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モブ令嬢に転生したので推し活していたら極悪令嬢に昇格しちゃいました  作者: 西園寺百合子


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38/50

38 3年生になりました

子爵令嬢/生徒C ニーナ・ヴァロワ

皇太子 /攻略対象 アルフレッド・クロムウェル

公爵  /攻略対象 ジークハルト・ベルシュタイン

伯爵  /攻略対象 リュカ・モンパルナス

伯爵  /攻略対象 オスカー・ウィリアムズ

伯爵令嬢/悪役令嬢 クロエ・ラングレー

皇太子妃候補    アリアナ・エグランティーヌ

結局、ジークハルトがアリアナをどう思ってるのか聞けてない。

そうこうしているうちに、2年目が終わってしまった。

季節が1つ進むのはあっという間だった。

ジークハルトは、とりあえず、闇落ちしてない。

その事実だけが、かろうじて救いだ。

よかった…


「ちょっと、ニーナ!何してんのよ!早く、お茶!私を干からびさせるつもり?」

アリアナの声で我に返った。

「は、はい。ただいまっ!」

慌てて紅茶を淹れる。

どうしてだか最近、アリアナは荒れている。

言葉の端々にトゲが増え、空気が張り詰めることが多くなった。

前から我儘だったけど、輪をかけて我儘になって、ときどき手がつけられない。

周囲が気を遣うほど、その振る舞いは激しさを増している。

それでも、ジークハルトが少しでも平穏な学園生活を送れるように、頑張るしかない。


推しのために頑張る私、えらい。

誰も褒めてくれないから、自分で褒めるしかない。

そういえば、最近。

ふとした違和感が頭をよぎる。

学園でアルフレッドとジークハルトを見ないことがある。


アルフレッドはたぶん、婚約者関係で隣国に行ったりしているからだろう。

新聞にそんなことが書いてあった気がする。

ジークハルトは…どうしたんだろう?

その点だけが、引っかかって残る。

クロエは普通に学園に来ているから、婚約うんぬんではなさそうだ。

公爵家だから、アルフレッドについていってるとか?

それとも別の理由なのか、想像だけが膨らんでいく。

友達だし、仲良しだし、一緒に旅を楽しんでたりして?


…まあ、いい。

結論を曖昧にして、考えるのはやめてしまった。

3年目になると、席は自由になる。

毎年行われていた、席決めのくじはないから、なんとなく、2年のときと同じ席に座っていた。

ちらほら、空席が見られる。


就職活動とか、婚活とか、皆さん、お忙しいのである。

私は田舎に帰ることが決まっているし、のんびりしていた。

田舎に帰ったら、おそらくお見合い責めだろうけど。

その未来を想像して、少しだけ遠い目になる。

「ニーナ!早く次の授業の準備をして!」

3年になり、アルフレッドがいないと、アリアナは教室でも私を堂々と侍女扱いするようになった。

机の上にはすでに次の授業の教科書やノートが雑に積まれていて、それを指先で叩きながら命令してくる。

たぶんもう、隠す必要がないと思ったんだろう。

皇太子の婚約者、確定だもんね。


教室の空気もどこかそれを前提にしたような、妙な遠慮と沈黙が混じっていた。

「あーもう、グズねぇ!早くしてよっ!」

アリアナがノートを投げて怒っている。

ばさり、と紙束が宙を舞って、床に散らばる音がやけに大きく響いた。

周囲の生徒が一瞬だけ目を逸らし、見なかったふりをしている。

「物を投げると、他の人に当たるかもしれませんから。やめてください」

私がそう言うと、頬を叩かれた。

暴力もぜひ、やめてほしい。


それからしばらくして、アリアナがイライラしている理由がわかってきた。

なかなか、皇太子の結婚の日が公表されない。

我が国の令嬢が皇太子妃になる場合、学園を卒業してから皇太子妃教育が始まるから、結婚の日はその後になる。

でも今回は、隣国の王女が皇太子妃になる。

そんなわけで、通常とは逆で、結婚してから皇太子妃教育が始まることになっていた。


一刻も早く結婚を。

多くの国民がそう思っていたから。

学園を卒業したらすぐに結婚するなら、諸外国の偉い人も参列することになるため、1年前、つまり、3年目になると結婚の日が決まると思われていた。

でも、すでに2か月くらいが過ぎたけど、結婚の日は決まらないようだ。


皇太子の婚約は2年のときに公表されているから、国民もザワザワし始めているようだった。

新聞にもそんなことが書いてある。

皇太子が病気なのかとか、変な噂まで出始めていた。

キラキラ皇太子、何かあったのかな?

そんなある日、ジークハルトが久しぶりに学園に来た。

廊下の奥から聞こえる足音に気づいて顔を上げると、見慣れた背中が視界に入る。

私をチラッと見て、ちょっと目を伏せている。

長い前髪の影が、いつもより深く顔に落ちていた。


「…?」

なんというか、子どもが悪いことをしたときに目を逸らすみたいな。

そんな感じがあった。

それはそれで、可愛いんだけど。

ジークハルトが、アリアナに何かを話している。

アリアナはきゃっきゃと嬉しそうに反応して、ジークハルトに抱きついた。

胸がチクチクする。

やっぱり、2人はいい感じに進展していたのかもしれないと思った。

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