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モブ令嬢に転生したので推し活していたら極悪令嬢に昇格しちゃいました  作者: 西園寺百合子


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40/50

40 アリアナの最後

子爵令嬢/生徒C ニーナ・ヴァロワ

皇太子 /攻略対象 アルフレッド・クロムウェル

公爵  /攻略対象 ジークハルト・ベルシュタイン

伯爵  /攻略対象 リュカ・モンパルナス

伯爵  /攻略対象 オスカー・ウィリアムズ

伯爵令嬢/悪役令嬢 クロエ・ラングレー

アルフレッドは、ジークハルトとアリアナの不貞行為で婚約を解消するって言うつもりだ。

それはダメ。

「ち、ちがいますっ!アリアナさんは、そんなことしてません!私、ずっと一緒にいたんです。ですから、公爵令息とデートなんて、できません!」

声が震えながらも、必死に言い切る。

アリアナはどうなろうが知ったこっちゃないが、ジークハルトの名前に傷をつけるわけにはいかない。

私がそう言うと、アルフレッドがふわっと笑った気がした。


「そうよ!私、この侍女…じゃなくて、ニーナさんと一緒にいたんです。そんな、不貞行為なんてするわけないじゃありませんか」

アリアナがそう言って、壇上にいる王家の人にも言い訳をしている。

見苦しいなと思うけど、ここは乗り切ってほしい。

ジークハルトの名前はまだ出てきてない。

みんな、公爵令息が誰かはわかってるだろうけど、名前が出ていない今なら、なんとか乗り切れるはず。


「では、アリアナ嬢は、男性と2人きりで街を歩いたり、手を繋いだりしていないと?」

アルフレッドが演台からアリアナを見下ろしている。

「…は?街を歩くくらい…と、友達とだっていたします。それとも、こちらの小国では、そういう文化はないんでしょうか?」

アリアナは焦りからか、ダークな部分が出てしまった。

小国という言葉で、王家の方々の眉が動く。

周囲の空気が変わるのを感じたのか、アリアナの目がわずかに泳いでいる。

しまったと思ったのか、さらに墓穴を掘っていった。


「私、こんな国のことを存知あげなかったので、私によくしてくださる方に、国を案内してもらっていただけです。それが、たまたま、男性だったというだけですわっ」

早口になり、言い訳が積み重なっていく。

「つまり、男性と2人でいたことはお認めになるんですね?」

アリアナの言葉に、アルフレッドがすぐに反応した。

間を置かない切り返しに、場の空気がさらに張りつめる。

認めちゃったね…


「だ、男性と2人でいたからって、不貞行為にはなりません!そうでしょ?ただ、一緒にいただけですから」

アリアナがそう言って、生徒たちに同意を求めた。

視線を左右に振り、味方を探すように見回す。

でも、誰も同意はしない。

というか、壇上からの圧がすごくて、何も言えない。


「残念だけどね、アリアナ嬢。お相手の男性が、君との不貞行為を認めているんだ」

アルフレッドがそう言った。

その一言で、体育館の温度が一気に下がったように感じる。

心臓の音がバクバク聞こえる。

この国の公爵令息は、1人しかいない。

ジークハルトの名前に、傷をつけるわけには…

「ち…」

私が違いますと声を上げようとして、ジークハルトが壇上に現れた。

現れてしまった。


「そうだね、ジークハルト・ベルシュタイン」

アルフレッドが静かにそう尋ねた。

「はい、アルフレッド・クロムウェル殿下。大変、申し訳ございません」

そう言って、ジークハルトがひざまずいた。

膝をつく音が、やけに重く響く。

「彼の証言をもとに、密偵に探らせたところ、アリアナ嬢はジークハルト以外とも関係を持っていることがわかった。これらの行為は、我が国への侮辱と…」

「嘘よっ!私、そんな醜い傷の男と、関係なんてもったりしないわ!」

アリアナがそう叫んだ。


体育館がまた、シンと静まり返る。

空気が固まったように動かない。

「みんな、なに信じてるの?私が?!王女であるこの私が、どうして『極悪人のジーク』なんて呼ばれてる人と関係を持たなきゃいけないの?信じるほうがどうかしてるわ!」

アリアナの暴言が止まらない。

優しいジークハルトに、こんな言葉を聞かせたくない。

私の推しを、これ以上、こんな人に汚されたくない。

アリアナのほうを向いて、手をあげる。

いや、正確には手をあげようとした。


指先に力が入った、その瞬間だった。

私が振り下ろすより先に、パシンと音がする。

鋭く乾いた音が体育館に響き、全員の視線が一斉に動いた。

「…っ!!」

アリアナが驚いて、自分を叩いた相手を見ていた。

頬を押さえ、何が起きたのか理解できていない顔をしている。

アリアナを叩いたのは、いつの間にか壇上から降りてきたアルフレッドだった。

「それ以上、僕の大切な友達のことを汚い口で話さないで」

アルフレッドがそう言ってアリアナを冷たい目で見た。

キラキラ皇太子もこんな顔するんだ。


ゆっくりとアルフレッドが壇上に戻っていく。

その背中は、気持ちを落ち着かせようとしているようにも見えた。

演壇に戻ったアルフレッドは一呼吸置いて話し始める。

「これらの行為は、我が国への侮辱と受け止め、アリアナ・エグランティーヌとの婚約を破棄するものとした」

そう言うと、アリアナが「嘘っ!」と叫んだ。

声が割れ、体育館の空気が再び震えた。

婚約解消ではなく、婚約破棄。


婚約解消は円満に婚約を白紙に戻すこと。

それに対して、婚約破棄は相手に対してしかるべき責任追及を行うことができる。

言葉の重さが、場の空気をさらに圧迫する。

「君の国も婚約破棄の理由を認めて、わが国に正式に謝罪してくれたよ」

アルフレッドがそう言って誰かを呼んだ。

その声に応じて、扉の外がざわつく。

パラパラと護衛がやってきて、アリアナをとらえた。

「なにするのっ!」

アリアナが叫ぶと「強制送還だよ」とアルフレッドが言った。


「本来なら不敬罪で処刑されるところを、強制送還で済ませるんだから。感謝してよね」

アルフレッドがそう言うと、アリアナはずるずると引きづられるように連れていかれた。

護衛に腕を掴まれ、足元をもつれさせながら、なおも何か叫んでいるアリアナの声が体育館の奥へと遠ざかっていくのが聞こえた。

「さて。ジークハルト・ベルシュタイン…」

アルフレッドがそう言って、ジークハルトのほうを向いた。


どうしよう…どうしたら、ジークハルトを助けられるんだろう。

「ジークハルト・ベルシュタイン。君も不貞行為をおこなった罪を償ってもらわないといけない」

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