ってほしかったのかもしれないし。そんなに気にしないでくださいね」

私がそういうと「気にするよ」と即座に返されてしまった。

「公爵夫人になるための勉強については、俺があらためて講師を手配するから。母さんに言われても、もう、あんなことはしないで」

そう言われた。

それは…なかなか難しい。


ジークハルトが少し躊躇って、言葉を選ぶように間を置き、覚悟をしたように話し始めた。

「どこかでわかると思うから、言っておくけど。俺、母さんと血は繋がってないんだ」

ジークハルトにそう言われて驚いた。

「戸籍上は実子になってるんだけどね。母さん、子どもができない体質で。父さんが外で作らせた子が、俺。その俺を、実子としてこの家に入れたの」

静かな部屋の中で、その言葉だけが重く落ちる。

カーテンが風に揺れた音さえ、妙に大きく感じた。

衝撃的な告白すぎて、なんて言っていいかわからない。


「恥ずかしい話だけど、俺の実の母親も王家の人みたいで。…会ったことはないんだけどね。まあ、王家の血を引いてるってことで…それだけで母さんには愛されてる」

ジークハルトがそう言って、視線を少し逸らし、寂しそうに笑った。

その笑みは、いつもの彼よりずっと弱々しい。

ほかっておけなくて、気がついたらジークハルトの背中を擦っていた。

ジークハルトに抱きしめられる。

抱きしめられるというか、私が抱いているみたいな気がする。

どちらが支えているのかわからなくなる。


こんなに大きな体をしているのに、小さくなってしまったみたい。

私が知らないこと、いっぱい抱えているんだろうな。

そう思って、何も聞かずに静かに頭を撫でてあげた。


王家の血を引いているから。

お義母様がジークハルトを息子だと思う理由がそれだけなのだとすれば。

ますます、低い爵位の私の血が入ることは嫌だろう。

なんとなく、嫌がらせをされている理由にも納得できた。


ジークハルトが用意してくれた講師は、とてもわかりやすくベルシュタイン家のことを教えてくれた。

広い書斎で資料を広げながら、落ち着いた声で説明が続く。

「それで、この伯爵家が…」

そう言って、次々と教えてくれる。

地図や家系図が丁寧に並べられていた。


この人はジークハルトの親戚筋の方で、私より少し年上のアドルフ・シュバルツシルト。

シュバルツシルト家というのは、お義母様のご実家なのだそうだ。

「ニーナ嬢は、ジークハルトのどんなところが好きなの?」

アドルフにそう尋ねられて、思わず顔を上げる。

目が輝くのが自分でもわかった。

久しぶりに聞かれた。

ジークハルトの好きなところ。


「聞きたいですか?言ってもいいですか、アドルフ様!」

そう言って、椅子から身を乗り出す。

それから、しっかり1時間、ジークハルトの魅力を熱弁した。

途中で身振り手振りまで加わり、アドルフが何度か頷きながら、徐々に遠い目になる。

「うん、わかったから、もうやめて」とアドルフにストップをかけられてしまった。

話足りない…


ショボンとしていると、ジークハルトが帰宅された。

廊下から足音が近づいてくる。

もう、そんな時間でしたか。

「おかえり、ジーク。いやあ、面白いお嬢さんだね」

アドルフがそう言って、ジークハルトと何かを話している。

軽く肩をすくめながら笑っている様子だ。

お義母様とは色々とあるみたいだけど、親戚の方と話しているジークハルトは、そういうごちゃごちゃしたものを感じさせない。

すごいな。

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