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モブ令嬢に転生したので推し活していたら極悪令嬢に昇格しちゃいました  作者: 西園寺百合子


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41/50

41 ジークハルトへの罰

子爵令嬢 ニーナ・ヴァロワ

皇太子  アルフレッド・クロムウェル

公爵   ジークハルト・ベルシュタイン

「ジークハルト・ベルシュタイン。君も不貞行為をおこなった罪を償ってもらわないといけない」

アルフレッドがそう言った。

どうしたら、彼の罪が軽くなるだろうか。

考えているけど、頭の中がぐるぐるして、何も思いつかない。

「あの…アルフレッド殿下、その…」


何か、ジークハルトをかばうことができる情報はないだろうか。

アルフレッドはジークハルトの友達だから、友達を助けてほしいと言えば、助けてくれないだろうか。

胸の前でぎゅっと手を握りしめながら、アルフレッド殿下に目で訴えてみる。

キラキラ皇太子が、ふっと優しい視線になった気がする。

…信じていい?

この優しい瞳を、信じてもいいんだろうか。


アルフレッドがジークハルトに視線を向けた。

「本来なら、ベルシュタイン家の爵位を下げるところだけれど。今回はジークハルトから申告があって不貞行為を明らかにできた。それを考慮して恩赦を与えることにした」

アルフレッドがそう言うと、ジークハルトがうやうやしく頭を下げる。

「1か月の謹慎と、贖罪金しょくざいきんの支払い。それと、現在、話を進んでいる伯爵家との婚約の話を白紙にして、極悪令嬢と名高い子爵家の令嬢との婚礼を命ずる」

アルフレッドがそう言って、私を見る。

また、ふわっとアルフレッドが微笑んだ。


その瞬間、体育館にいる人の視線が一斉に私に向けられたのがわかった。

でも私は、なぜか現実逃避中だった。

公爵家の次に爵位が高い公爵家との婚礼は、家格を保つために大切なことだ。

爵位が低い家との婚礼は、一般的に嫌がられる。

だから、子爵家との婚礼は罰になると言えばそうだけど。

婚約をとばして、婚礼なんだ。

ジークハルトと結婚できるなんて羨ましいぞ、その子爵令嬢。

って。


極悪令嬢と名高い子爵令嬢…?

顔を上げてみた。

キョロキョロと辺りを見回す。

どういうわけか、みんなが、私を見ている。

私もたしかに、子爵令嬢なんだけど…

少しずつ、顔が熱くなっていく。

耳の先までじわじわと熱が広がる。

そんなこと、あるわけがないと思いながら、期待してしまう自分がいて。


恥ずかしくて、情けない。

心臓がうるさい。

壇上からジークハルトが降りてきた。

「ごめんね。こんなことに巻き込んで。…でも、どうしても、君と結婚したかった」

ジークハルトがそう言って、私の手を取る。


ポロポロと涙がこぼれた。

これは夢なんだろうか。

「ごめんね。君との婚礼を、過ちの『罰』になんてしたくなかったんだけど。これしか方法を思いつかなかったんだ。ごめんね」

ジークハルトが何度も「ごめんね」と言って、私を抱きしめてくれた。

周囲の視線も、壇上のざわめきも遠くなっていくようで、ただ胸の中だけがいっぱいになる。

夢なのではないかと思うほど、嬉しい。


「私、ずっと、ジークハルト様と一緒にいても、いいんですか?」

もう少しでお別れになるものだと思っていたのに。

結婚していいって言ってもらえた。

信じられない…

「うん。ずっと、一緒にいてください」

ジークハルトがそう言ってくれたから、遠慮なくポロポロと泣いた。


さんざん泣いて落ち着くと、すごく恥ずかしくなった。

みんなの視線が痛い。

ここ体育館で、みんなが集まってて、王族の方までいる。

やってしまった感がある。

「では、解散」

アルフレッドがそう言うと、バラバラと生徒たちが体育館から出ていったようだ。


私が泣いている間、ジークハルトは私を抱きしめてくれていて。

今はニコニコしながら私を見下ろしていた。

さっきまでの緊張感が嘘みたいに、柔らかい空気が2人の間に戻っている。

「…す、すみません。私、人前で泣いちゃって…ご迷惑を…」

あたふたとしていると、ジークハルトがまた私を抱きしめた。

今度は少しだけ強く腕が回る。


「俺、明日から謹慎なんだ。ひとりで寂しい…会いに、来てくれる?」

そう言われて、また顔が熱くなった。

「だ、男子寮、ですよね…無理ですぅ…」

周囲の目も気になって、慌てて顔を隠すと「隠さないで」と言われた。

その声がやけに近くて、余計に心臓が落ち着かない。

「家で謹慎になるから、家に来て?」

ジークハルトがそう言って私をじっと見る。

このチワワのような目に弱い。


「あの…じゃあ、授業が、終わったら…」

3年はそれほど授業の枠がない。

教室の予定表を思い出しながら、午前中に終わる日も多いから、午後から行けると伝えた。

ジークハルトは小さく頷き、その日のうちに寮から家に移動したようだった。

私はそのまま寮に戻って、ぐったりする。

部屋に入った瞬間、力が抜けた。

すごい幸せだったのに、すごく疲れた。

天井を見上げながら、頭の中で今日の出来事がぐるぐると回る。


アルフレッドが婚約破棄して、アリアナが強制送還されて、ジークハルトと結婚することになって…

色んな事が一気に起こった。

ひとつだけ気になっているのは、クロエだ。

クロエはジークハルトとの婚約を白紙にされたことになる。

怒ってるかな…

クロエのことを考えながらウトウトして、そのまま眠ってしまった。

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